エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その13~

通し番号の数字は気にしない。 ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜に社長ネタトークにでもどうぞ。
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まとめ エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話( #えるどれ )~8世代目・その12~ もう通し番号の数字は気にしないことにしよ ハッシュタグは「#えるどれ」。適宜ロボトルネタトークにでもどうぞ (参考)[R-18]強くて凛々しい巨乳人妻天使がチン負けして無様アクメするやつが見たい https://togetter.com/li/1235572 6051 pv 4

以下本編

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ ミツグはいつも通り、塔から聞こえる朝の鐘で目を覚ました。 疲れはとれているはずなのにどこか体が重い。いや心の片隅に澱(おり) のように何かが溜まっている。ずっと溜まり続けている。 気分を持ちあげるため、錠剤と飲料を出して素早く食事を済ませる。

2020-02-11 15:26:34
帽子男 @alkali_acid

浴室に入って、耳には聞こえない音で体を洗う。 やっとましになってきた。 体をいたわるのは大事だ。 競技に打ち込むために、滋養を摂るのを点滴で済ませたり、面倒な肉の器を捨ててしまったりする人もいるが、必ずしも良い成績につながると言えないし、塔もあまり推奨してはいない。

2020-02-11 15:29:45
帽子男 @alkali_acid

命は命であるのをやめれば弱くなる。 そもそも競技の強さだけを競うなら、塔そのものの鋭さと深さには誰も勝てない。あくまでも命を持つ人間が、塔の示す高みに近づくからこそ意味がある。 だから、ミツグも命ある人間として、いつか塔が紹介する伴侶と契約し子供さえ作るだろう。

2020-02-11 15:33:07
帽子男 @alkali_acid

繁殖免除を受けられるのはごく一部だ。 すべて解っている。命と競技の均衡については繰り返し学習した。 しかし心の片隅に澱のように溜まった何かは消えない。 “市民ミツグ。競技開始の五分前です。兜を装着していませんね。現実依存症の兆候です” 塔からの声が響く。 「今すぐ始めます」

2020-02-11 15:35:47
帽子男 @alkali_acid

“現実依存症の亢進が顕著な場合は、処方薬を変更します” 「僕はだいじょうぶです。今の薬の組み合わせが一番成績が出る実感があります」 “では競技を開始して下さい” ミツグは兜をかぶり、活動室に入る。夜の間に掃除機がすっかりきれいにしてくれている。消毒液の匂いがする。

2020-02-11 15:38:11
帽子男 @alkali_acid

電子競技の会場へ接続し、指定のあった種目に登録する。 四次元艦隊戦第七版。 ミツグの得意種目だ。ありがたい。 今回も塔が最重視する、惑星改造の衝動を持つ思念生命体と現行人類の文明水準を持つ軍勢との会戦。思念生命体は洗脳を好み、人類軍の一部を自分の被造物だと信じ込ませたがる。

2020-02-11 15:43:03
帽子男 @alkali_acid

支援または敵対してくる異種族はなし。 ミツグの配置は小艦隊の指揮官だ。思念生命体は小惑星群に擬態して接近し、まず無人の艦を乗っ取ろうとしてくる。 人工知能で動く艦は、人間が乗り組む艦よりはるかに有能だが、思念生命体の侵食に恐ろしく弱い。しかしミツグはあえて無人艦を捨て石にする。

2020-02-11 15:46:23
帽子男 @alkali_acid

その間に人間と人工知能が協調制御する高火力の単座戦闘機を多数発進させ、思念生命体の活動を阻害する特殊繊維を空間に散布させたうえで殲滅に入る。 しかし問題が発生する。 いつも通りだ。囮の無人艦を制御する人工知能の一つと、単座戦闘機に乗る人間が特別な絆で結ばれていた。

2020-02-11 15:49:30
帽子男 @alkali_acid

そういう裏設定が隠されていたということだ。 戦闘機は命令を無視し、味方の攻撃で撃沈予定の囮艦を救出しようとする。 ミツグは小艦隊の指揮官としてこの問題を処理せねばならない。 無意識に舌を舐める。汗ばむ。競技を進めるには、体を動かし続けねばならない。各種の選択に手足を揮う必要がある。

2020-02-11 15:52:26
帽子男 @alkali_acid

"提督。トリスタンは人工知能。でも私にとってはたいせつな相棒" 実在しない戦闘機の操縦士が訴えてくる。 "失いたくない" 「イゾルデ一等操縦士。トリスタンと同じ仮想人格はすぐに他艦に再生できる」 "そういうことじゃない!" 間違えた。

