エルフの女奴隷を受け継ぐ家系だったけど奴隷制終わって没落した話(#えるどれ)

奴隷とかまじで言ってんのかてめえ? 人権侵害だろ!!という普通の決着を迎えました。
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みやはらみおさんに、世界の禍、八体の黒き獣(一部鳥)を描いてたいただきました!大活躍予定です!

みやはらみお @spooky8bit

抱っこすきーで甘えん坊な黒海豹は可愛いけど潰されそうだなと考えつつ妄想ダダ漏れらくがき。#えるどれ pic.twitter.com/oR7cGPOJz5

2020-03-08 01:58:30
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まとめ 【目次】エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系の話(#えるどれ) 人間とエルフって寿命が違うじゃん。 だから女エルフの奴隷を代々受け継いでいる家系があるといいよね。 という大長編ヨタ話の目次です。 Wikiを作ってもらいました! https://wikiwiki.jp/elf-dr/ 21950 pv 167 2 users

前回の話

帽子男 @alkali_acid

皆さんは「エルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系のウハウハドスケベファンタジー」 略して #えるどれ をご存じですか? エルフの女騎士を捕えた男の一族が何百年もかけエロ調教してゆくウハウハドスケベご都合ファンタジー、 でした。完結しましたけど。まとめはこちら。 togetter.com/li/1479531

2020-03-16 20:39:08
帽子男 @alkali_acid

完結したというのはどういう意味かというと、奴隷は解放され、最後の最後で奴隷制度は廃止になった訳ですね。 エルフの王様が、正義の神々と一緒にやってきて、 「そういう人権侵害が許されるはずがないだろ」 とすごいもっともな裁きを下したので終了。終了です。

2020-03-16 20:41:24
帽子男 @alkali_acid

え?そんなんある? ウハウハドスケベご都合ファンタジーちゃうやん…主人が奴隷を解放して感謝されてめちゃくちゃ惚れられる展開はよくあるけど、普通に叱られて終わるやつおかしない?どこ需要? って思うでしょうけど、まあね。男性向け成年漫画だと割とありますよ、司法による介入ENDは。

2020-03-16 20:43:54
帽子男 @alkali_acid

だからねえ。終わっちゃったんですよ。 終わった。 完全に終わった。当然ながらエルフの女奴隷を代々受け継ぐ家系は取り潰しとなり、家屋敷も地所も財産もことごとく地上から一掃されました。 は? 当たり前だろ奴隷制でウハウハとか舐めてんのか? もう第四紀だぞ価値観アップデートしろ。

2020-03-16 20:45:50
帽子男 @alkali_acid

あとね。 しょうがなかったんすよ。取り潰しになった時の当主、家系の八代目はね、なんと博打うちだったの。そう。ギャンブルにはまってた。 先祖が築いてきたもんを全部賭けに費やしてしまってね。 すってんてんになってしまってたから。 どっちにしろ破産なんすよ。奴隷制がどうこう以前にね。

2020-03-16 20:47:50
帽子男 @alkali_acid

んで、このろくでなしの当主は、まだ赤ん坊の息子を胸に抱いてね、どうしたものかと、あちこちをさまよった訳ですが、若いころの放蕩がたたってもう命は尽きようとしていた。

2020-03-16 20:49:48
帽子男 @alkali_acid

「ウィスト…だらしねえ親を許しておくんなせえよ…あんたさんを一人前に育てるまで保つと思ったんですがねえ…どうにもままならねえもんでさ」 そう話しかける。穀潰しだが一つ良いところがあって、子供だけは大事にする。 「あんたさんを…どうしたらよござんしょ…ずっとにこにこしてて貰いてえ」

2020-03-16 20:52:28
帽子男 @alkali_acid

息子は手をぐーぱーしてから、父の薄汚れた衿を掴んだ。 「てみゃえ」 「へへ。違いまさ。手前ってのは名前じゃなくて…いや…覚えなくていいんで。ウィスト…あんたさんを不幸せにしちゃ…あのおひとに…おっかさんに申し訳が立たねえや」

2020-03-16 20:54:28
帽子男 @alkali_acid

ちなみに八代目はろくでなしだったので、息子の母親に逃げられました。 母親の名誉のために言っておくと、逃げた時にはまだ家系は大変な威勢があって、まさかここまで落ちぶれ、子供が路頭に迷いかねなくなるとは想像もしていなかったのです。

2020-03-16 20:56:43
帽子男 @alkali_acid

父親は子供に頬ずりをして座り込む。 「あんたさんを…いっそ故郷(くに)に置いてくりゃあよかったですかねえ…向こうじゃ何不自由なかった…だけど…あんたさんは、故郷にいちゃならねえんで…あんたさんが…ここで…カタギとして暮らしてくれなきゃあ…おさまりがつかねえんで…勘弁してくだせえ」

