光に寝返った闇の女幹部を大首領が堕とし直す話（#えるどれ 番外編）

帽子男 @alkali_acid

闇の女幹部が、ヒーローとのラブによって光に目覚め寝返る展開あるじゃん。 あれさあ、闇の大首領からしたらNTRだよね。 しかもどうする？女幹部が実は大首領の養女で、小さい頃から立派な腹心になれるよう育ててたとしたらよ。 そら許せませんわ。いわゆる流行りのNTRKS、寝取り返しですわ。

帽子男 @alkali_acid

もうね。養父と養女のね、親子の関係なんて関係ないんすよ。 無駄にえっちなコスチュームを着て「どうぞお許しを…次こそは必ずや」とか「あらほらさっさ」とか言っててドジだけどアジトの華やぎだったかわいい女幹部をね、どこの馬の骨とも知れんヒーローなんかにやれるかってんですよ。

帽子男 @alkali_acid

ちょっと聞いてます？ ねえ！ かーわかってねえんだなお前等は。闇の女幹部はねえ！闇だからえっちなの！分かる？それがねえ！光に目覚めたら台無しなんだよお！！！！ いやさらなる闇に目覚めるためのスパイスとしてはいい。それなら許す。 だがそのままヒーローとゴールインなんて俺は認めねえ！！

帽子男 @alkali_acid

闇の大首領はよお、何せ闇だからよお、手下に命じて逃げた女幹部を捕まえてアジトに連れ帰ってよお、そらもう！！え？えっちなね、いやすけべなね、いやどいやらしい拷問と調教をしまくってね！！二度と自分に逆らわないよう躾け直すしかねえんですわ！！

帽子男 @alkali_acid

聞いてる？なんかさあ！まじめに聞いてない気がすんだよなあ。 俺の話さあ…俺の話解る？ぜんぜんつかみどころない？ そっか。 そう…そもそもそんなふわっとした大首領とか女幹部のイメージを語られても特に思い入れもないし困る。ああそう。そうよね。そりゃそう。

帽子男 @alkali_acid

じゃあさ。かっこいい名前をね。考えましょう。かっこいい名前をね。 はい。 闇の大首領は、その名も冥皇エルカノール。 やばない？やばない？根暗な男子中学生がノートにめっちゃ書き付けてそうなダークな名前やない？ 闇の結社「冥府（HELLでもいいよ）」を統べる最凶最悪の帝王。

帽子男 @alkali_acid

宇宙を荒らし回り、何の罪もない多くの種族を滅ぼしてきた、まさに殺戮と破壊の化身ですわ。ちげえよ千葉繁声で喋るやつじゃねえよ。 一方、闇の女幹部は、悪霊姫ゴルサイス。またの名を闇の女王。狂気の天才で、おぞましい魔法と工芸のからみあった発明の数々は、世界を恐怖のどん底に叩き落とした。

帽子男 @alkali_acid

かあおい。盛り上がってきたな！！え？盛り上がってきたでしょ。 エルカノールにゴルサイス。 うわ… うわ…中学二年生ぐらいの男子が「はー既存のキャラとかぶらない名前にしよ」とか思って一生懸命考えたやつだ。 うわぁ…。

帽子男 @alkali_acid

さてそれでだ。ゴルサイスは、ひそかに清く正しい光の勢力に潜入し、とあるヒーローに近づいた。 ヒーローの名前はクルフィノ。超絶イケメン。しかもゴルサイスと同じく発明の天才で、冥皇にとって脅威となりかねない秘密兵器を開発していた。

帽子男 @alkali_acid

クルフィノに近づいたゴルサイスの目的は… ゴルサイスって女幹部の名前ね。クルフィノはヒーローの名前。 いい？ クルフィノに近づいたゴルサイスの目的は秘密兵器の完成を阻止すること。 そしてあわよくばクルフィノを誘惑して闇の勢力に引き入れることだった。

帽子男 @alkali_acid

だがここでドラマが発生する。 そう光と闇、水と油に思えたヒーローと女幹部だが、ともに天才科学者（スーパージーニアス）同士、通じ合うものがあったんだね。 二人はなんと！恋に落ちてしまうのでーす！！

