「夢の中の夢の中の夢の中の……それを果てしなく繰り返しながら、千回は知らない誰かの人生の中で夢を見て、同じ数だけ目覚めた」川井俊夫さんの夢の話。

川井俊夫 @toshiokawai1122

入れ子になった夢だ。夢の中の夢の中の夢の中の……それを果てしなく繰り返しながら、千回は知らない誰かの人生の中で夢を見て、同じ数だけ目覚めた。いつの誰の夢だったか、その夢の中の俺は三百年ぶりくらいに兄貴と話していた。俺の兄貴じゃない。それなら先月電話で話した。夢の中の俺の兄貴だ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

寝苦しくて目覚め、湯を沸かしてなにか粉のようなものをカップで溶かし、その上から水と氷を入れて飲み物を作った。知らない誰かの兄貴が言った。タバコくらい、そりゃ俺もね。親父のやつを盗んだくらいだけど。しかしお前やMやTは悪かったな。ガキの頃からバスの中でも電車の中でも平気で吸っていた。

川井俊夫 @toshiokawai1122

それがいつのどの俺の過去で、眠る前の俺の人生と目覚めて冷たい飲み物を作っている俺の人生がどう繋がっているのかもわからない。べつの瞬間にはスタジアムの裏口で、見知らぬ男がやはり俺の兄だと言い、なにか妻に対して謝っていた。彼の話の中の妻も、俺の想像の中の妻も見知らぬ女だ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

何百年も旅を続け、何百回も目覚め、その度に微かな違和感を覚え、その瞬間がまだ入れ子の中なのだと気付く。始まりは思い出せないし、終わりを想像することもできない。見知らぬ世界、見知らぬ相手、見知らぬ俺自身の人生。夢の中でデジャブさえ感じたよ。誰の何の記憶なのかもわからないのに。

川井俊夫 @toshiokawai1122

眠ったまま、見知らぬ誰かの夢の中で気が触れて、死ぬのか、或いはその誰かのいつかの夢の中の登場人物になるのか、永遠の一部になるのか。入れ子は永遠を視覚化したものだ。曼陀羅と同じ。順序はなく、始まりも終わりもない。猫の鳴き声で目覚めたよ。正真正銘、本物の目覚めだ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

永遠の中の自分や他の人物を思い出そうとすれば、気が狂ってしまう。夢はなにも暗示しない。それにしても、あまりに永く、遠く、幾重にも繰り返し百も千も旅をして、人生を生きたから、ひどく疲れた。

川井俊夫 @toshiokawai1122

まあ俺くらいのキチガイになると、実際の記憶や過去もかなり曖昧で、濃い霧の中にめちゃくちゃに放り込まれたクソの欠片みたいなものだから、この程度で動揺はしない。過去というのは本当に使い途がないし、思い出す必要もないし、まったくどうでもいいものだからな。

川井俊夫 @toshiokawai1122

夢はなにも暗示しないが、想起するものはある。あれだ、お前らはよく怖がるだろ？　地獄だと思っていた場所が、堕ちた先の暗闇が、深淵の奥深くが、単なる歪んだ現実に過ぎないことを。そういうことだ。俺はそこまで無垢じゃない。そいつが退屈なただのクソだと知っている。本当に怖いのは無間さ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

嗚呼、こんな夜、くたびれた夜、少し混乱して動悸の落ち着かない夜、世界の解釈や詩について考え込んでしまいそうになる夜、月の欠けてゆく夜。歯を食いしばり、両手の拳を強く握り、肩と首の筋肉が盛り上がり、力みすぎて奥歯が小さく砕けるのを感じると、暴力が俺にとってどれほど重要かよくわかる。

川井俊夫 @toshiokawai1122

今も俺を生かしているのは、不条理に対する憎悪や、可憐な人間のための詩や、狂気への恐れや嘆きでもない。この頑強な肉体と底なしの体力、そして強力な暴力への信頼と自信だ。自分自身の異常な精神も、異常な世界も、うんざりするようなキチガイの群れも、憂鬱な夢も、全部ブン殴って粉砕できる。

川井俊夫 @toshiokawai1122

必要なのは嘆きや憐み、もちろん筋トレや格闘術でもない。思いきり拳を握って相手をブン殴ることだ。目一杯力を入れる。少し腰を落として利き腕と逆の足を軽く踏み出し、脇をしっかり締めて腰を回転させ、ムカつく野郎の脇腹か横っ面に固い拳を叩き込む。そいつができるうちは世界に絶望しないですむ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

あまりに狂った夜のせいでまだ心が荒んでいる。気分転換……だがネットでいろいろと見て回っても結局はコレという発見もなく逆にイラつく場合の方が多いからな。やはりマリア様がみてるOVA一話しかないのか……いや完全にハマってるやつみたいになってるやん。ただの危ないジジイやんけ。

川井俊夫 @toshiokawai1122

響けユーフォニアム、案外イケる。