霞の構え。映画やイラストでよく見る、日本刀の刃を上に向けて手を上げたこの構えは、実際の日本の剣術でどのように使用されてるか?

見栄えがするので日本刀を使った映画やイラスト、ゲームでよく見る「霞の構え」、実際はどうやって使っているのか、江戸時代から伝わっている剣術流派での使用例を見てみました。
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影月 @kagetsuki1988

アメリカ人が日本刀構えるときに高確率でやる構え。 #キングコング #髑髏島の巨神 pic.twitter.com/WNoesOKK81

2020-06-27 22:33:16
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みんみんぜみ @inuchochin

コメント付きリツイートが70以上あった。みんな好きですね、霞の構え。 「この構えからどうやって攻撃するの」「目をつく受けの構え」「真剣じゃないと有用ではない」「ありえない構え」という意見があって、これも創作や剣道から広まった何やらぼんやりしたイメージがありそう。 twitter.com/kagetsuki1988/…

2020-06-29 12:05:18
みんみんぜみ @inuchochin

霞構えは江戸時代から伝わる流派でどう使われているか見てみると肥後の新陰流の三学で出てくるものはこのような感じ。 「間に進み剣を高く左(右)に構え、頭を覆う。(敵は)進んで左手拳を切る。(我は)これを避け剣をおろし(敵)左(右)手を抑え(以下略)」 twitter.com/zefu_kai/statu…

2020-06-29 12:13:12
古流剣術・兵法・刀禅 是風会 @zefu_kai

今日は武士コンでしたが、午前中は通常稽古でした。 稽古場の神社境内は日差しがとても綺麗でしたので、少し形をうって撮影させていただきました。 形は新陰流疋田派の三学より覧行・松風・花車。仕太刀は未経験から半年間稽古した会員さんです。 pic.twitter.com/eWuJrJ4TVm

2017-11-11 22:50:10
みんみんぜみ @inuchochin

ちなみに、流派によって太刀の高さ、向きなど構え方も様々、呼び名も霞以外に翳し、円快、天横一文字など流派によって様々です。 柳生家の新陰流でも、左太刀でこの種の構えを使っているものがあります(柳生新陰流を学ぶ,スキージャーナル,2008より) pic.twitter.com/3D0W1MK6uD

2020-06-29 12:19:58
みんみんぜみ @inuchochin

同じく、新陰流の燕飛にもいわゆる霞の構えが使われています。柳生の新陰流の燕飛では、山陰の技に低い霞構えのような構えが出てきます。 youtu.be/wUg81yAkkbU pic.twitter.com/NoDt4H1Gmb

2020-06-29 12:24:31
みんみんぜみ @inuchochin

示現流の燕飛の、同様の部分にも霞の構えの類が登場します(示現流では払い打というとか) 示現流では頭上高く構えています。 youtu.be/2ht2chIJGBM pic.twitter.com/XvLK2WXrKd

2020-06-29 12:26:52
みんみんぜみ @inuchochin

柳生の新陰流とタイ捨流系統の示現流にあるので、当然疋田豊五郎系統の新陰流にも同じ部分で霞の構えに似た構えが登場します。 柳生と同じく低く手を交差して敵に接近します。(なお形のはじめは高い霞の類で構えます) pic.twitter.com/GtmYegJPdL

2020-06-29 12:30:11
みんみんぜみ @inuchochin

新陰流系統ばかりになりましたが、一刀流系統の甲源一刀流、霞隠では霞のような構えで攻め込んで(下から切り上げ付け込む?)いるように見えます。 youtu.be/bhL6bPti9fE pic.twitter.com/KHEX5rQ62n

2020-06-29 12:34:30
みんみんぜみ @inuchochin

あと現存流派で言えば、一刀流系統で言えば小野派一刀流(北辰一刀流、中西も)、新陰流系統で言えば直心影流、寺見流、神道無念流、タイ捨流、あと当田流、井蛙流や鹿島香取のシントウ流に霞の構え的な構えが出てきますね(つまりほとんどの流派にある) そのあたりはあとでまた紹介します。

2020-06-29 12:51:27
みんみんぜみ @inuchochin

中西道場関係の一刀流(小野派一刀流、一刀流中西派、北辰一刀流)は、だいたい形が似通ってるので代表的な例として北辰一刀流の「高霞」の動画 小野家系の一刀流は、基本的に霞を使わないらしく、霞の構えは他流の構えとして打太刀(敵側)が使うことになっているようです。 youtu.be/9wAJcekP9Bc pic.twitter.com/Qz9XjtLJHB

2020-06-29 18:51:44
みんみんぜみ @inuchochin

次は、伊藤一刀斎の師匠、鐘巻自斎が学んだと言われる冨田流(中条流)の末裔、弘前藩の當田(トウダ)流です。 動画は基本の中太刀の技ですが、打太刀(敵)が大太刀で霞のような構え方、自分は中太刀で右前の霞のような構え方をしています(残念ながら構えの名称は存じてません) pic.twitter.com/hQz2F13fss

2020-06-29 19:02:44
みんみんぜみ @inuchochin

次は、直心影流の小太刀です。 小太刀を両手で円快に構え、敵の打ち込みを受け流して切りつけています。(直心影流では、小太刀のこの構えを円快、伝書によっては燕快、と呼ぶそうです) pic.twitter.com/8xSEzpPgFy