帽子男 @alkali_acid

あ？何うんざりした顔してんの？ 何こちらを刺激しないように、ゆっくりとあとずさりしながら遠ざかってんの？ いい話でしょ？いい話。光と闇…相容れぬはずの二人が…ラブ…ラブですわ…クルフィノの情熱的な愛によってひとりの乙女として目覚めたゴルサイスは、ついに闇を捨て、光につくと誓う。

帽子男 @alkali_acid

二人は結ばれ、かわいい赤ちゃんにも恵まれる。 だが家族を引き裂く、善と悪の対立！ とうとう元女幹部は生まれたばかりの娘とヒーローと離れ離れになってしまうんですね。

帽子男 @alkali_acid

しかも、大首領は、女幹部の裏切りを許さなかった。 大首領は、こういう話のお約束として、光の勢力にボコボコに負けて異次元に追放されてしまったんですけれども、そこから邪悪な手下（あまり重要ではないしたっぱなので詳細は省きます）を送り込んで、悲しみにくれる女幹部を拉致した。

帽子男 @alkali_acid

そして、そう、いよいよ、エルカノールとゴルサイスは再会する。 凄惨で…残酷で…ふひ…すけべな拷問と調教がね…なにせ闇だから…始まる訳なんですよ。 ふひ、ふひひひひひ！！！！！！

帽子男 @alkali_acid

◆◆◆◆ 闇の女王ゴルサイスは、一枚の札（カード）に閉じ込められたまま、世界と世界の壁を飛び越えて、冥府と呼ばれる神の不在の地へ運ばれてきた。 そこは、ゴルサイスが愛を誓った男、クルフィノと過ごした場所からは永遠と悠久の時間と空間を隔てた場所だった。

帽子男 @alkali_acid

それでも眠りの中で幸せだったころの夢を見ることだけはできた。 まどろみの奥に浮かぶ記憶の中で、悪霊姫は再び完璧な肉の器、すなわち子供を作れる女の体をまとい、一糸まとわぬ姿で、はるか至福の地にある妖精王の工房にいた。

帽子男 @alkali_acid

裸身のゴルサイスは、両手両足を鎖に繋がれてもがいていた。 枷はクルフィノの優しさのあらわれだった。 女が全身を駆け巡る官能と快楽に堪えかねて暴れ狂い、工房に並ぶ貴重な品々を壊す醜態をさらさぬようにと。

帽子男 @alkali_acid

「ゆるじで…ゆるじでぐだざ…」 精一杯の媚びと阿（おもね）りを込めて、ゴルサイスは愛しい男に懇願する。 「にどど…いわなっ…いいまぜ…」 呂律の回らぬ舌がつむぐ言葉に意味はない。ただ寵を乞うているだけだった。

帽子男 @alkali_acid

「どうかな奴隷殿。あんたはしぶとい。精霊は皆そうなのかもしれんが」 クルフィノは、そう答える。 奴隷。心地よい響き。 そうだった。ゴルサイスは奴隷なのだった。 偉大な主人に隷属し支配を受ける、目も眩むほどに晴れがましい身分。

帽子男 @alkali_acid

主人は、工房の坩堝からできたばかりの水色の宝玉を一粒、やっとこで掴みとって、手袋をはめた指でつまみとると、そっと近づける。奥で脈打つ心臓のように光が瞬いている。魔法の石だ。 どういう効き目があるのか、設計から製造までかかわった奴隷はよく心得ていた。

帽子男 @alkali_acid

肉の器と霊の気に干渉し、ねじまげ、いっそう淫蕩に溺れやすく、暗示にかかりやすくする。 しかも闇の女王に対して最も効き目を発揮するよう入念な工夫を施してある。不思議はない。何せ本人が細やかな調整を施したのだから。 だがゴルサイスはいざ、よく知る宝玉と間近に相対して歯を打ち鳴らした。

帽子男 @alkali_acid

「もう…これ…いじょ…」 「ぜひとも試したいのだ。複数の宝玉が相互に働く効果をな」 「こわれて…しま…いま…」 「怖いのか？」 「これたら…ごしゅじんさまの…おやくに…たてなっ…」

帽子男 @alkali_acid

一瞬、ほんの一瞬だけ、妖精王が躊躇したようだった。だが悪霊姫には理由が解らなかった。 「なるほど…たいした効き目だ。俺とあんたと、二人で作った宝玉は…安心するがいい。あんたが壊れてもずっとこの工房に置いておこう。生きた宝石箱としてな」