ナラク・ウィズイン#4
【前提知識】 ・ニンジャは平安時代をカラテで支配した半神的存在 ・彼らは謎のハラキリ儀式を行い歴史の表舞台から姿を消した ・その魂(ニンジャソウル)が時を超え、人々に憑依融合する時代が既にやって来ている ・ニンジャの大半は実際邪悪 ・ニンジャスレイヤーは邪悪なニンジャをスレイする
2020-04-15 20:50:28【登場人物】 マスラダ・カイ:ニンジャスレイヤー コトブキ:自我を持ったオイランドロイド ザック:ついてきた少年 コルヴェット:ニンジャの冒険魔術師 フィルギア:平安時代より生き続けるリアルニンジャ トム・ダイス:UCAの兵士 タキ:自称テンサイ・ハッカーの情報屋
2020-04-15 20:52:46【危険な邪悪ニンジャ!】 ジョウゴ親王:明智光秀の子 クセツ:地獄の炎を操る明智四天王 ザンマ・ニンジャ:5人目の明智四天王 クローザー:邪悪なトリックスター、加藤忍者 レッドテラー:巨大斧使い リキッド:水遁術使い
2020-04-15 20:56:02「何たる事か」つば広の旅人帽を傾け、真鍮の魔術望遠鏡を覗き込んでいたコルヴェットはこめかみに冷や汗を垂らし、呻き声をあげた。彼は相当離れた地点のマングローブの樹上から、ゴマグラウンドを偵察しているのだった。「これは想像以上だぞ、ニンジャスレイヤー=サン」彼は呟いた。 1
2020-04-15 21:03:44キキョウ紋の刻印された陣幕に四角く囲われただだっ広い空間。その四隅には篝火が焚かれ、暮れ始めの空を焼き焦がす。中央には小さな塔ほどもある鈍色のモニュメントが屹立し、それを円状に幾重にも囲むのは、休まず祈祷するモータル・ボンズの集団である。 2
2020-04-15 21:08:11これがゴマグラウンド……競技場ほどもある広さの場所で、実際恐るべき儀式がたけなわであり……「イヤーッ!」「イヤーッ!」そこへ繋がるジップラインを伝って、チューニンを先頭にしたゲニン集団が、今まさに集まってきていた。彼らはハリマ離宮の東西南北の五重塔から吐き出される兵士達だ! 3
2020-04-15 21:10:36ドオン!ドオン!ドオン!ドオン!一斉に打ち鳴らされるタイコ!ビイン!ビイン!ビイン!ビイン!一斉に弾かれる矢無きセイクリッド儀式弓!「ハンニャー……ハンニャー……ハンニャー……」休まず唱え続けられるボンズ・チャント!ナムサン……おお……ナムサン!これでは正面突破は不可能だ! 4
2020-04-15 21:13:24「ウーム……」コルヴェットはスキットルのサケを口に含み、風をまとって退散した。……その、ゴマグラウンドの中心部。ギンカク・オベリスクを前に、腰に手を当てて満足そうに首をコキコキ鳴らしているのは、読者の皆さんもひどくご存知であろう、邪悪なるクローザーであった。 5
2020-04-15 21:17:17「ムフ……!」クローザーは三日月じみて目を細め、過酷なボンズの祈祷儀式の進行つつがなきを見守っていた。「ハンニャー……ハンニャー!」オベリスクの周りの地面には焼ける石炭が敷かれていた。意を決したボンズは裸足でその上に跳び乗る。合掌しチャントを唱えれば、このような火でも涼しい。6
2020-04-15 21:20:07「ハンニャー……ハンニャー……!」唱えながら一周すると、満身創痍となって飛び降りる。新たなボンズが入れ替わる。「ハンニャー……ハンニャー……アバーッ!」ナムサン!そのボンズの場合はセイシンテキが足りなかったか、歩く途中で足元から全身火に包まれ、焼死!急いで次のボンズが交替! 7
2020-04-15 21:22:51「なんと恐ろしい。モータルは容易に死ぬ、実に心臓に悪いな」クローザーは顔をしかめた。「もっと気持ちを高めてくれたまえ!親王殿下は人遣いが荒くていらっしゃるゆえに!この祈祷の素晴らしいありがたさで、君らのボンズ・ステージは実際すごい効率で高まるのだ。修行の機会なんだからな?」 8
2020-04-15 21:25:11「……つつがないか」「おや、クセツ君!」進み出たクセツをクローザーは振り返った。「ご覧の通りだ、ひとまず人材資源は足りている。親王殿下のご機嫌いかがかね?」「1秒でも早くギンカクを最適化する……それだけを考えろ」「クキキ……簡単に言ってくれる!命がけのボンズ達を労ってあげ給え」9
