N_Ozawa_ さんの「水素脆性」と「欠陥を検出できる限界寸法」のお話

金属系エンジニア @N_Ozawa_ さんによる「水素脆性」と「欠陥を検出できる限界寸法」のお話 結論:金属っておもしろい!
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材料欠陥で多いもう一つは、鋳造で見られるもの。 溶けた金属を流し込んで、冷えたら金属は鋳型どおりの塊になる。このとき鋳型に触れている場所から冷えるので最後に固まるのは中心付近になるのだが、ときとして冷えるときの収縮により、中央が空洞になることがある。

2011-06-16 23:13:46
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この「鋳造物の中の空洞」は、金属に溶けていたガス成分で満たされていたり、あるいはほぼ真空だったりする。

2011-06-16 23:17:08
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ちょっと話が飛ぶ、というかそもそもこの話を書いた理由にも戻る。 「材料欠陥」のことをことさらに書くのは、「強度に悪影響を及ぼすから」、特に「水素ぜい性」とは関連が大きいからだ。

2011-06-16 23:20:44
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「鋳造物の中の空洞」がやばいのは何となくわかると思う。 空洞だらけでふわふわのサラダせんべいに力をかけたらあっという間に割れる。それと同じだ。

2011-06-16 23:24:38
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では、金属組織の結晶粒中に異常なものが詰まっている場合はどうだろうか? 詰まっている異物の多くが “るつぼの欠片” “金属の酸化したもの” 、つまりセラミクスの類の「もろい」物体である。そして金属組織に力が掛かって変形したとき、これらは周囲よりも容易に壊れてしまうのだ。

2011-06-16 23:33:12
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金属組織の中でもろい異物が先に壊れてしまった。それはその異物の大きさだけの空洞が発生したのと同然だ。しかも悪いことにこの空洞は扁平で、そのエッジはナイフでつけたように鋭くなる。 つまり、金属に鋭くて小さな傷が発生したことになる。しかも表面から見えない内部にだ。

2011-06-16 23:39:33
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かくして、金属の中に欠陥があるのは、鋭い傷があるも同然、というこじつけが成り立つ。あくまでこじつけ、ものの譬えだとご理解いただきたい。

2011-06-16 23:55:51
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ここで思い出して欲しい科白が二つ。 「硬いものはもろい!」by郷秀樹 「艦体の傷一つ見逃すな!」by海江田四郎 そう、高強度=硬い素材に傷はご法度なのだ。 ところで・・・・・・あの当時、艦体にナイフで『やまと』と刻んだ海江田艦長にツッコミをした人、手を上げろっww

2011-06-16 23:59:46
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【高強度の素材はもろいために傷から破損しやすい】+ 【素材の中に欠陥があるなら、その材料欠陥は傷があるのも同然】 = 【高強度材料は材料欠陥についてくどいほど注意が必要】 ということになる。

2011-06-17 00:08:07
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高強度材料に材料欠陥があるとやばい、その一端はお解かりになったかと思う。 実用になっている材料は、この問題を避けるためにどうするだろう? その回答の一つが【鍛造】だ。 もとの素材を熱して叩き伸ばし、折り返してまた固まりにし、また熱して叩き伸ばし・・・・・・

2011-06-17 00:13:12
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鍛造により、金属の組織は細かく潰され延ばされ、その結果として結晶粒は最初よりも格段に細かくなる。 このとき、材料欠陥も細かく潰され伸ばされて、細かくなると同時に素材の各所に分散されてしまう。個々のサイズが細かいだけでなく、グループとしての存在も薄くなり、危険性が下がるのだ。

2011-06-17 00:18:09
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このように、ちゃんと鍛造して供給されている高強度素材なら、材料欠陥で壊れる心配はしなくて良い。・・・・・・よい、はずなんだが・・・・・・でも、時には・・・・・・壊れる。

