検察庁法改正案に関して、特に大屋雄裕氏の論を中心に 2020年5月10日~

公務員の定年、黒川弘務検事長の定年延長、検察の定年延長、役職定年、「三権分立」、安倍政権の運営の問題、など
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Takehiro OHYA @takehiroohya

だから一般公務員に関するこの点の規律は人事院規則に委任する形で、本来は立法権を独占している国会が、人事院の専門性・中立性に対して敬譲する(相手を尊重して自らの判断を差し控える)という構造になっている。それにより行政官に対する政治介入を抑制することが期待されています。

2020-05-16 17:10:29
Takehiro OHYA @takehiroohya

検察が対立し得るのは内閣の構成員だけでなく国会議員もそうなので、職務的な特性を考慮するなら法律により直接的な議会関与の下に置いていいかは迷うところではないかと。

2020-05-16 17:10:29
Takehiro OHYA @takehiroohya

準則や内閣の定めが重要というのはここで、その内容が一般公務員を対象とする人事院規則と同じかより厳しい場合には、内閣・議会双方による人事院への敬譲と捉えることができる。緩ければもちろん恣意性の高い決定が行なわれる危険が生じる。そこがポイントだと思っているわけです。

2020-05-16 17:10:30
Takehiro OHYA @takehiroohya

なお役職定年部分に関する人事院規則は、当然ながら今回の法案が可決されることにより授権されないと検討も制定もしようがありません。缶切りが缶のなかに入ってないかという指摘はあろうと思いますが、しかしどうにもならない。人事院が独立に決めるものなので法案に含めることもできませんからね。

2020-05-16 17:10:30
Kamei, Gentaro @gk1024

そう、「バランス」との関係では人事院の存在をどうするかという問題があって、歯切れが悪かったところです(そして看破されるという)。

2020-05-16 18:19:03

国家公務員法81条の3の適用否定説/肯定説

Takehiro OHYA @takehiroohya

ではこれの続き。いやこの件も取材受けててですね、そちらが出る前に勝手に他所で喋るのもと思って少し遠慮していました。 twitter.com/takehiroohya/s…

2020-05-17 23:01:57
Takehiro OHYA @takehiroohya

それ以上についてはあとで書きますが、まあご期待の結論にはならないですよ(いろいろな意味で)。

2020-05-12 10:32:43
Takehiro OHYA @takehiroohya

再確認―「確実に言えるのは、国公法81条の3(定年による退職の特例)が検察官に適用されるのであれば法的根拠はありその要件を満たしているかどうかの実質的な判断になる、適用されないのなら退官しているのが正しく不当に在籍していることになる、というところまでです。」

2020-05-17 23:01:57
Takehiro OHYA @takehiroohya

①ではまず法文の解釈から。法律家であれば誰も否定しないことから確認していくと、まず検察官は一般職国家公務員であって国家公務員法が適用される(国公2条3項反対解釈)。しかしその特別法として検察庁法があり、特別法が一般法に優先されるので、そちらに定めがあるものは検察庁法が優先される。

2020-05-17 23:01:58
Takehiro OHYA @takehiroohya

②いま、国公81条の2は一般公務員の定年を60歳と定め、その日の属する年度末で退職すると規定しているのに対し、検庁22条は一般検察官について「年齢63年に達したときに退官」と定めている。これは明らかに同一事項に関して矛盾する規定なので、後者が適用される(検庁32条の2はその確認規定)。

2020-05-17 23:01:58
Takehiro OHYA @takehiroohya

③他方、特別法に定めのないものについては一般法がそのまま適用される。たとえば国公82条以下に定める懲戒処分は検察官も対象になる。検察官法に独自の懲戒手続は規定されておらず、検庁25条は検察官が懲戒処分を受けることを予定していることからも、このことは理解できよう。

2020-05-17 23:01:58
Takehiro OHYA @takehiroohya

④ところで国公81条の3は「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」いわゆる定年延長を命じることができると規定している。これをどう解釈するかが問題とされていることになろう。

2020-05-17 23:01:58
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑤否定説は、検察官は国公81条の2ではなく検庁22条に基づいて退職するので、「前条第1項の規定により退職すべきこととなる場合」に該当しないと考える。そもそも検庁22条が(国公81条の2と異なり)「定年」という言葉を使っていないという指摘もあろう。