2020-06-29 19:14:35
みんみんぜみ @inuchochin

当田流の動画と直心影流の動画はこちらから 當田流 youtu.be/tF7vdhYs2ug 直心影流小太刀 youtu.be/Xu4IvrF5sNI

2020-06-29 19:16:57
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みんみんぜみ @inuchochin

次は、中条流と同じく念阿弥慈恩を祖とする馬庭念流に出てくる構えです。 念流では構えは上中下段と無構えで分類されるそうなので(実際は上段がさらに上中下に別れるとか)、動画の仕太刀(右側)の右前の霞のような構えは上段の構えでしょうか。 youtu.be/JvRPj2Lf-Rk pic.twitter.com/tsldv2sSyH

2020-06-29 19:48:22
みんみんぜみ @inuchochin

念阿弥慈恩の流派や新陰流などと関係ある、丹石流を元に、新陰流や柳生流、新當流など諸流の技から工夫したと思われる雖井蛙流(せいあ流)の霞の構え。 攻防の中で互いに霞の構えになっているようです。 youtu.be/gYQcUO0Ssus pic.twitter.com/GnBYBQMiIf

2020-06-30 06:17:31
みんみんぜみ @inuchochin

雖井蛙流は江戸時代初期(17世紀中頃)成立の流派で、比較的古い流派ですが、明治以降まで鳥取における主流剣術流派でした。 鳥取ローカル流派ですが、歴史や記録を見ても流派名のごとく、新陰流や一刀流、直心影流など中央の流派に劣らない流派じゃないかと思います。ja.wikipedia.org/wiki/%E9%9B%96…

2020-06-30 07:54:27
みんみんぜみ @inuchochin

一刀流や冨田流、念流関係はこれくらいにして、次は新陰流関係で言及していない流派で使われている、霞の構え風の動作についての続きです。 タイ捨流の大太刀一本目、表の技が、敵が右足前の霞のように構え、こちらはそれに対して霞のように構えるところから始まります。 youtu.be/P5T8e2lHVqA pic.twitter.com/T0BbchnDqN

2020-06-30 12:24:33
みんみんぜみ @inuchochin

肥後熊本藩に伝わった寺見流(ジゲン流)。肥後藩校で教えられた流派の一つです。こちらの流派では霞の構えを多用しています。(寺見流でなんと呼ぶのか不明ですが) ジゲン流という名前のとおり、薩摩の示現流と関係があるようですが、熊本でしか活動されておらず、知られざる名流だと思います pic.twitter.com/tdiI33B529

2020-06-30 12:38:23
みんみんぜみ @inuchochin

直心影流の法定(最初の技で、重要な形だそうです)のニ、三本目に霞の構えが出てきます。 動画はニ本目一刀両断ですが、敵を精眼で追い込んだ後、八相に構えた敵に対して拳が低く、切先高い霞の構えを取ります これは現代剣道の霞の構えと同じような使い方なのかもしれません youtu.be/jkuCZyubqEw pic.twitter.com/ap5aXJDcUO

2020-06-30 12:49:50
みんみんぜみ @inuchochin

江戸時代から現存する流派での、霞の構えの実例。シントウ流編です。 学研「日本の剣術DVDセレクション」から香取神道流の七津の太刀の解説部分です。 霞の構えが、攻防の中でどういう意味で用いられているか、なんとなくわかります。 pic.twitter.com/M4zba3MPAA

2020-07-01 12:32:17
みんみんぜみ @inuchochin

鹿島新當流の面太刀より、ニの太刀と三の太刀。 ニの太刀は相手の打ち込みを上霞(うわがすみ)にかぶってかわし、三の太刀は打太刀(右側)が仕太刀の鍔攻(体当たり?)を上霞で防御しているそうです。 pic.twitter.com/4ZF05g3NKA

2020-07-01 12:35:58
みんみんぜみ @inuchochin

神道夢想流杖術の併伝剣術(神道流) 鹿島新當流の三の太刀のように霞になってかわしています。 このかわし方はシントウ流以外で疋田豊五郎の新陰流や神道無念流でも使われていて、結構一般的だったようです。 pic.twitter.com/HVxzrSOplW

2020-07-01 12:40:09
みんみんぜみ @inuchochin

鹿島新當流は合気ニュース「合気道スーパー友好演武大会ダイジェスト」、神道夢想流の演武はこちらです。 youtu.be/a6WSzWXrkv4

2020-07-01 12:45:39
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みんみんぜみ @inuchochin

これで江戸時代から存在している流派における、いわゆる「霞の構え」的な構えの使用例の引用を終わります。ざっと見た範囲では、 1、下からの切り上げもしくは切先での攻め 2、防御や回避を兼ねた振りかぶり として使われてる例が比較的多いのではないでしょうか。 pic.twitter.com/Z2YXeI9fJg

2020-07-01 18:52:02
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みんみんぜみ @inuchochin

(高い霞の構えの話になりますが)1と2の要素、どちらも剣道式の大上段への振りかぶりには少ない(弱い)要素だと感じます。 (剣道だと振りかぶりを小さくしたり、スリ揚げたりと同様の要素を持たせている気もしますけども) 切り上げや攻めが無ければ、霞の構え的な姿勢になる事も少なそうです pic.twitter.com/1lUWtT9isE

2020-07-01 19:16:15
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