2020-03-16 20:59:31
帽子男 @alkali_acid

「てのは本当は…そうじゃねえんで…手前は…どうにも…あんたさんのおっかさんと別れるのが寂しかった…そいで…忘れ形見のあんたさんを側においときたかったんでさ…ウィストよう…だめな親を許しておくんなせえよ」 「んにゃ」 「おおそうですかい…」

2020-03-16 21:01:33
帽子男 @alkali_acid

父が子を抱き寄せると、小さな額が胸にこつこつとぶつかる。かすかな温もりの漣を感じて、親は嬰児に指を振った。 「いけねえ。手前のためでもおよしなせえ…約束したはずでさ。あんたさんは普通にお生きなせえ。何にも目立たず、世の中を引っ掻き回さず、静かに…」 「うー…」 「へへ」

2020-03-16 21:04:16
帽子男 @alkali_acid

親子はしばらくそうして木立のあいだを抜ける小径で、切り株に腰掛けて過ごしていた。あたりは寒く、吐く息は白い。 「さてどうなるか…賽子がありゃ。ちょいと転がしてみるんだが」 「んーあー…んー」 「うふふふ。ご飯にしますかい?重湯を作りましょうかねえ」

2020-03-16 21:06:13
帽子男 @alkali_acid

やがて木でできた車輪の軋む音が聞こえてくる。 枝々を揺らして、奇怪な影が一つ近づいてきた。馬車だ。頑丈な台の上には小屋が載っていて、鱗状の板で葺いた三角屋根がついている。緑の丸扉がついていて、表面には梟や貂や鱒や雛菊の絵が雑多に描いてあった。 牽いているのは人間だ。ただし大きい。

2020-03-16 21:09:26
帽子男 @alkali_acid

うっそりと背が高く、左右の肩が小山の如く盛り上がり、うなだれたように下がった首にはじゃが芋じみた顔がついて、岩でも噛み砕けそうな顎がぐっと前に突き出ている。片目は引っ込み、片目は突き出て、髪の毛はまばらだ。 「よいおひよりで」 仔を抱いた父は挨拶する。

2020-03-16 21:11:01
帽子男 @alkali_acid

空は曇り、今にも雪がちらつきそうで、とうていよいお日和とも言えなかったが、しかし馬車牽きの巨漢は単にあっさりと無視した。 馬車の丸扉が開いて、小柄な女が顔を出す。中年の終わりにさしかかり、皺の目立ち始めた容貌をしている。しかしそれはたいして注意を引かない。疣だらけ瘤だらけだから。

2020-03-16 21:12:49
帽子男 @alkali_acid

特に背中に三つも瘤があって、何とも不格好だ。 ちなみに肌の色は、馬車を牽く巨漢は白っぽく、小屋にいた女は浅黒い。 相対する父子は暗い膚だ。

2020-03-16 21:14:24
帽子男 @alkali_acid

「お困りかい。さすらいの民のお仲間さん」 旅から旅への暮らしを送る人々特有の言葉で、瘤つきは尋ねる。すると切り株に座った男は応じた。 「お困りと言やあそうかもしれませんや」 「赤ん坊のご飯がないの?おしめを洗いたい?あせもができたのかい?熱があるならニガセリの薬をお飲み」

2020-03-16 21:16:33
帽子男 @alkali_acid

ばくちうちは、馬車の上と下、大小の二人組をとっくりと眺めやった。 「…ご親切な方々でさあ…ですが…お気持ちに甘えていいのか解りかねるんで」 「困ってるならお言いよ。さすらいの民は相見互いじゃないか」 「さあて…どうも手前と息子は厄介ごとの種になるかもしれねえ」

2020-03-16 21:19:33
帽子男 @alkali_acid

「さすらいの民は、どこへ行っても厄介ものさ。皆同じ。じれったい人だね」 「手前に昔の力が、きれっぱしでもあって、先々のことを見通せりゃいいんだが」 「占いなら任せておおき。このゲラおばさんが当ててあげるよ」 「…手前のこたあ解ってま。まもなくくたばりそうなんで」

2020-03-16 21:20:55
帽子男 @alkali_acid

「おや!妖精の軟膏があるよ!寿命を延ばす代物さ」 「…いや、結構。くたばったあとの方が問題なんで…このおちびさんに幽鬼になってつきまとうかもしれねえ」 「いいじゃないか。先祖の霊が守ってくれりゃ安心だよ。でも軟膏はいらないのかい?」 「…そうかもしれねえが…」

2020-03-16 21:22:20
帽子男 @alkali_acid

父は溜息をついて、赤ん坊の頬を軽くつつく。 「手前だって、たとえくたばってもこの子についててやりてえ…だけど…普通に暮らしてもらいてえのも確かだ。幽鬼がつきまとっちゃ普通って訳にゃあいかねえでしょ?」 「まあそりゃそうだねえ」

2020-03-16 21:24:02
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