【テド惑】黒の王

大崎巧実@冬眠中 @mboxtw

「貴方にもきっとわかりますよ」とキヨテルが告げた。「武の神に仕えるあなたなら」って。 そこでわっくんは思い出した。その名前に聞き覚えがあった事。 「アンタ智の神の眷属か！」って。キヨテルもわっくんと同じ神の遣いで、仕える神は違うけれど同じ場所にいた。

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言われてみれば、って感じでわっくんは気付く。感じる気配が天にいる時の空気に似てる事。じんわりと染みてくる力もまた、神族が持つものにとても良く似てる。 「何故？」ってわっくんは聞いた。なんで神族に属する者が魔物の傍にいるんだと

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キヨテルは答えた。「あの方は私が求める『正義』だった」って。 天にいて智の神に仕えながらも付きまとってきた疑問。自分が成す『正義』の意味。天の命に従い続けていれば『正しい』のか？ その答えをキヨテルはテッドさんに見た。だから自ら天を降り、彼の元へと下った。

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「お慕いしています」とキヨテルは告げる。けれどそれはテッドさんには届かなかった。 「貴方の物になりたい」と望んだキヨテルにテッドさんは「『予備』になるなら飼ってやってもいい」とそう答えた。 愛されなくてもいい。それでも貴方の傍にいられるのなら。キヨテルが望んだのはただそれだけ。

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「私は純潔のまま、この首輪を受け入れました」とキヨテルが笑った。 天界ではキヨテルは『行方不明』という事になってる。けれど真相は自分の意思で天を降りたキヨテルを、天界の失態を隠す為。 それとわっくんはもう一つの理由を知って激怒した。 キヨテルがする『赤い首輪』の意味。

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その首輪の色は『血の色』。 『予備』だとテッドさんはキヨテルにそう告げた。それは言葉通りの意味で、テッドさんに何かあった時、キヨテルはその命と全てをもってテッドさんに尽くすという契約。 「それが望みだって言うのか？！」ってわっくんは憤った。それにキヨテルは頷くのだけど。

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淫魔であるテッドさんにとって『処女』っていうのは物凄く大事で。吸い取る力の量も桁も段違い。 それで尚且つ神族っていうのは内包する力の量も飛びぬけてて。 『だから』テッドさんはキヨテルを『予備』に、と告げた。 『神族』で、かつ『処女』の者。それが淫魔にとって一番の復活剤。

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テッドさんの命に危険が迫った時に、キヨテルはすべての精をテッドさんに捧げる。当然、吸い尽くされてキヨテルは死ぬ。 処女である事を保つために一切手は出されないし、ただ想いを募らせていくだけなのに、キヨテルは言った。 「私には『それだけ』の事なのですよ」って

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きっとわかるから、とキヨテルはわっくんに言った。 武の神に仕えるわっくんは『破邪』の存在。誰より『正義』を成すものであるのなら、キヨテルが見つけた『正義』に気付くはずだから、と。 その意味はまだわっくんには理解できなかったけれど。

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キヨテルの話はとりあえずここまでにして。また別の話。 ある日わっくんが目を覚ますと、飛び込んできたのはテッドさんに良く似た顔。 それはテトさんだったのだけど、寝起きだし、突然の事に固まってるわっくんにテトさんは「へーこれが片割れの」みたいな感じでニコニコ笑ってた

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昨夜も抱き潰されて気絶するようにやっと眠って。んで起きたらテトさんに眺められてて。 まったく状況のつかめてないわっくんからテッドさんがテトさん引き剥がしてくれた。 と言うかお前家族居たの？？みたいなちょっとズレた感想（びっくりしすぎて頭が回ってない）

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で、わっくん素っ裸だから首輪も丸見え。テトさんは銀の首輪がテッドさんの一番のお気に入りだとわかってるから、好奇心がわくわくと。 『あの』片割れが銀を填める程嵌った子なんてどうなのかしら？美味しいのかしら？？みたいな。 まあ、独占欲の強いテッドさんがそれを許すはずもなく。

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テトさんに質問攻めにされて、女の子苦手なわっくんは硬直してたんだけど、テッドさんが追い払ってくれてちょっとホッとしてた。 「まあ、安心しろ」ってタバコ吸いながら言ってくれた。「あいつは女専門だから男は襲わねーよ」って。 どこに安心すればいいんだとかわっくん突っ込んでたけど

