ノー・グリッター #4

クトゥルフオマージュものが多すぎてオマージュだけでクトゥルフものが書けるようになった 3:https://togetter.com/li/1487216 5:https://togetter.com/li/1488915
0
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2020-03-31 21:01:00
劉度 @arther456

「神か……」宇宙船G.T.の艦長は大鯨の報告に半信半疑であった。「未知の存在や法則を神と呼ぶのは、原住民らしいというか何というか」《ですが、艦長。我々のセンサーでも計測できない何らかの力が働いていることは事実です》「なら大鯨、お前は魔法を信じるのか?」《まさか》1

2020-03-31 21:03:00
劉度 @arther456

「計器のアップデートが必要だな」《私もそう思います。この戦いが終わったら、一度帰還しても良いですか?》「その必要はないだろう。救援部隊が太陽系に近づいている。この戦いが終わる頃には、この星はベルサーのものになっているだろうよ」《あら、もうそんなところまで来ていたんですか》2

2020-03-31 21:06:00
劉度 @arther456

ウガリト方面軍の動きは早かった。海がある星、という餌が予想以上に聞いたらしい。「あと数日だ。無理にその神とやらと戦う必要はない」《そうですね。では、もう少しの間、提督さんたちに協力するふりをしておきましょう》3

2020-03-31 21:09:00
劉度 @arther456

【ノー・グリッター】#4

2020-03-31 21:10:00
劉度 @arther456

陸軍はジャカルタ市街からやや離れた山中を捜索している。上空には千代田が操る偵察機が飛んでおり、彼らをサポートしている。「千代田さん、まだかい?」《もう目の前だけど、見えない?》返事と同時に、捜索隊の視界が開けた。「……見えた。なるほど、こりゃ不自然だ」4

2020-03-31 21:12:00
劉度 @arther456

山の中腹に不自然に開けた場所があった。上空から千代田がそれを見つけたので、捜索隊は何かあると考え、そこへ向かったのだ。「こりゃ、砲撃跡だな。木が薙ぎ倒されてる」「可哀想に……森だって生きているんだぞ」「……おい、あれは何だ?」隊員の一人が、砲撃跡の一点を指差した。5

2020-03-31 21:15:01
劉度 @arther456

山の斜面に大きな穴が空いている。覗き込んでみると、砲撃にしては深すぎる穴があった。「田代、稲垣、見てこい」「うっす」「了解」2人は飛行魔術を使って穴の中に降りていく。「……おおー!こりゃすげえ!」しばらくすると、驚きの声が響いてきた。「神殿です!隊長、古代神殿ですよ!」6

2020-03-31 21:18:00
劉度 @arther456

「何も見えねえよ照らせ!」「はいよ!」いくつかの光球が生み出される。照らし出されたのは、気の遠くなるほど巨大な石造りの広間。柱にはびっしりと紋様が刻み込まれている。東南アジアの文化とはかけ離れた異物だ。「なるほど。石の神を封じるにはふさわしい神殿だな」7

2020-03-31 21:21:00
劉度 @arther456

捜索隊長は通信機を起動させる。「こちら捜索隊。『鳥堀』、応答を」《こちら『鳥堀』。どうしました?》「山中にて神殿を発見。これより調査を開始する」《よっし!……おっと、失礼。罠や魔物に注意して、調査してください》「了解。よし、鏑木と芝は見張りに残れ。他は全員、中に入るぞ」8

2020-03-31 21:24:00
劉度 @arther456

「うぉいげーしゅてーれー、ねーけーうぉいてーむ、おーけーなすてー、みーてむー」提督がクリスマスツリーにみかんを飾り付けながら第九を口ずさんでいる。それを、倉田がやや遠くから見守っている。「おーい、隊長さん」倉田が振り返ると、ボサボサの紫髪が特徴的な艦娘がいた。10

2020-03-31 21:27:01
劉度 @arther456

「ええと……」「隼鷹です」「ああ、どうも。何か用ですか?」「いや、こんな所で何してるのかなーって思って」「あー、いや。特に何も無いんですけど……」しばし考えた後、倉田は答える。「休憩?」「いや落ち着かないでしょ」周りでは発狂した艦娘たちが騒いでいて、やかましい事この上ない。11

