「大仏鉄道」神話のウソを暴く

猿沢の亀　亡国の消費税は廃止を。 @sarukame999

「実はそのお父さんの島安次郞さんというのが、若い頃には関西鉄道の技術者で、汽車課長だったんです。」 「そんな方が、黒髪山トンネルで動けなくなるような機関車使いますか？」 「あの、”機関車のひく列車が止まって、人間が後ろから押した”なんていう話は、彼らに対する名誉毀損じゃないですか」

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そんな話もしたのでした。

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この「イナズマごうがやってきた」の内容をあらためて確認して、「それ、ちがうやろ」と言うことに気がついた。 「きしゃとは　こんなに　うるさいものかいのー」「しかし、これで　このむらも　べんりになりますなー」「ぎょうさん　おひとが　きてくれはりまっせー」と、大仏駅周辺住民が話してる。 pic.twitter.com/PLT4zcoUfS

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大仏駅跡の記念公園の住所は、奈良市法蓮町９８６番地。この場所は、明治31年当時は、明治22年施行の市町村制による「添上郡奈良町」ではなくて「添上郡佐保村」の大字法蓮（他には、法華寺、半田開）だったので「むら」であることは間違いない。

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しかし、この駅の開業は1898年明治31年4月なのだけど、その8年も前の、1890年明治23年には、添上郡奈良町三条村に、大阪鉄道（初代）の奈良駅が開業している。（奈良鉄道は、1896年明治29年に乗り入れ開業） 当時の地図をみても、奈良と大仏の二つの駅は、わずか1.1キロしか離れていない。 pic.twitter.com/b37YO848fO

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なので大仏駅周辺の住民が、初めて「汽車」を見たような記述は、おかしい。大阪鉄道は8年前に、また京都・木津と結ぶ奈良鉄道も2年前には、佐保村の中を通り抜けている。（現在の関西本線一条通踏切）「ぎょうさん　おひとが」なんていうのも、「大仏参詣の駅」という彼らの主張に合せたものだろう。

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この辺りの鉄道の変遷を年表にしてみよう。 1890年（明治23年）大阪鉄道（初代）王寺~奈良開業　 1892年（明治25年）〃湊町～奈良全通 1895年（明治28年）奈良鉄道　京都～桃山開業 　　　　　　　　　関西鉄道　名古屋～亀山～柘植～草津　全通 1896年（明治29年）奈良鉄道　桃山～木津～奈良　開業 twitter.com/sarukame999/st…

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大仏駅が出来る前に、奈良には、大阪、京都に通じる鉄道が既に通っていたわけだ。草津経由で、官設鉄道の京都方面に接続していた関西鉄道は、この後、大阪へ直結を目指す。 1897年（明治30年）関西鉄道、浪速鉄道（片町～四条畷）の路線を譲受。 　　　　　　　　　関西鉄道　柘植～上野～加茂開業。

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そして、翌年の1898年（明治31年）の関西鉄道の動き 4月12日　四条畷～長尾　開業 4月19日　加茂～大仏　開業 6月4日　 長尾～田辺～祝園～新木津　開業 9月16日　新木津～木津（奈良鉄道線）　開業 11月18日　加茂～新木津　放出～網島開業　 　　　　名古屋～網島で、名阪間の急行列車運行開始。

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この「名阪間の急行列車」だけど、ルートは、名古屋・四日市・亀山・柘植・上野（伊賀上野)・加茂・新木津・長尾・放出・網島　という感じかな。 この「亀山～柘植」には、加太越えの25パーミル勾配（黒髪山と同じ）があって、その機関車が「電光（イナズマ）」号30型機関車（国有化後7850型）だ。

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官設鉄道の東海道線に対抗して、名阪間を走る「関西鉄道名阪急行」を、亀山～加茂の急勾配区間で牽引するために、イギリスから輸入された電光号7850型は、加茂の機関庫での写真があるようだけど、生駒山脈の北側を遠回りする平坦線の加茂～長尾～網島よりも、黒髪山越えの方につかわれた可能性は高い。

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名阪急行の勾配区間牽引には、イギリス（ダブス社）製の電光号7850型の他に、同じ1-C型軸配置のアメリカ（ブルックス社）製の鬼鹿毛号（関鉄23型、国有化後の7650型）も使われたようだ。 ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD…

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ここまでの結論で言えば、関西鉄道の「名阪間急行列車」を、急勾配の亀山～加茂かんで牽引するために、英国から輸入された「電光号（7850型）」機関車が、加太越えと同じ25パーミル勾配の黒髪山越え（加茂～大仏）で「動けなくなって人間の後押しが必要」等ということになるわけがないということだ。

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そんな危なっかしいことで、「官設鉄道の向こうを張って名阪間のスピード＆サービス競争」などできるはずがない。「黒髪山越えで電光号を後押し」なんていう話を流布させると言うことは、関西鉄道（社長片岡直温、汽車課長島安次郞など）そのものをバカにしていることに他ならないんだけどね。

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ktymtskz.my.coocan.jp/kawakami/kansa… この辺りの、関西線をめぐる各鉄道会社の興亡史は、この川上幸義氏の「新日本鉄道史」が詳しく面白い。

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さて、1898年（明治31年）4月19日に大仏駅が開業して、11月には片町線経由で「名阪間直通急行列車」が走り出したその後・ 1899年（明治32年）5月21日　関西鉄道　大仏～奈良間開業、奈良駅乗入れ 　大仏駅が終着駅だったのは、1年1カ月。関西鉄道の目的は、奈良乗り入れで、大仏駅は「暫定的存在」と。

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1899年（明治32年）10月14日　奈良鉄道　奈良～桜井間全通 （大仏駅開業直後の1898年5月11日には、京終～桜井間が開通していて、京終駅の誕生はこの時とされている） 1900年（明治33年）6月6日　大阪鉄道が、関西鉄道に譲渡される。 図はこの時点までの大阪鉄道の路線。 pic.twitter.com/e1ByCfrSvQ

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この1900年6月6日の大阪鉄道の関西鉄道への合併によって、それまでの加茂～新木津～網島に替わって、加茂～奈良～王寺～湊町（現JR難波）が、関西鉄道の本線となる。9月1日から運転系統が変更されて「名阪急行列車」は、大仏駅のルート（いわゆる大仏鉄道）を通ることになる。

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ということで、「イナズマ号」が、名古屋～大阪間の急行列車を牽引することになりましたねえ。 え、「黒髪山越えられないから人が押して」なんてことやってたら、官設鉄道（東海道線）との競争になんかなりませんよ。

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当時の奈良駅に関わる関西鉄道、大阪鉄道、奈良鉄道は、みな私鉄で、奈良駅へ関西鉄道が乗り入れるには、設備の拡張だけでなく三社それぞれの官公庁への許認可手続きが必要だった。それまでの「仮ターミナル」が「大仏駅」だった。それを「大仏参詣目的の駅」と勝手に話を盛るのがエセ「古老」たちだ。