床屋へ行ったら謎の出会い厨おじさんに絡まれた中学生の話

うめ@otintinbiro-n @ID_blueume

ワイは床屋に行って、待ち時間にりゅうおうのおしごとを読んでた。 その時、他にも空いている席が多いのにも関わらず、汚いジャケットを羽織った爺さんがワイの隣、それもかなり距離を詰めたところに座ってきた。 でもまあいいか。もうすぐワイの番だしな。 なんて思いつつ読み進めていた つづく twitter.com/rk_Free_KR/sta…

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しばらく隣の爺さんはソワソワとした様子だった。それに違和感を覚えてはいたが、特にワイがすべきことは無い。すると、 「×××××？」 爺さんは急にボソボソとした声で言った。こっちを向きながらだったのでおそらくワイに話しかけているのだろう。 「どうしましたか？」 ワイは聞いた。 つづく

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すると爺さんは、 「何読んでるの？」 ワイは、(りゅうおしって言ってもわからんやろなぁ)と思い、 「将棋を題材にした小説です」 と答えた。 すると爺さんは驚いたことに、 「ああ、りゅうおうのおしごとってやつ？最近話題だよね」 そこでワイは、勘づいた。 つづく

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遠回しに聞いてきてはいるが、こいつは知った上でワイに話しかけた。つまりこいつには狙いがある…… そしてこいつは……話し方、見た目からして……やばい。

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ワイは店長にアイコンタクトで助けを求めた。 ここはよく来る店で、店長とは仲がいい。 (助けて店長！) すると、店長はこちらを向いてくれた！ (え？やばくない？そいつ) (そうなんだよ！早くワイの番にして！) (がんばるわ) という会話をアイコンタクトでしたつもりだった。 つづく

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実際、店長のカットのスピードはだいぶ上がった。 (ありがとう店長……) ワイは店長に感謝した。が、目の前(というか横)に居るラスボスが片付いた訳では無い。 とりあえず 「あ、そうです。知ってたんですか。」 そう言ったら、何故か爺さんはもう話しかけてこない。 何だこの間は！ つづく

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しかしその間も1分、2分と伸びていくにつれ、ワイの心境は(ワイの番まで続け！この間！)というものに変わりつつあった。 そして間が3分まで伸びたくらいのことであった 「好きな戦法とか、ある？」 攻撃が、始まった。 ワイはこいつに有効な策はない。耐久だ。折れたらお終いだ。 避けろ。 つづく

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「そうですねー、僕はそこまで上手じゃないのでアレですけど……強いて言うなら、よく振り飛車で指しますかね」 引き延ばせ！ 「ああ、なるほどね。じゃあ、中飛車とか？」 「そうですね、中飛車……いいですよね」 三点リーダーを使え！ つづく

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「中飛車ねぇ……じゃあゴキゲン中飛車とか好きじゃない？」 「ゴキゲン中飛車はかなり好きですねー。あの攻撃的な感じがいいですよね！」 そうだ。俺は、オタクだ。 オタクにはジョブスキルがある。 それは、[オタク特有の早口]……！！ そしてワイは、もう1つスキルを持っている…… つづく

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そう、ワイは昔、話し方を変えようとパッシブスキル[遅めに話せるオタク]を体得している！ ワイはこれらのスキルを最大限使い、限界までゴキ中の良さを語った。正直ワイでもなんと言っていたかは覚えていない…… ワイはかなりの時間を稼いだ。分単位をだ。 しかし女神は、微笑まなかった。 つづく

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ワイは忘れていた。 ラスボスは追い詰められた時に、特殊行動を取るのだ。 スキルを使い終えたワイに爺さんは言う 「へぇ、将棋、好きなんだね」 「まあ、それなりに好きですね」 「僕も好きなんだよね、将棋。 今度一緒にやらない？ 電 話 番 号 、 教 え て よ 。」 つづく

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本能がワイ訴えかけてくる (ここで渡したら終わる……) ワイは……ワイは……終わったのか？ いや、まだだ。 やるしかない、打つしかない。 一世一代の、大ブラフッ……！！ 「ああ、携帯…家に置いてきちゃって……」 つづく

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もし爺さんに嘘だとバレたら、どうなるのか…… だが、やるしかない。まだ、引き伸ばせる。 「ああ、そうなの……番号覚えてないの？」 「覚えてません(ｷﾘｯ」 「ああ、そうか。じゃあ 「24番札の方ー」 来た！わいの番号！ ワイは勝った！ 「ああ、ごめんなさい。切り終わった後で……」 つづく

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そのあとは普通に髪を切ってもらった。いつも通り。 いつもと違った点としては、この店ではカットが終わったあとに、「ありがとうございましたー」と店員さん達が大声で言う文化があるのだが、それが無かった。 カットが終わって帰る時には、爺さんはカット中だった。 つづく

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帰り際、カットしてくれた店員さんが「気をつけて帰ってね」と小声で言ってくれたので、恐らく店長が伝えてくれていたのだろう。 ありがとう、店長。ありがとう、ちょっとチャラめの店員さん。 引っ越さない限りワイはここに来るよ……。 ボスを倒し、店の前で見た空は、青かった。 END