2020-05-17 23:01:59
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑥肯定説は、検察官も国公81条の2が「職員は(……)定年に達したときは(……)退職する」という規定に基づいて退職するのであり、検庁22条はその年齢と退職日に関する特例(「法律に別段の定めのある場合」)を置いたものにすぎないと解する。そもそも検庁22条は定年規定でしょどう見ても、と。

2020-05-17 23:01:59
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑦どちらが正しいか、の前にどうやって決めることができるか。両説は前提となる法文の有無を争っているわけではないので、これは解釈に関する対立である。それに決着を付ける最終手段は、裁判しかない。特に最高裁が一定の解釈を支持した場合、覆されるまではそれが正しいと言うことになる。

2020-05-17 23:01:59
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑧しかしこの問題に裁判で決着を付けることは、おそらくできない。被害者がいなければ損害の回復を求める争いはできないし、そのような場合に法秩序への適合性を争う裁判(客観訴訟)をするためにはそれを認める特別の法規定が必要(いわゆる定数是正訴訟はその例)。この件ではどちらも無理そう。

2020-05-17 23:02:00
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑨正確に言うと訴えるのは勝手だけど、裁判所に法的判断を下してもらう(形式的に無理という「却下」でなく実質的にダメという「棄却」まではいく)ためのスキームが、私には思い付かない。いろいろ訴えたがる弁護士さんたちもまだできてないから、やっぱり無理なんじゃないか。

2020-05-17 23:02:00
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑩というわけで争いがある、法的な決着は付かないが制度的な答え。 すっきりしないでしょ? すっきりしないんだよ。で、すっきりしない人たちに叩かれるから問題の構造がわかってる利口な人は喋らないんですよ。喋るのは、すっきりしないはずのものをすっきり見せることをご商売にしてる人たち。

2020-05-17 23:02:00
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑪ただ、それぞれの有利な点は学問的に挙げることができる。まず否定説は、国公・検庁両法の関係を単純に理解することができる。過去の内閣法制局解釈にも合致している。ただし内閣法制局はあくまで行政機関でその解釈も行政庁の標準になるにすぎない。訴訟のような解釈の確定力はない。

2020-05-17 23:02:00
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑫かなり以前にblogで書いたが、著作権の期限が切れるのはいつかという争点に関する政府解釈が裁判所に否定されたケースもある。また、権威があるとしても変更もあり得るし一般論としては新しい方が強い、のは裁判所の判例変更と同様と考えられる。

2020-05-17 23:02:01
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑬では肯定説。あたらしい内閣法制局解釈に支持されている。検庁22条はどう見ても定年規定なので、定年に関する国公法の規定が適用されても不思議でない。そもそも国公法の想定するトラブルが検察庁には起きないという想定に無理があるので、それに対処する制度は適用された方がいい。

2020-05-17 23:02:01
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑭それで私自身はどう思うか。まず特定事例を想定しない制度設計の次元で言えば、定年延長制度は万が一のトラブルに備えるものなので、あった方がいい。トラブルを想定しなければ起きないはずというダチョウ主義はいい加減にした方がいい。これは今回の改正案への評価と共通。

2020-05-17 23:02:01
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑮加えて、検察庁法の規定ぶりにあまり固有の意味を読み込まない方がいいとも思っている。同法を読むと、スタイルが古く特殊なことがわかる。まず第1条から目的や定義規定を置くのが戦後の基本的なスタイルなのに対し、いきなり組織規定が来ている。各条に見出しもついていない。

2020-05-17 23:02:01
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑯あとこれは、もちろん私も古い法令をそれほど注意して読んできたわけではないが異様だと思ったのは、附則の条文番号が本体と連続で振ってある。普通はあらたに附則1条・2条……となるのだが、本体が32条の2まで、附則が33条から制定時42条まで。他では見たことないなあという印象。

2020-05-17 23:02:02
Takehiro OHYA @takehiroohya

⑰目的・定義や見出しがないのは戦前法令では一般的なのだが、その目的は規定を簡素にして解釈の許容される範囲を大きく取るためという理解が一般的(というか林修三の3点セットあたりに書いてあった記憶)。だとすれば明示的に規定されていないことは解釈優先でいいのではないか、という話。

2020-05-17 23:02:02
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