編集部イチオシ

夢で見た物語

今朝見た夢が妙に印象的だったので、物語風にまとめてみました。主題がぶれてる点はご容赦ください。
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You@carmanion @carmanion

その日は休日だというのに、各校合同の実力テストだとかで、僕も含め皆が憂鬱な気分で集まっていた。それも学校にではない。近所でも有名な最新鋭の設備を備えた予備校で、しかも厳重な監視付きである。テストの内容も前例のない全く新しい形式ということで、皆不安がっていた。

2020-02-18 07:47:50
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「皆さん、静粛に」いかにも厳しそうな女性講師が、テスト用紙と小さな箱を入って入室してきた。ザワザワとした部屋は一瞬で静まり返り、女性講師に注目が集まる。「それでは問題用紙と解答用紙、それに木炭を配ります。解答用紙にはこの木炭で記入してもらいます。筆記用具はしまいなさい」

2020-02-18 07:51:14
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しかし配られた紙の束は、1枚の方眼用紙と、白紙の紙の束でしかなかった。「それでは試験の内容ですが…斉藤さん」「はい」斎藤と呼ばれた進学校の制服を着た女子生徒が、無機質な声で答えた。「斉藤さんは先日、xx高校の森下先生と旅行に行かれたそうですね。その内容を語ってもらいます」

2020-02-18 07:54:15
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いよいよもって、生徒たちに動揺が走り始めた。斎藤さんの旅行が、一体試験に何の関係があるというのか。一瞬ざわつきかけるも、講師の一言で再び静まり返る。「静粛に。みなさんには、斉藤さんの話を元にそちらの紙に物語を書いてもらいます。しかし、解答用紙はあくまで方眼用紙の方です」

2020-02-18 07:57:22
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「まずはじめに、方眼用紙の所定の位置にいくつかの単語を書いてもらいます。次に斉藤さんの話をそちらの紙に写し取り、それが終わったら最後に私が口頭で問題を伝えます。便宜上、それぞれ段階1、段階2、段階3と呼びます」なんだこれは。実力テストというよりクイズのたぐいか?

2020-02-18 08:01:43
You@carmanion @carmanion

「以上で説明を終わります。9時ちょうどより、合図とともに試験を開始します。…試験はじめ」なんだかわからないうちに試験が始まった。「段階1、次のマス目に漢字を入れていってください。1D、「豆」4A、「海」」…「4Dと4E、「葡萄」。以上です」

2020-02-18 08:06:45
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いくつか書き取りきれなかった物があるのが悔やまれる。しかし淡々と試験は進み、次の段階へと移る。「それでは斉藤さん」「…はい。先週の日曜日、私は森下先生と旅行に行きました。車で海辺をドライブして、途中のコンビニでアイスクリームを買って二人で食べて…」これはデートの惚気か?

2020-02-18 08:10:25
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などと考えているうちにも、彼女の独白は続く。「…そして最後に帰り際、森下先生は「楽しかったかい?」と私に尋ねました。私が「はい」と答えると、先生は「それは良かった。じゃあまた学校で」と挨拶をし、別れました。以上になります」僕は必死にメモを取ったが、やはり全ては書ききれなかった。

2020-02-18 08:15:21
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斉藤さんの独白が終わると、講師が仕切る。「斉藤さん、ありがとうございました。それでは皆さんには、取ってもらったメモを元に物語にまとめてもらいます。用紙はメモと同じ白紙を使用してください。何枚になっても構いません。時間は9時30分まで、でははじめ」

2020-02-18 08:18:54
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僕は、(第1段階の穴埋めも第2段階のメモも少し聞き逃した部分があったし、あまり高得点は期待できないな)と考えながらも、取ったメモをもとに物語を書き始めた。木炭は美術の素描などに使われるというが、やはり文字を書くには向いておらず、文章も何度も書き直したこともあって紙はグシャグシャだ。

2020-02-18 08:22:21
You@carmanion @carmanion

それでも制限時間までに原稿用紙1枚分程度の短い文章にはまとめ上げることが出来た。定刻の9時30分、講師が「はい、そこまで」という頃には若干の心の余裕が生まれていた。しかし、問題は最後の段階3だ。最後には一体何をやらされるというのか。

2020-02-18 08:24:52
You@carmanion @carmanion

講師が告げる。「あなた達に取ってもらったメモ、そしてまとめてもらった物語には、何らかの情景が浮かんでくると思います。その情景から得られる単語を、解答用紙に書いてもらった単語の中から選び出し、丸で囲ってください。以上が段階3。制限時間はここから10分、9時40分までです」

2020-02-18 08:27:08
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情景と言われても、メモ用紙にはそれだけでは意味不明な単語の束、物語を書いた紙もつたない文章があるだけではないか。そう諦めムードで考えたとき、不思議なことが起こった。書かれた文字が姿を変え、斉藤さんが行ったというドライブデートの情景に変わっていく。

2020-02-18 08:29:14
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僕は戸惑いながらも、解答用紙に目をやる。確か「海」とか「氷菓」とか書かされたはずだ。それに丸をつければいいんだろう。そう思っていた。しかし白紙に浮かんだ情景には、斉藤さんの話からは聞き取れなかった、真っ赤な夕日が映し出されていた。

2020-02-18 08:33:33
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「夕日」。そんな単語は書かされていなかったが、並んで記入した「七夕」と「日曜日」を組み合わせれば、「夕日」という単語が生まれる。僕は迷わず、「夕日」に丸をつけた。

2020-02-18 08:35:19
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そして試験時間が終了した。講師が告げる。「はい、そこまで」。「不思議な内容のテストだったでしょう、皆さんの疑問を解くためにも、試験の目的と概要は伝えても良いことになっています」

2020-02-18 08:38:05
You@carmanion @carmanion

「このメモ用紙と白紙は、書かれた文字とあなた方の「想像力」によって絵を生み出すことが出来ます。段階1で書いてもらったいくつかの単語は、隠された正解を導くためのダミーに過ぎません。本題は段階2にこそありました」

2020-02-18 08:40:42
You@carmanion @carmanion

「聞き取った話以上の情景を想像する力、その力を見るためのテストが今回のテストだったのです。最後の段階3は…まぁ、クイズ形式にすることで参加者の心理的負担を減らそうという遊び心ですね」

2020-02-18 08:44:20
You@carmanion @carmanion

珍妙な内容のテストを受けさせられるために、朝早くから遠くの予備校に集められた不満はある。しかし、僕が書き出した物語から生まれた夕日は、そんな不満を消し去って余りあるほどの眩しさを備えていた。(了

2020-02-18 08:46:55
You@carmanion @carmanion

以上、今朝見た夢が割と明晰だったので物語風に書き出してみた。いかがだったでしょうか。まとめ方が雑だったり、「斉藤さん」が「斎藤さん」と表記ゆれしてる辺りはご愛嬌ということでお許しください。

2020-02-18 08:48:31