2011-06-17 00:25:50
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その理由の一つ目は、欠陥検出の限界以下の小さな欠陥が破損の原因になってしまうケース。 欠陥の検出には色々と限界がある。 あまりに小さな欠陥だと見落としたり、形状が複雑で見つけられなかったり、素材が大きすぎて検出信号が届かなかったり・・・・・・

2011-06-17 00:32:47
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もう一つの理由は、素材を加工して製品にするときに、新しく欠陥ができるケース。 例えば溶接。部分的に一度溶かしている部分に、空洞ができたり、異物をまきこんでしまったりする。 例えば旋盤加工。無理な高速加工や合わない潤滑剤で、加工面に異常な組織や細かい割れを発生したりする。

2011-06-17 00:38:43
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さて。今夜はここまでにしたいと存じます。 まとめましょう。 材料欠陥やばい高強度材料ならマジやばい鍛造しっかりやるとまあ大丈夫だけど、でも検査で見つからないほど小さな欠陥で壊れることもあるよ。溶接とか欠陥つくってるようなもんだから、かなりやばい

2011-06-17 00:43:48

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着た食った、もとい、帰宅ったので、さっそく続き。今日は「遅れ破壊」のお話を。 さあ、「遅れて壊れる」ってなんぞや? から始めましょう。

2011-06-18 23:58:38
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どんな素材も、掛けられる力の限界を超えたらそこで壊れる。 例えばパイプ椅子にオモリをどんどん乗せてみる。80キロは平気、100でまだまだ、120ちょっとこわい・・・そして限界を超えたら一気に壊れる。 でも、限度内ならずっとそのままで大丈夫・・・のはずなのだが

2011-06-19 00:12:26
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ところが、限度を守っているのに、そのままずっと使っていたら突然壊れる、ということがある。その原因の一つが「遅れ破壊」。

2011-06-19 00:14:59
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ただ、「遅れ破壊」といってもその定義には諸説あるようだ。 「力と微細な腐食が組み合わさっておきる破壊」の一部を「遅れ破壊」の中に含めるものもあるが、今回は「金属組織内の変化」で起きるものに限りたい。 腐食についてはまた別の機会に。

2011-06-19 00:20:31
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さて、二つほど復習を。(1)水素は金属の中を移動できる。 (2)金属の結晶の中に異なる元素が入ると強く=硬く=もろくなる。 (うん、これは極論。異論は認める)

2011-06-19 00:33:21
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では、その異なる元素とやら(鉄の場合は炭素とかボロンとか窒素とか)は金属の中で移動しないのか?  実は高温でならば移動する。鉄の場合は赤熱するような温度の下でこれらの元素が中を動き回り、均一に溶ける。ちょうどお湯に塩が溶けるように。

2011-06-19 00:36:23
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その異なる元素が溶け込んだ金属(固体)だが、温度が下がるとどうなるか? 溶け込んだものは溶けきれなくなる。さめたお湯の中に塩の粒が出現するように。 だがしかし温度が下がると中の原子は動き回れなくなる為、塩の粒のように出現することもできず、無理やり解けたままの状態になるのだ。

2011-06-19 00:42:08
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このように無理やり溶け込んでいる状態を作ることは、鉄では普通に行われる。 【焼き入れ】がそれだ。 高温で炭素が均一に溶けている鉄を一気に冷やすと、一部の炭素は粒として出現し、一部は鉄の化合物を形成し、残りは鉄の結晶に溶け込んだまま動けなくなる。 (これまた極論。異論は(ry

2011-06-19 00:49:42
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金属はいろいろな元素を溶かし込んだ【合金】にして、しかも【熱処理】して使う。この【熱処理】というものの基本は、無理やり溶け込んでいる状態をどうつくり、どうコントロールするか、にある。 ここで問題なのは、【その無理やりな状態が安定しているか?】だ。(矛盾した言い方だがご容赦を)

2011-06-19 00:55:53