掌小説語り~自作つぃのべる集~50

自作ついのべるのまとめです。 2017年6月分。
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リュカ @ryuka511

始まりは復讐だった。暴君の気まぐれで故郷は焼かれ、外出していた私だけが生き残った。憎悪を抱え王都へ旅立つ。各地で同志に出会い旅を共にする。私は憎しみの中にいるのだと思っていた。復讐を果たした後は自害するつもりだった。だが、他の道もあるのだと、仲間達が教えてくれた #twnovel

2017-06-01 00:39:33
リュカ @ryuka511

長きに渡り生贄を要求する怪物に、新任の神父は戦いを決意した。他者を犠牲にした安寧など偽りだと説く。生贄に選ばれた子供を密かに逃がした神父は、深夜に何者かの襲撃を受けた。翌朝、村人は沈痛な面持ちで神父の亡骸を怪物の下へ運ぶ。神父の決意は絶望しきった村人に伝わらない #twnovel

2017-06-02 00:15:51
リュカ @ryuka511

多くの者が我に愛を誓い、その命を投げ出した。だが我は何も返してやれぬ。一方的に命をかけられても困るのだ。自分の身は自分で守れるというのに。しかし彼らは真剣なのだ。報われぬ想いの果てに、我の為に命を散らす。なのに幸せそうな彼らの顔。理解に苦しむ。一体、愛とは何ぞ? #twnovel

2017-06-03 01:57:45
リュカ @ryuka511

魔王は城門を開けるよう命じた。猛反対する臣下を斬殺し、城内の罠も解除する。対等に戦えるのは、救世の勇者と謳われる者ただ一人。戦いを前に高揚するのは久しぶりだ。こんな気分を味わえる機会はもう無いだろう。共に万全の状態で、正々堂々戦いたい。「私はここにいるぞ、勇者」 #twnovel

2017-06-04 01:32:54
リュカ @ryuka511

どれ程の間戦っているのか、もう思いだせない。それぐらい長い間戦い続けていた。倒しても倒しても、奴らは無限に湧いてくる。どんなに奴らを屠ったところで憎しみも悲しみも癒えないが、戦いを止めても得るものは無い。この身が朽ちても、私の復讐は終わらない。許さんぞ、人間共。 #twnovel

2017-06-05 00:21:43
リュカ @ryuka511

魔王に攫われた姫は、力で支配する事の愚かさを説いた。魔族も人間も他の生き物も、全ての生命は等しく尊いものだと語った。青臭い綺麗事、未成熟ゆえの理想論だと魔王は笑う。しかし、幼く眩いその青さに惚れた。「お前の寿命が尽きるまでは、お前の言葉に乗ってみるのも面白い」 #twnovel

2017-06-06 00:43:54
リュカ @ryuka511

魔族の子供は震えながら言う。「僕は人間になりたいんだ」勇者に剣を向けられたまま、大きな瞳から涙を零した。「人間になって、魔族と人間の戦いをやめさせたいんだ」その真摯な眼差しに勇者は剣を下ろし、だが大きく首を振った。「人間なんかになったって、戦いはとめられないぞ」 #twnovel

2017-06-07 01:26:31
リュカ @ryuka511

魔王は僕が倒したし、魔王軍の残党も殲滅させた。世界は少しずつ、元の姿を取り戻している。それなのに、ねぇ、どうして君は帰ってこないの? もう魔王軍に苦しめられる事はない。ねぇ、帰っておいでよ。君の為にたった一人で戦った僕を褒めてよ #twnovel 泣きながら君が眠る場所を掘り返す

2017-06-08 00:52:30
リュカ @ryuka511

「どの群れにも一頭は黒い羊がいるとはよく言ったものだ」宰相は独りごちる。騎士団で頭角を現した青年は宰相に懐疑的だった。物怖じせず発言する潔さと聡明さが王に気に入られ始めている。これ以上増長させてはならん。真っ黒な羊は決して染まらない。懐柔できないならば、消すのみ #twnovel

2017-06-09 01:39:53
リュカ @ryuka511

少年を見つけたのは雨の激しい夜だった。聞けば花吐き病という奇病にかかり親に捨てられたのだという。彼の吐く花は魂の美しさを具現化させたようだ。私と暮らさないかという提案を彼は受け入れ、今に至る。「バンパイヤって変わってるよな」軽口を叩く生力を取り戻した彼に安堵する #twnovel

2017-06-10 01:10:00
リュカ @ryuka511

ホルマリン浸けにした君を盾に奴は笑う。そんな事で優位にたったつもりか?君も死んだフリはやめて出ておいで。彼女は水槽を破壊し奴の首を絞め上げた。事切れた奴を捨て置き、研究所を後にする。「もっと早く来てくれても良かったんじゃない?」「お楽しみはとっておく主義なんだ」 #twnovel

2017-06-11 00:23:26
リュカ @ryuka511

隣国から度々送られる黄金の貢ぎ物に女王は辟易していた。困り顔の大臣に「換金して街の整備に充てよ」と命ずる。退室する大臣を見送り溜息を吐いた。姻戚関係を結びこの国を手に入れようという魂胆だ。高価な貢ぎ物で女が落とせると考える輩に、この国は渡さない。無論、私の心も。 #twnovel