2020-02-11 15:54:42
帽子男 @alkali_acid

ミツグはためらった。やはり飲んでいる薬の処方を変えた方がよかっただろうか。 定跡の攻略方法は解りきっている。明らかな軍紀違反を犯している操縦士を攻撃から外し、ほかの戦闘機だけで作戦を続行すべきだ。競技の中だけに存在する仮想の人格の訴えに耳を貸すべきではない。

2020-02-11 15:56:58
帽子男 @alkali_acid

「攻撃時間は変えない。君の機体"白手"は艦隊最速だ。突入と同時に、トリスタンの制御中枢を分離させ、脱出軌道に乗せる。思念生命体は必ずトリスタンを追跡してくる。君の任務は…奴等を射線に誘導したうえで生還することだ」 "感謝します提督"

2020-02-11 15:59:53
帽子男 @alkali_acid

作戦を開始する。 白手のイゾルデは、三次元画面上で黒帆を掲げる無人艦トリスタンを助けに決死の突入を試みる。競技者の問題解決を迫るためでっちあげられたとはいえ、何と馬鹿な仮想人格だろう。 現実にはかくも愚かな将兵は存在しない。もちろん現実には人類はこんな立派な軍勢など持たないが。

2020-02-11 16:02:44
帽子男 @alkali_acid

作戦は失敗。白手イゾルデと黒帆トリスタンは思念生命体に捕縛され、洗脳されて味方を攻撃し始める。 小艦隊は壊滅し、最悪の評価があらわれる。 イゾルデは初めから敵である思念生命体を崇拝する秘密教団の一員だったのだ。軍の思想調査をうまくかわしていた。

2020-02-11 16:05:07
帽子男 @alkali_acid

「畜生」 ミツグは兜を殴りそうになるが、現実依存症の兆候と判断される恐れがあるので、辛うじてこらえた。 あと十時間は電子競技を続行する必要がある。 次は恒星間文明以前の惑星で、巨大生物と生存競争を繰り広げる内容だ。 二枚の翼と角、鱗を持つ実在しない種族、竜は攻略不可能に思える。

2020-02-11 16:08:14
帽子男 @alkali_acid

いわゆる無理競技というやつだ。 敗北するまでにどれだけの成績を上げられるかが重要になる。 ほとんど周囲の地形すら解らない寒冷な地域で、貧弱な軍備、剣とか矢とかいったとうてい竜に有効とは思えない武具を生産し、さらに乏しい食糧確保に血道をあげ、もっと厄介な人間同士の対立にも気を配り

2020-02-11 16:10:19
帽子男 @alkali_acid

結局ミツグの集落は竜との対決前に飢餓と疫病で壊滅した。 竜に滅ぼされた別の集落の難民に門戸を開いたのが最大の過ちだった。 "現実依存症の亢進が顕著です。処方を変更します" 「待って下さい。次の競技では…」 いきなり活動室が振動し、通信が途切れる。地震だろうか。めったにないことだ。

2020-02-11 16:12:56
帽子男 @alkali_acid

しばらく待ったが、回復しない。ミツグは兜を脱いで、活動室を出た。 休憩しても不可抗力だろう。だが生活室も照明が切れ、空調が動いていない。ぼんやりしてから、屋外へ通じる非常扉に近づき、恐る恐る手動装置に指をかけて開く。 ひさしぶりに自分の家ではない空気を嗅ぐ。乾いた匂いだった。

2020-02-11 16:15:50
帽子男 @alkali_acid

まだ誰もい住居から出ていない。あたりは独身男性ばかりの区画だ。 どんな人間が住んでいるのかはほとんど知らないが。 ミツグは視線を上に向け、塔を眺めた。いつも通り。 市街の中心部に、はるか雲を突き抜けて伸びる漆黒の多角柱は、ところどころに枝を生やし、無数の灯を瞬かせている。

2020-02-11 16:18:12
帽子男 @alkali_acid

警備機がすぐ屋内へ戻るよう注意してくると予想していたが反応はない。 障害か。緊急整備だろうか。通知はまるでなかったが。 「そこの旦那さん。ちょいとと申し訳ねえんですが」 声に驚いて振り返ると、背の高い青年が立っている。

2020-02-11 16:21:19
帽子男 @alkali_acid

暗い膚に尖った耳。切れ長の眼差し。 「闇妖精…」 ぽつりとミツグは呟く。 「ありがてえ。この言葉で通じるみてえでさ。ところで闇妖精ってなあなんでさ?」 「思念力に基礎を置く文明の支配種族で、種族間交易競技では主に思念定着手工芸品を…」 説明しかけて黙る。

2020-02-11 16:23:47
帽子男 @alkali_acid

実在しないのだ。 闇妖精は。黒帆のトリスタンのもとへ飛び込んだ白手のイゾルデや、難民を渋々受け入れた大剣のシグムントと同じく、仮想の存在だ。 「…そうか。新しい競技だ」

2020-02-11 16:25:28
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