ストレイトロード：ルート140（47周目）
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Rista_Bakeya
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「ぬ」で始まる技がなかった。特性も1つしかなかった。
……この時点で、同じテーマでもう一度回すことは不可能と分かる。
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
衆人環視の中、スプーンが突然ひとりでに曲がった。「仕掛けを当てたら賞金だって」多くの先人が念力の演出を考案してきた。中には本物もいたかもしれないが、それにも仕組みならあるはずだ。「分析する顔で見るのやめて」藍が言うなり風が吹き、新聞紙が私の頭に被さった。これもある意味そうなのか。
2020-01-31 19:31:38
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「あなたの分も淹れておいたから」藍が差し出した紅茶を受け取り、香りを確かめてから口に含んだ。苦い。舌全体に染み渡る酷い味を察した意図ごと黙って飲み込むと、空にしたカップを彼女に返した。「口に合わないことは服薬を拒否できる理由になりませんよ」「わかってる。変な成分ではないみたいね」
2020-02-01 19:07:06
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
力任せに叩きつけられたボールは思いの外高く跳ねた。屋根も街路樹も超えていく丸い影を、私達も含めた全員が黙って見送った。しばらくして誰かが言った。「どこに落ちた？」「きれいなお庭」藍の一言で私達以外の全員が青ざめた。「ガラスや鉢は割れてないみたいだけど」そういう問題ではなさそうだ。
2020-02-02 18:53:51
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
車のドアを見るたびつい溜め息が出る。藍はそれが気に入らないらしい。鋭い物で引っ掻いた損傷が日に日に増えていることを説明しても、心情までは理解されなかった。「修理できる傷でしょ。大事な部品なくしたみたいな顔やめて」顔を背けられた直後、耳障りな物音がした。こちらを向いた藍の顔が青い。
2020-02-03 18:53:02
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
群衆を押し退けて進む間、質問や声援や暴言が降り注いだ。道なき道を抜けてホテルのロビーに入るまで藍は沈黙を守った。今は一言でも口を滑らせたら袋叩き間違いなしだった。「この前まであっちを攻撃してたのにね」ようやく振り向いた彼女は早くも反撃に挑む顔をしていた。形勢逆転の一手はあるのか。
2020-02-04 19:11:05
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
洪水の爪痕が残る河川に怪物が棲みついたと聞いて立ち寄った。橋や水門に巣を構えたのではなく、上流の街から流されてきた泥の中にいるらしい。悪臭に怯む藍の隣で誰かが石を投げた。「何か来る！」丸い物が川底から浮上してきた。ヘドロの波が堤防に押し寄せたが、その守りを越えるには至らなかった。
2020-02-05 18:45:41技としては「ヘドロ○○」がいくつかある。今回は「ヘドロウェーブ」を採用。
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
復興して間もない街を通る前、藍はわざわざ車を止めて着替えた。袖を通したのは確か企業の関係者に頼んで取り寄せた新商品だ。装いを整える程の用事があるのか。「買ったとき約束してたの」有名人の活躍に街は湧いた。そして私達が次の旅に出た後、彼女と同じ服や小物を欲しがる子供が続出したらしい。
2020-02-06 18:48:20
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
垂直に飛び上がった怪物が私達の頭上に落ち、屋根と床下から同時に衝撃を感じた。重心の変化と奇妙な揺れの原因はフロントガラスを見て解った。道路が崖ごと崩れ、触手が巻き付いた車体だけが落下を免れたようだ。「このまま巣に持って帰ろうとしてる」助手席の窓から外の様子を窺った藍の顔色が悪い。
2020-02-07 18:50:13
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
扉を開けると見慣れた髪型が見えた。誰かの話し声が聞こえる。「どうなのかしら。あなたの年で、ねえ？」旅の道連れがあんな男でいいのか、と暗に言われていた。いたって真面目に心配しているらしい親戚は当人が聞いていると思っていないだろう。藍は終始沈黙していた。笑いを堪えていたと後で聞いた。
2020-02-08 21:48:16
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
買い物を終えて市場を出ようとした時、最初に立ち寄った青果店の主が声を掛けてきた。「余裕あるならこいつも持っていけよ」虫食いばかりで見た目の悪い品を棚の下に置いたまま忘れていたという。「食べるのに抵抗あるか？何かに喰わせてやりな」行き先は話していないはず。藍が疑いの目を向けてくる。
2020-02-09 19:06:06
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
特製の薬は派手な装飾の瓶に入っていた。ブランド物の香水の物と聞いて納得したが、他になかったのか。「これを乱暴に扱う奴はいないだろ」「勝手に開ける人はいるかも」藍が瓶を灯りにかざすと宝石のように輝いた。「そしたら奴らはそいつに即メロメロだ」藍が手を下ろした。怪物に狙われたくはない。
2020-02-10 18:49:59
Rista(化屋月華堂)
@Rista_Bakeya
「解決したければまず学力、研究。うわべだけの知識で人目を引いてもダメだって」藍は見たことのない手振りを交えて訴えた。どこかの大人の物真似だろう。「人が起こした問題を解決する手順よ。わたしがやりたいことにはね、学問も専門家もないの」ハイウェイの路肩に空いた大穴が次第に近づいてくる。
2020-02-11 19:10:25