ミラン『資本主義の起源』とアリギ『北京のアダム・スミス』(第1, 4部)の読書メモ
「アメリカの覇権」は中華朝貢圏の西洋版リメイクで、事実米国からの“回賜”で日韓台は復興したが、それは軍産複合体が衰えると文化的権威を重んずる東アジアで維持できない(p481-2)。加えてGM型垂直統合がウォルマート型下請け構造に変容すると、ますます伝統中国に似てきて…(p485)
2011-06-19 15:49:32「中国の台頭」はまさにこの好機を衝いたもので、海洋交易都市から資本を得た近世西欧資本主義を模倣して華僑から資金を調達しつつ、強力な国家が彼らの傀儡になることを拒否し、海外企業への開放部分と言語・慣習・人脈等の非関税障壁で保護される国内部分の二分野併存を戦略に(p498、495)。
2011-06-19 15:55:21ガンディーが西欧の模倣を禁じたのは、マルクス的資本主義という「少数者が富のパイプを独占して贅沢する」仕組みを、中国やインドの人口大国が真似たら世界を食い潰すから(p534)。人類の未来は中国がスミス的市場経済に則した「新しいバンドン体制」(p532)による平和共存を築けるかが鍵に
2011-06-19 16:02:00…という壮大なスケールで面白いが、著者がイタリア左派出身ゆえかやや共産中国のロマン化も目立つ気が。毛沢東主義の「農村重視」を、都市先取のマルクス・レーニン路線のスミス的修正と見たり、郷鎮企業を杉原理論を媒介に小農社会の伝統に接木したりは(p518、506)、ちょい無理があるんじゃ
2011-06-19 16:07:58ちなみにアリギが依拠する杉原薫氏の「東アジア的発展」論は、近世小農社会を東アジアの特徴(西欧は封建大地主制)とする東洋史の認識に、日本=勤勉革命説を敷衍して合わせたものだが、その妥当性には批判もあって、本野英一先生は全否定してた気が(川勝平太編『グローバル・ヒストリーに向けて』)
2011-06-19 16:17:24ミラン本における、興味深い引用、批判
ダグラス・ノース「経済史家がそう言い続けるせいで『産業革命によって持続的な経済成長が生み出された』という神話が信じつづけられているが、持続的な経済成長は、決して新規な現象などではない」(ミラン著p30)…高校世界史もいい加減にしましょう。“産業革命神話”は学問的には終わっています
2011-06-20 10:23:15A.G.フランクとB.ギルズ「紀元前3000-2000年代においてさえ、アフガニスタンにおけるラピス・ラズリ鉱山の労働者とシュメール都市の織物職人とが、単一の世界経済システムの分業のなかでみな相互に結びついていたことはまちがいない」(p36)…ただしミランはこの種の歴史像に批判的
2011-06-20 10:26:38ミランのフランク批判「悠久の昔から紀元1800年にいたるまでアジアがある種の世界=経済の中心であったという主張は…誤ったヨーロッパ中心主義を誤った中国中心主義で置き換えているだけである」(p195)…ただし中国の先進性はミランも認める史実で、西欧中世のイノベーションを強調するのみ
2011-06-20 10:31:12またミランのポスコロ批判「16世紀以前のアフリカ社会の『平等主義的性格』…を称揚し、アフリカ大陸における[非白人間の]奴隷貿易の重要性をできるかぎり小さく評価しようとするアミン…とは異なり、私はヨーロッパによる植民地化以前に『快きアフリカ』があったという神話には与しない」p205
2011-06-20 10:34:40その他、中国は12cから国庫収入が関税2割・間接税7割の商業帝国(p88、90)、「インドの停滞」も嘘で12cには強制労働が賃雇いに切り替え・1800年以前は欧州商人の交易シェアは僅か(p144、150)、むしろ中世西欧の先進性は14cからの時計利用による規律化(p46)、など。
2011-06-20 10:41:40ミランよりも伝統西欧の富裕さを強調するG.クラーク『10万年の世界経済史』も、「技術の進歩が産業革命を生んだ」史観を発明家の不遇さから嘲笑し(下巻p73)、人口要因のためにたまたま豊かになっただけとの立場ですね RT @ke_1sato 技術史方面ではまだ産業革命を中心とした史観
2011-06-20 10:47:05要するに「西洋人は知性高い→技術革新で産業革命起こし豊かに→取り入れられたのは日本人だけ」な“近代化論”や“脱亜論”の歴史認識なんて全部ウソで、「科学技術立国日本」とかいう神話も今回の原発事故で終了。「西洋中心主義」は別に道徳的に問題なんじゃなくて、単に史実じゃないってのが重要。
2011-06-20 10:52:50