2020-03-31 21:30:01
劉度 @arther456

「あれかい、隊長さんも、提督の様子が気になって見に来たクチかい?」「……まあ、そんなところです」「だろうねえ。大学時代の友達があんなんになっちゃったら、誰だって気になるよ」そう言われて、倉田は昔の東郷を思い出す。「……昔も昔で、あんな所があったような」「えっ」12

2020-03-31 21:33:00
劉度 @arther456

「え、提督、昔からあんなんだったの?流石にちょっとそれは意外なんだけど」「たまに予言とか言って、近くの人に妙なことを信じ込ませるんですよ。またその語りが上手くて、私もよくノセられました」「なにそれ気になる。もっと聞かせて」隼鷹の食いつきが非常にいい。13

2020-03-31 21:36:01
劉度 @arther456

「例えばスーパーの安売りチラシを見た時なんですけど……」「倉田隊長!探しましたよ!」大鯨が駆け寄ってきた。見るからに慌てている。「どうしました?」「山中の捜索部隊が戻りました。それに、加藤さんも来て、すぐに倉田さんを呼んでほしいと」何かあったらしい。「すぐに向かいましょう」14

2020-03-31 21:39:01
劉度 @arther456

ジャカルタ臨時会議場には、最初の会議とは違う、緊迫した雰囲気が漂っていた。「えー、山中を探索した結果ですが、神殿を発見しました」最初に報告したのは、捜索隊の隊長だ。「建造されたのは推測で、えー、1億年前。有史以前の超古代建造物です」聴衆がざわつく。考古学を覆す大発見だ。16

2020-03-31 21:42:00
劉度 @arther456

「数平方キロメートルの神殿には、床、壁、天井にびっしりと文字が書かれていました。解読はできませんが、残っていた魔力の性質からして、何らかの封印だったと推測されます」プロジェクターに神殿の写真が映し出される。狂気じみた文字量が画面を埋め尽くしている。17

2020-03-31 21:45:00
劉度 @arther456

「バタビア沖棲姫はここに封じられていた、と」「恐らくは。そして、この神殿を見た加藤殿が申し上げたい事があると」捜索隊長に促されて、加藤が立ち上がる。その顔色はいつも以上に青白くなっていた。「前回の会議で気になることがあったから、少し調べてみたのだが……」18

2020-03-31 21:48:00
劉度 @arther456

それぞれのタブレットに画像データが配布される。何かの本のコピーのようだ。倉田には読めない文字で書かれている。「何ですか、これ」「この神殿と同じ文字が使われている」目を凝らして見ると、確かに同じような文字に見える。「では、あの神の手掛かりがここに?」「いや、神ではない」19

2020-03-31 21:51:00
劉度 @arther456

加藤あきつ丸は慎重に口を開いた。まるで、誰かに声を聞かれるのを警戒するかのように。「あれは数億年もの昔に地球を支配した異常存在。旧支配者だ」「旧支配者……」大鯨はその名を復唱する。「って、何ですか?」他の出席者に聞くが、誰も答えられない。「……私が解説しよう」20

2020-03-31 21:54:00
劉度 @arther456

この星には、あるいはこの世界には、人智が及ばない存在がある。有史以前に地球上に存在した、物理法則の通用しない異常存在。外宇宙より現れ、数億年前の地球に君臨した外宇宙神格。次元の裂け目から地球に干渉してきた、異次元生命体。一部の魔術師の間では、それらは旧支配者と呼ばれていた。21

2020-03-31 21:57:00
劉度 @arther456

旧支配者の存在を知る者は少ない。何しろ、その殆どが有史以前に姿を消しているからだ。その存在を伝えているのはほんの僅かな書物や伝承だけ。螺湮城本伝の『九つの頭を持つ龍』、エリケシュ秘史の『貪る者』、イトゥ族の伝承に現れる『一にして無限』などが、旧支配者であると考えられている。22

2020-03-31 22:00:02