「俺がガキの頃、地元で一番の番長は全身刺青だらけでスラックスとアロハで通学するベトナム人だった」川井俊夫さんが語る"グエン"との思い出。

川井俊夫 @toshiokawai1122

これ俺の鉄板ネタみたいになってるんだが、俺が中学生の頃は、この国もえらい景気が良くて、出稼ぎ労働者ってのが世界中からたくさん来てたのよ。そんで俺の通ってた中学は近くに自動車関係の工場なんかもあったから、東南アジアからの出稼ぎ労働者を見るのは日常的なことだった。

川井俊夫 @toshiokawai1122

雨の日なんかはたまに言葉もろくに通じないベトナム人だかタイ人だかに傘をカツアゲされたやつとかもいたようだが、べつに町として彼らを警戒してるとか差別的な対応を取ってるとかはなかったと思うわ。俺は友達もいない乱暴なだけのクソガキだったが、まあなんも思ってなかったわ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

あの頃は子供の数も多かったから家から原付で行けるくらいの距離に中学校が六つも八つもあってな。やっぱりガキはバカだから、〇〇中は誰々が一番強いとか、そういうマンガみたいなことをやってたわけよ。それが中二の終わりくらいになると、地区全部の中学の中でも一番強いのは…と戦国時代が終わる。

川井俊夫 @toshiokawai1122

その噂の最強の男ってのが、すぐ隣の中学に通うベトナム人でさ。彼はただ“グエン”とだけ呼ばれていて、とにかく喧嘩は強いし日本語はカタコトだし凶暴だしで、かなり噂になっていた。ただ俺は学校もサボりがちだったし、友達もいないし地元の暴走族連中とも仲が悪くてあまり関わりがなかった。

川井俊夫 @toshiokawai1122

なんか出会ったきっかけはよく覚えていないんだが、たぶんグエンの方がちょっかい出してきたんだと思う。俺の中学の後輩が溜まり場にしてたビリヤード屋で半殺しにされて「アイツ呼んでこいヨ」みたいな感じで。俺はべつにヤンキー少年じゃなかったんだが、違う意味で有名なクソガキだったんだろうな。

川井俊夫 @toshiokawai1122

ガキの頃のことなどほとんどなにも覚えていないが、初めてグエンと会ったときのことは忘れられんな。向こうが指定してきたアパートの裏の空き地みたいなところでさ、20人ぐらいヤンキー少年を引き連れて、もうね、見た目が全然中学生じゃないわけよ。そもそも制服着てなかったしな。

川井俊夫 @toshiokawai1122

白のスラックスにアロハの前は全開で、両腕にごっつい刺青入っててな。現場で使うようなバカでかいシャベルを担いで、少し憂鬱そうにぼんやりこっちを眺めてるわけよ。絶対に殺されると思ったね。お前全然中学生ちゃうやんけ。マンガでももう少しリアリティあるやろと。しかも俺そのとき一人でなあ…

川井俊夫 @toshiokawai1122

まあ結局はいろいろとあってグエンとは直接殴り合いにはならず、イキってる取り巻きと少し喧嘩しただけでその場は収まったんだが、なんだがその後、よくわからないままグエンに付き合って家(伯父さんの働く現場のプレハブ)に行ったり、その伯父さんにミカンをもらったりして妙に仲良くなってな。

川井俊夫 @toshiokawai1122

確かに喧嘩したら3秒で殺されそうな雰囲気だったが、学年は同じでもグエンは歳が一つ上だったし、見た目よりもずっと真面目な男で、俺は当時そこらで盗んできたバイクに乗っていたんだが、真顔で「日本の法律じゃそれダメだろ？」とか言ってきたりしてな。不良ごっこにも興味はないみたいだった。

川井俊夫 @toshiokawai1122

俺はその頃はもう学校にもほとんど行かず、傷害、恐喝、強盗、放火、無免許運転などなどで、少年法がなかったらとっくに前科20犯みたいな状態でどこにも居場所もなければ、そんなものに興味もなかったので、へんな感じではあったがグエンは中学生になって初めて出来た友達であり先輩だった。

川井俊夫 @toshiokawai1122

伯父さんも一緒に酒飲んだりしてな。グエンの方が若いせいかずいぶんと日本語は上手になっていったわ。刺青は両腕だけじゃなく両脚にもあって、やっぱり喧嘩はクソほど強くて、マジでなんで中学なんか通ってるのか俺には全然わからなかったが、俺にとっては当時の唯一マシな思い出だ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

とまあ、この話のポイントはべつに俺の少年時代の思い出にあるわけではなく「俺がガキの頃、地元で一番の番長は全身刺青だらけで学生服の代わりにスラックスとアロハで通学するベトナム人だった」という強烈な絵面にあるわけです。外国人技能実習生制度を許すな。