風立ちぬのアレから、みんな大好き(?)ハミルトンのプロペラの話

風立ちぬに出てきた巨人機ユンカースG.38のプロペラ軸が実は機体の軸線から少し傾いていることへの、ウチューじん・ささき@uchujin17さんの解説 ツリー後半では、みんな大好きゼロ戦でおなじみのハミルトンのプロペラには、実は新型と旧型(ゼロ戦は旧型)があり、大きな差があったという話も。
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ウチューじん・ささき @uchujin17

ユンカースG38の特徴のひとつは、エンジンの推力軸が傾いて付けられていること。パースの影響を受けない平面形のわかる写真があまり多く伝わっていないのだけど…。 twitter.com/rUyaCVtIiRxgC9…

2020-02-29 08:06:14
アプロ @rUyaCVtIiRxgC9M

#いいねの数だけ好きな航空機を言う見た人もやりましょう拒否権はない ユンカースG.38 風立ちぬに出てきたアレ いかにもアニメっぽい飛行機だが、実在したのだ。 ドイツ航空省・ルフトハンザ航空・ユンカース社の合同出資ににより開発されたこの巨人機は、1929年に初飛行した。(続く pic.twitter.com/eqCmT0McY5

2020-02-29 07:38:10
ウチューじん・ささき @uchujin17

この写真だと辛うじてわかるかな、推力軸が進行方向に対し逆ハの字に開いて取り付けられている。 pic.twitter.com/YNnaR6HBz0

2020-02-29 08:08:17
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ウチューじん・ささき @uchujin17

もっとも、こっちの写真だと推力軸は機軸平行にも見える。排気汚れ対策の黒塗装がそう見せているのかも知れないけrど…。 pic.twitter.com/1WhhO9tC7F

2020-02-29 08:10:08
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ウチューじん・ささき @uchujin17

どこまで信用できるか、図面では一応こんな風になっています。外弦の推力軸が傾いているのは、エンジンが部分停止したときの偏向癖(*)を緩和するため。(*よく「トルク」と言われるけれどトルクじゃない。クドいほど言ってるけど!) pic.twitter.com/bqIEANhpCJ

2020-02-29 08:12:37
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ウチューじん・ささき @uchujin17

エンジンを左右に並べた多発機では、たとえば左のエンジンが止まると推力が右に偏って機首を左に向けようとする力が発生します。しかも止まった左のプロペラが空転(ウインドミル)すると左側の抵抗が大きくなって、ますます左への偏向力が強まります。

2020-02-29 08:18:03
ウチューじん・ささき @uchujin17

しかも推力が減って速度が落ちたぶん、高度を維持するための揚力を稼ぐために操縦桿を引いて迎角を上げる必要が生じますが、迎角をもって回転するプロペラの推力は回転面左右で不均衡になり(Pファクター、これもトルクではない)、「切り上げ側」より「切り下ろし側」の推力が大きくなります。

2020-02-29 08:20:07
ウチューじん・ささき @uchujin17

アメリカ式の「進行方向後ろから見て時計回り」のプロペラでは回転面右側が「切り下ろし」になるので、右エンジンだけで飛んでいる状態は左エンジンだけで飛ぶ状態よりも機首偏向力が大きくなります。止まるとより困る側のエンジンを「クリティカル・エンジン」と呼びます。

2020-02-29 08:22:02
ウチューじん・ささき @uchujin17

四発機の場合は1発停止時の推力が1/2ではなく3/4になるので影響が少ない半面、内弦が止まった場合と外弦が止まった場合で影響が異なります。外弦が止まったほうがテコの腕長が長くなるので偏向力は大きくなります。G38の傾いたナセルは外弦停止時の偏向力を緩和するため。

2020-02-29 08:24:12
ウチューじん・ささき @uchujin17

更に垂直尾翼・ラダーを3枚構成にして、傾けたエンジンの延長線上に左右ラダーが入るようにし、生き残ったエンジンのプロペラ後流をラダーに当てて効きをブーストすることで機首偏向力に対抗する意図の設計になっています。

2020-02-29 08:27:53
ウチューじん・ささき @uchujin17

1930年代の多発機には「何でそこまで片発停止にこだわったんだ」と思う設計の飛行機が散見されすが、理由のひとつは固定ピッチプロペラにありました。固定ピッチの場合、エンジンが止まると高い確率で空転して大きな抵抗源になります。

2020-02-29 08:29:47
ウチューじん・ささき @uchujin17

可変ピッチプロペラによって空転の確率を下げられるようになりましたが、エンジンが止まったときブレードを最大角度まで立てて抵抗を最小化する「フルフェザリング」が可能になるまでもう少し時間が必要でした。このDC-3はまだフルフェザー非対応の旧型ハミルトン(零戦と同じタイプ)。 pic.twitter.com/29cuY2Ml3m

2020-02-29 08:33:02
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ウチューじん・ささき @uchujin17

同じKLMでもフルフェザリング可能になった新型ハミルトンつきのDC-3。プロペラ根元に付いていたカウンターウエイトが無くなったので、カウンターウエイトのカバーだったスピナーが無くなり、油圧シリンダーを格納した「ドーム」が露出しています。 pic.twitter.com/Vi2yme63Qs

2020-02-29 08:35:20
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ウチューじん・ささき @uchujin17

艇身女学生によって整備される日本のDC-3、昭和L2D零式輸送機のプロペラは零戦と同じカウンターウェイトつき旧型ハミルトン。新型ハミルトンのライセンスは購入したものの、加工機械が禁輸措置を受けて製造できなかったと伝えられます。 pic.twitter.com/6LZjdHvWAn

2020-02-29 08:37:34
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