2017-06-12 00:15:39
リュカ @ryuka511

黄昏時に古びた灯台へ火を灯す。年老いて海賊稼業を引退し、灯台守になった。散々海を荒らした男が、海の安全を守るなんて滑稽だろう。これは失った仲間の弔いであり、俺の贖罪でもある。無論、この程度で許されるとは思っちゃいないが。この灯火に、俺も守られてたと気付いたんだ #twnovel

2017-06-13 01:13:28
リュカ @ryuka511

「お願い、私と一緒に」悲愴な彼女の手から毒薬をそっと奪う。「君をあんな奴に嫁がせたりしない。明日の新聞を楽しみにしていて」不安気な彼女に口づけし家まで送る。 #twnovel 翌朝、富豪が麻薬密売容疑で逮捕された。リークしたのは僕だ。彼女の縁談は破談。彼女を悪人の手には渡さない

2017-06-14 00:17:19
リュカ @ryuka511

地球の人々は我らの船を未確認飛行物体と、我らとの出逢いを未知との遭遇と呼ぶ。不思議な話だ。認識しようとしなければ、目の前に常にあっても未知のものになってしまう。実に興味深い。隣人同僚、先輩後輩に同級生、明日から注意して接してみるといい。世界は未知で満ちている #twnovel

2017-06-15 01:40:10
リュカ @ryuka511

役名も台詞も無くたって構わない。一瞬でいいからスクリーンに、物語の中に存在したいんです。通行人に死体、誰でもいい役はたくさんある。それなのに、誰でもいい誰かにすらなれませんか。孵化できずに足掻く役者の卵の叫びは、溢れ返る同様の嘆きに紛れ、誰にも届かない。 #twnovel

2017-06-15 23:24:44
リュカ @ryuka511

幼い頃、君と見たあの星を今本当に目指している。青黒い宇宙空間を、宇宙船でゆっくりと進む。瞬く恒星。遠くに見える青い星、捨てなきゃいけなかった故郷。「いつかあの星に行けるかな」って君の言葉を、笑った事を後悔している。この美しい光景を、君と見られたら良かったのに。 #twnovel

2017-06-17 01:05:12
リュカ @ryuka511

北の森には悪い大きな蜘蛛がいて、危険な罠を張っているという噂でした。でも、大人は誰も蜘蛛を見た事がありません。勇敢な子供達はこっそり森へ行きました。そこで見たものは、大きな巣で静かに暮らす蜘蛛の姿でした。見た事ないから危険なものとは限らないと、子供達は知りました #twnovel

2017-06-18 01:15:50
リュカ @ryuka511

このバラは絶滅危惧種に指定されるだろう。なのに「決して滅びる事のない愛」という花言葉を持つ。絶滅が危ぶまれているのになんと気丈なのか。たとえ自身が消えても、その愛は消えないと。なぜそんなに強く在れるのか、教えてはくれないか。恋人の最期の言葉と、同じ意味を持つ花よ #twnovel

2017-06-18 23:25:10
リュカ @ryuka511

「村とは共同体ではないのか?」怯える少女に龍神はつとめて優しく問う。「親を亡くしたお前を、村の大人は養うべきであろうに、我が贄を求めると奴らは一も二もなくお前を差し出した」龍神は少女に視線を合わせた。「あんな奴らは忘れて我と暮らさぬか。大切に慈しむと約束する」 #twnovel

2017-06-20 00:41:06
リュカ @ryuka511

最初は空耳だと思った。だが、それは間違いなく僕を呼んでいた。白い肌に古風な薄衣を纏った、僕にしか見えない神秘的な美少女。紅い唇に笑みを浮かべ僕を手招く。「おいで」誘われるままにゆらりと足を進める。「もっと近う、妾はそなたが欲しいのだ」 #twnovel 「うぶな獲物ほど美味じゃ」

2017-06-21 00:03:31
リュカ @ryuka511

「世界は誰のものなのかしら。」世界を我が手に、と言った魔王を思い出し、勇者は呟く。「今の世界は魔王のものじゃない。じゃあ、誰のもの? 神? 人間?」仲間達の怪訝な顔をものともせず、勇者は自嘲した。「誰のものだろうと、悪漢や英雄にとって生きづらいのは間違いないね」 #twnovel

2017-06-22 00:51:35
リュカ @ryuka511

「こんなのはただのゲームだ」そう笑った兄が恐ろしかった。これがゲームだなんて理解できない。そんな僕を兄は甘いという。犠牲を最小限にする為に、僕は降りるべきだと思った。こんな兄に勝てる気がしない。王位継承争いを、玉座(イス)取りゲームだとはどうしても思えなかった。 #twnovel

2017-06-23 00:52:53
リュカ @ryuka511

「我が焔に焼かれ、永遠の眠りにつくがいい」魔王の放った焔が更に大きく燃え上がった。これで終わりだと笑う魔王に、応える者はない。厳かに儀式を終えると、魔王は立ち上がる。「お前を失った我に、残された道は少ない。最良と思える道を、選ぶつもりだ」 #twnovel 「許さんぞ、人間共」

2017-06-24 01:17:56
リュカ @ryuka511

薔薇園の獣は赤薔薇の精霊に恋をしていた。高貴な赤薔薇の精霊は獣には見向きもしない。だが獣は幸せだった。薔薇園を守る獣は恋しい精霊の騎士も同然だから。ある日、獣は薔薇園を襲う魔物と戦った。獣の姿が見えない事に赤薔薇の精霊が気付いたのは、それから何年も経ってからの事 #twnovel

2017-06-25 00:26:42