2020-04-15 21:28:13「恩着せがましい言葉は私には通じんぞ」「わかっているとも!獄より救ってくれた恩を強く感じているのは私のほうだ。君はネザーキョウで一番の友達だ!……ええと、要はこのギンカクが強力なUNIXサーバーだと思い給え。これに対しハッカー集団でDDOS攻撃を休まずかけ続けるという霊感プロセスだ」 10
2020-04-15 21:30:48「アバーッ!」どこかでボンズが死んだ。「……無論、あのようにニューロンを焼かれる。冗長性を確保する為に、この人数が必要だ……さあ、さあ……聞こえないかね?」クローザーは耳に手を当て、促した。オオオン……オオオン。確かに、呻き声じみた響きが、オベリスクから発せられている。 11
2020-04-15 21:33:57「ギンカクが……応えている」「然り!霊感コンサルタントの面目躍如だ」「親王殿下は、ギンカクの力を……その全てを欲しておられる」クセツは言った。「そしてそれは私の願いでもある。土壇場でおかしな真似をしてみろ。たちまちのうちに貴様は代償の重さを知る事になる。我が火は消えぬぞ」 12
2020-04-15 21:36:52「クキキ……わ、わかっているとも。ネザーの火で死ぬのだけは勘弁願いたい。むしろ今は歓喜する時だ。寿ぎたまえ、敵意は不要!」「黙るがいい」クセツは冷たく言った。……オオオン……オオオン……そのゴマグラウンドから中庭を挟み、屋敷の一室、窓辺でジョウゴ親王はオベリスクの呻きを聞く。 13
2020-04-15 21:40:42「聞こえるぞ」親王は呟いた。そして視線を同室の者……向かい合う相手に戻した。正座する巨躯の男の全身から不穏なカラテが放出され続けている。屋内にあっても背負う刃は降ろさない。アケチ・シテンノの1人……ザンマ・ニンジャであった。「ザンマは憩うておる」彼は低く言った。 14
2020-04-15 21:43:49このザンマ。タイクーンの命により、ニンジャスレイヤーを討つべく、このハリマ離宮へ馬を飛ばしたという。馬は恐るべき巨大さで、気が荒く、到着早々に馬丁を1人食い殺した。親王はタイクーンの実子であり、無論シテンノよりも上の立場にあるが……親王として、ザンマには然るべき対応が必要だ。 15
2020-04-15 21:47:11今すぐにでもギンカク・オベリスクの前に陣取り、待ち構えたい思いはあった。ザンマの相手は面倒ですらある。しかし、矢も盾もたまらぬ姿勢をクローザーに見せれば、あの者を調子づかせる事になるだろう。「ニンジャスレイヤーは我にとっても不快な敵じゃ」「ザンマが鬼を討つ。わかるな?」 16
2020-04-15 21:50:39「フン」親王は鼻を鳴らした。「ニンジャスレイヤーは貴様にくれてやる。十中八九、奴の目的はギンカク。いずれ参ろう。討つべし」「ザンマは高ぶっておる」ミシミシと音が鳴った。ザンマのカラテが部屋全体を軋ませているのだ。「ザンマは知る。ニンジャスレイヤーはキョート・シテンノを殺した」 17
2020-04-15 21:54:34「キョートか」ソガの治世、ニンジャスレイヤーは突如現れ出で、数多くのニンジャを殺し、キョート城の東西南北を守っていたシテンノを皆殺しにしたという。ジョウゴはその言い伝えを耳にしていた。ザンマは頷いた。「ソガはおらぬな」「おらぬ。とうの昔に」「ショッギョ・ムッジョの響きあり」 18
2020-04-15 21:58:38ブオウ!風圧がジョウゴの髪と髭を揺らした。ザンマは予告なく抜き払った自剣を膝の上に置き、手でなぞった。ムウウウ……。刃が鳴った。「ザンマブリンガーは魔狩りの剣、オニ狩りの剣。ジゴクが鍛え、ザンマが名付けし刃也」「名に恥じぬはたらきを見せてみよ」「英雄に剣あり。剣は災い也」 19
2020-04-15 22:02:29親王は扇子で口元を隠し、目を細めた……その時、窓の外で光が生じた。親王は見やった。オベリスクの光である!「ザンマは光に興味なし」ザンマが先んじて言い、刃を撫でた。そして不意に懐に手を入れ、オリガミ・メールを取り出した。「矢文よりもザンマは疾し。タイクーンの言伝である」 20
2020-04-15 22:05:51