「ら抜き言葉」を避けるのは逆に不自然?小説における若者の会話描写、「正しい日本語」の絶対視はやめた方がいいかもという話

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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

1967年10月21日、香川県高松市生まれ。国語辞典編纂者(出版社社員ではありません)。『三省堂国語辞典』編集委員。著書『日本語はこわくない』PHP、『日本語をもっとつかまえろ!』毎日新聞出版、『知っておくと役立つ 街の変な日本語』朝日新書、『ことばハンター』ポプラ社 他。『気持ちを表すことばの辞典』ナツメ社 も監修。

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飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

若い著者の文章で、全体としては自由なことばの使い方をしているのに、いわゆる「誤用」として有名な語句だけ、妙にマニュアルどおりに使っていることがあります。「ならば問題ないだろう」と言われそうですが、ラフなことば遣いの兄さんが、時々急に敬語になるような不思議な感じがあります。〔続く〕

2020-05-30 06:48:39
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

たとえば、若者の会話を描写した小説で、「ガチで」「くっそ○○」「○○してたっぽい」などの言い方は出てくるのに、なぜか「見れる」を「見られる」、「出れる」を「出られる」と「ら抜き」を避けていることがあります。「正しい日本語」というより、小説的に加工された会話という印象を受けます。

2020-05-30 06:48:54
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

また、「役不足」は、その人の能力が高い場合(役目が軽くて不足)に使うのが「正しい」と言われます。「役不足ですが…」と謙遜する場合は、機械的に「力不足」に修正されることが多い。でも、小説で、客が「君では力不足だ、上司を呼べ」と言う例があり、これは過剰に修正していると思いました。

2020-05-30 06:49:08
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

この場合、客は「君では私の交渉相手として地位が不足している」と言いたいのであり、相手の力量は問題にしていないから、「力不足」は状況に合わない。むしろ「君では役不足」がしっくりきます。「役不足」には「相手の役目が軽くて不足」の意味も生まれています。辞書が見落としているだけです。

2020-05-30 06:49:18
飯間浩明 @IIMA_Hiroaki

何が言いたいかと言うと、いわゆる「誤用」とされたことばのリストを参照しながら、元の文章を機械的に修正していくと、奇妙な文章になることがある、ということです。「誤用」のリストは、あくまで「ある場合には使用に注意したほうがいいことば」ぐらいに考えて、絶対視しないのがいいでしょう。

2020-05-30 06:49:30
🍀いちは🍀 @BookloverMD

これはあらゆる場面で当てはまりそうな考え方。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…

2020-05-30 07:14:36
おっちょん @SUKIMAPAN

知ってて損はない。 知らなければ得をしないだけ。 知ってれば徳になる。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…

2020-05-30 09:01:29
ブルーレット・ヨコハマ @anb10772

面白いなぁ。 軽めの文学はやはり読者層の言語空間・意味空間に寄ってないと、しっくり来ないんかな。ことばは語句それ自体より「場」が大事だしね。 もしかすると、著者自身というより校正で機械的にそうしちゃってる場合があるのかなぁとも。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…

2020-05-30 16:04:52
みも @mimosa_asomim

言葉遣いだけじゃなくて、そのキャラでその行動する??ってことよくあるよねー。 一分一秒を争うように必死で逃げるor追うシーンでシートベルトして運転、とか。学がない、荒っぽい口調で話してて急に熟語が入るとか。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…

2020-05-30 13:35:00
toyopchi @J_protoyo

@IIMA_Hiroaki そのキャラクターの環境や知識を示してくれるはずの誤用が機械的に修正されて、世界観が壊れている。それは「正しい」とは思えませんね。ドラマの犯人が逃亡するシーン、シートベルト締めたときにも思いました。作品の外からの干渉が見えて萎えますね。

2020-05-30 09:44:55
tumble-weed @hanamogera0824

@IIMA_Hiroaki ら抜き言葉、「一応」を「一様」、「延々と」を「永遠と」、「〜せざる終えない」「すべからく」、「汚名挽回」 ((+_+)) 物語の中では不勉強さの演出の為に良いと思いますが、注釈は付けても良いかなあ…

2020-05-30 13:41:54
anonymous 詠み人知らず @_lunar_eclips_

@IIMA_Hiroaki 傍目にはアンバランスでも、人それぞれの感性やこだわりがあると思います 日常では「ら抜き言葉」「…の方から」「(ご注文は)…でよろしかったでしょうか?」等の言い回しに対する反応の違いは顕著ですね 他がラフでアバウトな自分でも「ら抜き言葉」と「全然+肯定」は生理的に不快で許せません

2020-05-30 08:14:46
加藤雅利 @kato_gali

@IIMA_Hiroaki 単に校正に引っかかって、無理して戦わずに直しているだけなのかもしれませんね……

2020-05-30 20:38:07
VMX @v_mx

@IIMA_Hiroaki 頑なに台詞に句読点を付ける小学館の漫画を思い出しました backnumber.dailyportalz.jp/2010/04/28/d/ 「読みやすさのため」「学習誌を出している会社なので正しい日本語を」など不可解な理由で、作家さんが削ってくれと要望しても頑として認められないそうです…。表現がマニュアルのせいで窮屈になっている一例かと

2020-05-30 09:15:40
井口耕二 a.k.a. Buckeye @BuckeyeTechDoc

わざと崩しているのに、「書籍の表現としてふさわしくない」とかいって編集さんが勝手に手を入れることも。そういう編集さんとの仕事は、基本、それかぎりで終わりにしますけど。 twitter.com/IIMA_Hiroaki/s…

2020-05-30 14:29:41