PCR検査に関するよくある誤解(ウイルスの死骸で偽陽性?全員検査で感染拡大?CT検査で効率よく検出?スクリーニングに使えない?)について(2020.6.3作成)

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suna @sunasaji

PCR検査に関するよくある誤解についての解説は、こちらに続きます。 ・死んだウイルスで偽陽性? ・全員検査で感染拡大? ・日本にはCTがあるから効率良く陽性者が見つかっている? ・スクリーニングにPCRは使えない? twitter.com/sunasaji/statu…

2020-06-03 20:03:50
suna @sunasaji

さて、これまでのスレッドで、PCR検査の感度特異度は十分高く、理論的にも実績上も有用であり、精度を口実にPCR検査抑制を主張するのは妥当ではないことを説明しました。 引き続き、PCRに関するよくある誤解について解説していきます。 twitter.com/sunasaji/statu…

2020-06-03 19:14:20

これまでのまとめの続き

suna @sunasaji

さて、これまでのスレッドで、PCR検査の感度特異度は十分高く、理論的にも実績上も有用であり、精度を口実にPCR検査抑制を主張するのは妥当ではないことを説明しました。 引き続き、PCRに関するよくある誤解について解説していきます。 twitter.com/sunasaji/statu…

2020-06-03 19:14:20
suna @sunasaji

日本では、PCR検査は精度が低く、高確率で偽陽性偽陰性が発生する、と盛んに喧伝されています。 しかし実際は、PCR検査は特異度が非常に高く、感度も高い検査です。 それはなぜか、原理から説明してみることにします。

2020-06-02 09:38:01
suna @sunasaji

死んだウイルスのRNA断片がたまたま鼻腔や喉についていて、それが検出されただけである可能性もあるからやはり偽陽性はあり得るという人もいます。その可能性はゼロではないですが、そのタイプの偽陽性が、検査で判明する真陽性と比べても、多量に居るかどうかが問題です。

2020-06-03 19:15:32
suna @sunasaji

RT-PCR検査では、ただでさえ壊れやすいRNAを抽出してDNAに逆転写して更に増幅できた人が陽性となるわけです。だから、そういうウイルスの死骸みたいなものを検査時点でたまたま鼻の中に複数保持している人が偽陽性になることよりも、実際にウイルスを持っていた可能性の方を先に心配した方が良いです。

2020-06-03 19:16:50
suna @sunasaji

全員検査や大量検査すると検査で感染拡大するため検査するべきでないという説も根強いです。 しかし検査が感染拡大の主因だとする信頼できる論文は見当たりません。 仮に検査場での感染があるとしても検査しなければ感染拡大しないとは言えません。 検査場外で市中感染が広がる可能性があるためです。

2020-06-03 19:19:06
suna @sunasaji

そもそも検査で感染拡大するのであれば、検査方法を改善するのが筋です。 あえて検査をしない策を取りたいならば、感染防止しつつ検査と隔離をやることよりも、市中や家庭内感染を放置しつつ検査しないことの方が、拡散の速い感染症の拡大を抑止できることを示してからにするべきです。

2020-06-03 19:20:41
suna @sunasaji

また、全員検査を藁人形にして叩く論調がありますが、そもそも現状では有症者の検査すら満足にできていないことが問題となっているのです。電話相談窓口にすら繋がらない状況が数カ月は継続しています。全員検査の是非を語るのは有症者の検査がスムーズにできるようになった後にやればよいと思います。

2020-06-03 19:21:44
suna @sunasaji

ちなみに私は現時点で全員検査はするべきでないという立場です。なぜなら有症者や医療関係者の検査も十分にできていないように見受けられるので、そちらを優先するべきであると思うためです。

2020-06-03 19:22:36
suna @sunasaji

ちなみにLineの全国調査では発熱者は0.11%,0.13%,0.15%,0.13%と推移していたので、有症者を全検査するのは不可能な話ではありません。たとえば東京都1400万人の0.15%は21,000人です。全員が同時に発症するわけではないので、1日あたりの検査数はより少なくて済むと思われます。mhlw.go.jp/stf/newpage_11…

2020-06-03 19:23:57
suna @sunasaji

日本では、CTがあるから感度良くまたは効率良く陽性者を見つけられている、という言説も見かけます。

2020-06-03 19:24:51
suna @sunasaji

確かに初期にはPCRが陽性にならずCTで所見が見られる場合がある以上、CTが有効に活用できるケースはあるでしょう。しかしそれは、検査の感度を上げて陽性者の見逃しを減らすために使えた場合の話です。たとえばPCR陰性だけれどもCTで異常を認め、再度PCRを実施して陽性を発見できた場合などです。

