ストレイトロード:ルート140(47周目)
- Rista_Bakeya
- 1092
- 1
- 0
- 0
煙が空を塗り潰し、瓦礫も草木も高熱に飲み込まれた。塵さえ焼き尽くす勢いで広がる炎が道路を寸断している。最早逃げる他になかった。藍は口を固く閉ざし、私の運転に全てを任せている。感情の揺れや切実な願いが風を呼び、その些細な変動が事態を悪くすると、誰より彼女自身が心得ているからだろう。
2020-02-12 18:45:56カフェの窓際に席を取ったのは表の往来に紛れた泥棒を探す目的だった。盗み損ねたメモリを本気で狙っているなら、再度私達に近づいてくるはず。ところが提案者の藍に落ち着きがない。「紅茶一杯だけで居座るって不自然かな?」奇妙な心配の原因はレジ前の棚か。可愛らしいケーキが少女を誘惑している。
2020-02-13 18:42:07公園で昼食のバスケットを広げ、中身を取り分けていると、不穏な視線を感じた。見るとベンチの四方を鳥に包囲されていた。おこぼれのパン屑を待つ小型の野鳥に加え、樹上には本体の横取りを企む大きな影まで見える。「餌やり禁止の看板ってこれのせい?」藍は早くも自分の分だけ守る姿勢を取っていた。
2020-02-14 19:08:02携帯端末が中継映像を流している。先週ある港で起きた爆発事故について、当局の釈明会見の解説を藍に命じられた。「形式的な謝罪のようですね」「隣の国がどうこう言うのは?」怪物が空から落とした危険物を敵国の雷撃と決めつけている。人類を脅かすモンスターが現れても、人類同士の争いは潰えない。
2020-02-15 18:58:01数名の子供がガラス越しに見える私達に手を振ってきた。見学者の存在に慣れている。別の一人が歌い出すと、周囲の子供が集まり輪唱を始めた。「楽しくやってますってアピールよね」藍は背丈がガラス窓に届かず、補助を拒否したので声だけ聞いている。一人の大声が輪唱をぶち壊すと真っ先に吹き出した。
2020-02-16 19:07:17「る」で始まる技も特性もない、らしい(第八世代の時点で)。
長い石段の正面に立つと、一段一段に古い詩が刻まれていることに気づいた。これから登る私達が味わうだろう苦痛や疲労を煉獄の修行に見立て、長い道のりの先に待つ天国のような場所を期待させる為だろうか。だがその言語を読めない藍は単なる模様としか認識していないらしい。私を怪訝な目で見ている。
2020-02-17 19:13:35140文字で描く練習、2341。煉獄。 教養の差という一段もあった話。 よくあるイメージではなく本来の意味を踏まえて。 (余談:辞書的な意味を確認すべく検索したら炎のような熱いお兄さんが出てきて「あぁ……まあ……そりゃそうですよね……」ってなった)
2020-02-17 19:13:35画面の中心で照準器を模した図形が輝く。標的をロックオン。発射された弾は逃げる敵を追って弧を描き、派手な音と共に視界の片隅を煙で覆った。「昨日のおじさんたちが言ってたの、これだったりして」藍は携帯端末のゲームをつつく手を止めた。怪物の捕獲に難航する空軍の秘密兵器がこれとは考え難い。
2020-02-18 18:40:15「今度はどんな悪巧み?」「教えたらどうするんだよ」籠には怪物の幼体が入っている。それを持ち去ろうとした少年と保護したい藍が鉢合わせ、取り合いと口論が同時に始まった。「あなたよりマシな使い方考えるの」「見せてみろよ」過激な能力と発想の持ち主が相手故か、藍の表情も穏やかでなくなった。
2020-02-19 18:42:50変身できる能力者もいるかもしれない。友人はそう言いたかったようだが、既に呂律が回っていなかった。「わたしがそうだったらどうする?」藍は彼の高いびきを確認してから、酒で割られないよう隠していたジュースを二人分のグラスに注いだ。「普段通りに振る舞うだけです」本物かどうかとは話が別だ。
2020-02-20 18:42:18技シリーズは以上。
ここからはいつものリクエストコーナー+後述の遠征に伴う変速お題。
客室のテーブルには満杯のキャンディポットと紅茶の缶があった。藍はホテル内にいると言っていたが、少なくとも一度ここに戻っていたらしい。更なる入れ違いは不興を買いそうなので、ティータイムの仕度をして待つことにした。飴には手をつけず、優しい香りで室内を満たした頃、ドアが勢いよく開いた。
2020-02-21 18:50:01140文字で描く練習、2345。キャンディ。 提供: @yumemiya_kuku CandyとKandyを両方入れてみました。
2020-02-21 18:50:01生垣の裏は屋敷とは趣きの違う庭園だった。東洋の様式を模したと言うが違和感の方が強い。私が立ち止まる間に、藍は赤く塗られた橋の上へ案内されていた。「この中にいるの?」その池には変わった鯉が棲むという。水面へ誘われるように身を乗り出す姿を見て咄嗟に駆け寄ったが、冷たい目で避けられた。
2020-02-22 20:58:06140文字で描く練習、2346。鯉。 化屋として久々の遠出。ついでにこんなものを捕獲した。 ということで、ルーティンからは外れる一題。 pic.twitter.com/IsJdyLyIDo
2020-02-22 20:58:07