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で、ふと気付いた。「あの子とお前ってそっくりだよな」って。髪の色も目の色も、そっくりそのまま。 「俺とテトは双子だからな」って教えてくれたけど、それにも更に驚いた。 「双子の淫魔なんて聞いた事ないぞ？！」って。 テッドさん自身も自分達以外に双子の淫魔は見た事ない。

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のんびり煙草吹かしながら、だから俺達は互いに可笑しいんだろうな、って話してた。 テッドさんは男を狙うインキュバス。テトさんは女を狙うサキュパス。どちらも本来は異性を狙う淫魔なのに、何故か好むのは同性。 可笑しいな、とはわっくんも思ってたけどそういうもんなのか？？って思ってたｗ

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けどテッドさんが襲って楽しいのはやっぱり男で、女の子襲っても楽しくないから力も巧く吸い取れない。 『双子』だから可笑しいんだ、とテッドさんは言った。そもそもあり得ない事で。イレギュラーな生まれはイレギュラーでしかない。 そんな事をいうテッドさんに「それでいいんじゃねーの？」って。

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「お前が求める物が『それ』ならば、それでいいんだ」って慰めてた。 異常かどうかなんてそんな事はどうでもいい。自分が『そう』だと信じたものが『正しい』んだと。 「それ、魔物の考えだぞ」なんてテッドさんに笑われてた。「お前も染まってきたんじゃねーの？」なんて。

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「折角励ましてやったんじゃねーか！！」って怒るわっくんにテッドさんは笑ってた。 やっぱり『異端』だからちょっとだけ気にしてた。 『魔物』だから常識だとかそーゆーものには縛られないけれど、でも肯定する物も人もいなかったから。 ちょっとだけ救われた、そんな小さなエピソード。

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まだわっくんがテッドさんに捕まって間もない頃。 テド「おい犬」 惑「誰が犬だ」 テド「お前に決まってんだろ」 惑「俺は犬じゃねぇ！！！(# ﾟДﾟ)」 テド「お前の名前知らないんだからしょうがないだろ」 なんて話をしてた。

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テド「そーいやお前名前は？」 惑「言わねぇ」 テド「それくらいいいだろ」 惑「お前馬鹿か？！魔物に真名を教える奴がどこにいる？！」 逆に怒られた。 魔物に本名を知られるのはそれを契約の署名として縛られる可能性があるので知られないようにするのが普通。

大崎巧実@冬眠中 @mboxtw

テド「別に署名に使ったりしねーよ」 惑「魔物の言葉など信用できるか」 テド「首輪してんだから必要ねーだろ」 惑「ぐっ…」 言い負かされるわっくん（笑）でも、頑なに名前を言うのは拒んだ。 教えろよ、ってテッドさんにしつこく言われたけど、誰が言うか！！ってそのたび突っぱねてた

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嵌められた首輪にもまだ慣れてなくて、これ以上縛られてたまるか！！っていう感じ。 で、名乗る事もないまま時間が過ぎた時。事件が起こるわけだ。 執事の仕事中、わっくんは一人の子供を見つける。城に出入りしてる誰かの子供かな？って。何もつけていなかったから。

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そもそもこの話のテッドさんは子供は食べないのだけど、わっくんはそんな事知らないか。 一人でいる子供が気になって話しかけてた。もしかしたら迷子かもしれないし。 で、やっぱり城に出入りしてる人の子供だった。仕事中で終わるのを待っていたらしい。

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「ここはあぶねーぞ」ってわっくんが言った。 テッドさんのテリトリーの中ではあるけれど、人の出入りも多い。それに魔物もいる。子供一人がうろうろしてていい場所じゃない。 「此処じゃない所で遊びな」って注意してあげるのでした。せめて魔物に出くわさない場所に、って。

大崎巧実@冬眠中 @mboxtw

で。その時はそれで終わったのだけど。しばらくしてわっくんはまたその子供を見かけたわけだ。 場所は確かに移動した。でもまだ一人で遊んでて。というか遊びに夢中になってて、どんどん外れの方に向かっていくのがわかった。 まずいな、って。子供が誘われていく場所は安全な場所じゃない