2020-06-03 19:26:46
suna @sunasaji

しかし日本では、帰国者接触者や発熱4日やCTで重症肺炎が見られた患者に限るなどの、検査を抑制する口実としての運用が各地でなされ、結果としてPCR検査数はなかなか伸びません。それだけではなく、電話相談窓口にもつながらない状態が数カ月続いているので、それも含めれば見逃しは更に多くなります。

2020-06-03 19:27:43
suna @sunasaji

たとえばPCRだけの感度が70%だったとすると、真陽性者の7割が陽性となります。一方で電話で検査をたとえば半分に絞り、重症者に限ることで20%に絞り、更にCTの感度で98%に絞り、更にPCRに掛けたら、感度はたった6%にまで下がります。 検査抑制すれば見逃しが増えるため実質的な感度は低下するのです。

2020-06-03 19:30:55
suna @sunasaji

一方で、PCRの特異度はもともときわめて高いので、多少事前確率を上げたところで、ほとんど向上しません。向上したとしても、たとえば0.05%以下となるでしょう。それよりは、検査を絞ることにより真陽性者が見逃されて野放しになることで、感染が拡大してしまうことの方を心配するべきです。

2020-06-03 19:33:20
suna @sunasaji

つまり、たとえCTが豊富にあったとしても、検査を抑制すれば感度はむしろ下がります。そのうえ、特異度が向上する効果はごくわずかであると言えます。それでも検査を絞るならば、検査から漏れた人から感染拡大することで、結果的にかえって医療の負荷が増える可能性を排除してからにするべきです。

2020-06-03 19:34:40
suna @sunasaji

ちなみに、日本ではPCRの前にCTを取って肺炎者を選別する運用が見られますが、このように共通検査によって対象者を選別することをスクリーニングといいます。 そしてCTは、COVID-19のスクリーニングに向いているとは言いづらいのが実情です。

2020-06-03 19:35:36
suna @sunasaji

日本環境感染学会はスクリーニングとしてのCT検査は推奨していません。 PCR陽性でもCT陰性となる場合があり、偽陽性例の影響が高く、検査対象が膨大となると対応が難しく、CT室の清潔整備も必要で、X線被曝もあるためです。 kankyokansen.org/uploads/upload… pic.twitter.com/WrIOiqVgde

2020-06-03 19:37:23
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suna @sunasaji

スクリーニングは本来ならば多数の人を対象に実施するものなので、特異度が高く偽陽性の少ない検査が適します。また、感度が高いほど見逃しも少なくなります。さらに、侵襲性が低く、スループットが高く、結果が明瞭で、コストパフォーマンスが良いものが適します。

2020-06-03 19:38:24
suna @sunasaji

全国医学部長病院長会議は「COVID-19には科学的に対応することが必要。入院患者の中には無症状のCOVID-19の患者もおり、スクリーニング的にPCR検査をしなければ院内感染の危険が高まる。COVID-19による医療崩壊を防ぐためには、院内感染を防ぐことが重要課題だ」としています。m3.com/open/iryoIshin…

2020-06-03 19:39:27
suna @sunasaji

さて、日本では効率良く陽性者を見つけられているという点についてはどうでしょうか。 効率の定義を、PCR検査の陽性率の高さだとするなら、肺炎者に限れば高くなるのはそうでしょう。 しかし、そもそも陽性率が高い方が良いという捉え方に問題があります。

2020-06-03 19:40:14
suna @sunasaji

一般に、陽性率が高いことは、疫病の蔓延または検査数の不足を意味するので、そもそも陽性率が高いことを目指すのは、方向性が誤っています。むしろ、陽性率は低ければ低いほど良いのです。なぜならば、陽性率が低いほど陽性者が少なく、疫病の蔓延が抑制できていることになるためです。

2020-06-03 19:41:35
suna @sunasaji

検査のし過ぎは問題ではないかという見方もあると思います。しかし、感染拡大の速い感染症では、検査にかかるコストよりも感染が広がることの方が社会的なコストが高くなる場合があります。 COVID-19は、拡大が広がると経済影響の大きい自粛やロックダウンが必要となるため、それに該当します。

2020-06-03 19:42:38