ウジコ様は告げる 一気読みver

ウジコ様は告げるという作品を連載しています。 ※現在、1章を更新中です。
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【ウジコ様は告げる】1章★110 「でも、それって罪の意識を抱えた直前が見れるわけでしょ? だったら、お悩み相談も楽勝じゃない? 推理小説で言えば、殺害されるまでのトリックが丸見えって事でしょう?」  そう考えれば、随分と心情は穏やかになれるというものだ。

2020-03-20 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★111  ディアーリが語る“罪の透視”は聞くだけなら便利な能力に思える。悩みの原因は見て分かってしまうのだから、あとはスラスラとその内容をなぞればいい。なんかカンニングしているみたいで何処か釈然としない能力ではあるが。

2020-03-20 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★112  しかし、そんな僕の楽観的な考えに対してディアーリは首を静かに横に振って否定した。 「ところが単純にそればかりとは言えないのです。これはいずれ分かる事だと思います。でははじめましょう。まずは私の手を握り、その後にその蠢く黒い紐に触れてみてください」

2020-03-21 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★113  そう言ってディアーリは左手をそっと差し出した。これから何が起こるのか体験していないので何とも言えないが、今はそのレクチャーを受けるしかないだろう。こちらもその手をそっと握り返す。そしてロス君の方に向き直り、白黒の紐を掴もうと手を伸ばした。

2020-03-21 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★114 「"ウジコ様もどき"が"ウジコ様"のマネしたって、何になるってんだよ」  随分と心無い発言だが、彼からしてみれば"ウジコ様"かどうか不明な男がいきなり隣の女性の手を握り、自身に触れるか触れないかの距離の虚空に向かって腕を向けてくるように見えるのだろう。

2020-03-21 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★115  もしも"ウジコ様"と認められていたなら、心象が良くなっていたに違いないのだが――そう考えながらゆっくりと手を伸ばしていくと、ついにウネウネと不気味に蠢く白黒の紐が僕の手に引っかかった。その瞬間、僕の頭の中に一つの光景が流れ始めてきた。

2020-03-21 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★116  それは、一人の少年の懺悔の時を辿っていく物語だった――

2020-03-22 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★117  その場所は記憶を失くした"ウジコ様"でも、この"罪の意識"が何処を指し示しているのか、しっかりと理解できるだろう。何故ならその場所はたった今彼が通ってきたばかりだったからだ。

2020-03-22 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★118  “罪の意識”が映し出す舞台は、この持分商店街の敷地内であり、歩行者だけが自由な移動を許される空間である歩行者天国であった。

2020-03-22 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★119  その歩行者天国を二人の少年が並んで歩いていた。一人は緑色の法被に髪を短く切っている少年と、もう一人は黄色の法被に三本の角のようなものが付いた帽子を被った少年だった。緑色の法被の少年は、"罪の意識"を見せているロスに他ならなかった。

2020-03-22 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★120  二人は並んで歩いていたが、帽子の少年は途中で立ち止って俯き、咽喉を抑えだした。少しの間は相方の異変に気付かずに変わらぬペースで歩いていたロスだったが、相方が止まってしまったのに気付き、慌てて帽子の少年の元へと駆け寄った。

2020-03-23 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★121 「――?」 「――」 「――」  二人は何らかしらのやり取りをしていたが、ロスは近くのベンチに指さし二人はそこに移動して腰掛けた。ロスは自分の財布を取り出し中身を確認したが、次第にガックリと項垂れた。どうやら素寒貧だったようだ。

2020-03-23 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★122 「――」 「――?」 「――」  ロスの様子を見ていた帽子の少年は自身の懐からガマ口を取り出し、中身を探り始めた。そして小銭を見つけると、ロスの右手にしっかりと握らせた。

2020-03-23 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★123 「――」 「――!」  帽子の少年に何かを言われたロスは右手を強く握りしめ、即座に駆け出していった。駆け出した先は出店のソフトクリーム屋だった。神妙な表情を浮かべながらコーンカップの上にとぐろを巻いていた店主に向かってロスは声を掛け、二本の指を立てる。

2020-03-23 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★124 「――!」 「――」  注文を受けた時の店主はたった今自分が作っていたソフトクリームを自身の口へと押し込み、新しいカップを二つ取り出し、製造機のレバーを下げてソフトクリームを作り始める。

2020-03-24 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★125  この店主、別の注文を受けていたという訳ではなく、自身が食べたくて作っていたようだ。もごもごと自身のソフトクリームを咥えながら、二つ分のソフトクリームを素早く巻き、ロスへと手渡した。

2020-03-24 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★126 「――!」 「――」  背の低いロスはやや背伸びをしつつもソフトクリームを受け取り、握りしめた小銭をしっかりと店主に渡す。店主は終始、心ここにあらずといった状態であり、どうやらソフトクリーム屋にはソフトクリーム屋なりの悩みがありそうだった。

2020-03-24 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★127  ロスは開いた右手にソフトクリームを受け取り、そのまま左の方にその場でかぶりついた。彼も咽喉が乾いていたらしく、アイスクリーム屋の目の前で、無我夢中に嘗めはじめていた。

2020-03-24 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★128  食べ終わった後、帽子の少年の元へと一直線へと駆け出した。溶けないうちに届けるので頭がいっぱいだったのだ。だから彼はソフトクリームばかり注視してしまい、足元を確認するのが疎かになっていた。彼の左足は、自身の右足にひっかけてしまったのだ。

2020-03-25 00:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★129 「!」  前のめりに大きくつんのめり、腕を振ってバランスを取ろうとする。しかし、片手はソフトクリームを守ることで使い物にならなくなっているし、どんなに振っても重力は無慈悲にロスの身体を地面へと吸い寄せてきており、転倒を回避するのは不可能だった。

2020-03-25 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★130  転ぶしかない状況に陥ったロスは最後の抵抗として、ダメージが何とか仰向けに倒れるように慌てて身体をひねっていた。重力に絡めとられていたがなんとか仰向けに倒れることができ、彼は一安心していた。

2020-03-25 12:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★131  しかし、一安心した彼は気が付いてしまった。いつの間にか右手に握っていたソフトクリームが忽然と消えているということに。そしてその代わりに自分の口の中にソフトクリームが放り込まれてしまっていたことに。

2020-03-25 18:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★132  この事実を認識し、ロスの表情が愕然とした面持ちにかわり――    ここで――罪の透視は時間切れ。

2020-03-26 00:00:01
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【ウジコ様は告げる】1章★133  □■□■□■□■□ 「……うーむ。成程。これが罪の透視か……」

2020-03-26 06:00:00
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【ウジコ様は告げる】1章★134  ロス君が後悔するまでの世界を色鮮やかな状態で確認した僕は、ただただ唸るぐらいしかできなかった。こういう形で映るのか。

2020-03-26 12:00:00
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