銀行は預金の元手なく貸出できる?について

先日、銀行は貸出を実行する際、預金によって資金調達する必要があるか否かについての自分の考えを連続ツイートしたところ、ツリーになっていなくて読みづらいのでまとめてほしいという要望がありましたので、こちらでまとめておきます。
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Masataka Eguchi @maseguchi

銀行は預金の元手なしで貸出できるという説について、自分的に工夫がつきましてござるので、まとめてみます。この話の謎は、銀行は預金者に預金証書という間接証券を発行して資金調達し、貸出債権で運用しているはずなのに、貸出する時点では新たな資金調達をしなくても貸出できてしまう点でした。1/n

2020-06-22 20:50:42
Masataka Eguchi @maseguchi

実はこの謎を解くのは簡単な話で、銀行は資金調達してから貸出を行うのではなく、貸出を行ってから資金調達しているだけということです。これは、サブプライムローン問題の主役となったモーゲージ担保証券の仕組みと照らし合わせて考えれば分かりやすいと思います。2/n

2020-06-22 20:51:17
Masataka Eguchi @maseguchi

モーゲージ担保証券の仕組みは、以下の図に示されています(金融クラスタのツッコミが怖いですが)。モーゲージバンクは、先に住宅ローンの貸出を行った上で、貸出債権を証券化し、投資家に売却して資金調達します。モーゲージ担保証券でも、貸出が先に行われてから資金調達がなされます。3/n pic.twitter.com/Mp5Gm9qY0x

2020-06-22 20:52:24
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Masataka Eguchi @maseguchi

1980年代以降は、銀行が一括して担っていた機能が分割され、モーゲージ担保証券のように専門家された金融サービス企業が分業体制をとるという金融革新が生じました。いわゆるシャドーバンキングとは、こうした元々銀行が一括して行っていた業務を様々な組織が分担するようになったものです。4/n

2020-06-22 20:52:49
Masataka Eguchi @maseguchi

逆に、1980年代以前は、こうした様々なサービスを全て銀行が一括して行っていたため、それぞれの機能を要因分解することが難しく、一体銀行は本質的に何をしているのかが分かりにくかったのだと思います。それが1980年代以降は実際に機能ごとに分解されたので、見通しがつきやすくなりました。5/n

2020-06-22 20:53:11
Masataka Eguchi @maseguchi

こうした視点で見ると、銀行は証券を発行して資金調達をし、それを貸出などで運用しているファンドの一種に過ぎません。では何が普通のファンドと違うかと言うと、その発行する証券(預金証書)がいつでも現金化できる高い流動性をもち、かつその交換レートがあらかじめ決められていることです。6/n

2020-06-22 20:53:32
Masataka Eguchi @maseguchi

このため、預金証書は急に支出の必要が生じるかもしれない投資家から好まれる性質を持っているわけですが、急な支出というのは確率的に生じるため、銀行はある程度の分だけ払い戻しに備えて(準備金)、残りは非流動的な資産運用におけば良いことになります。7/n

2020-06-22 20:53:47
Masataka Eguchi @maseguchi

また、預金証書は流動性も高く元本保証もついている金融商品なので、需要が高く、買い手がつかないことはあまり想像できません。そのため、証券発行すれば勝手に買い手がついてくるので、証券発行をして資金調達をしているという意識が薄くなってしまったのではないでしょうか。8/n

2020-06-22 20:57:43
Masataka Eguchi @maseguchi

まとめると、銀行は、いつでも現金化できる高い流動性をもち、かつその交換レートがあらかじめ決められている預金証書という証券によって資金調達をしているファンドであり、資金調達をしてから貸出を行うのではなく、貸出をしてから預金を集めて資金調達していると考えればスッキリ繋がります。9/9

2020-06-22 20:58:21
Masataka Eguchi @maseguchi

もっと詳しく知りたい方は、池尾先生の本の2章と6章を読んで下さい。また、僕はこうした高度な金融取引の現場の話は知らないので、間違いなどあれば教えて下さい。

2020-06-22 20:59:59