オーバーロード・オーバーライト #6

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劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2020-07-04 21:01:01
劉度 @arther456

高校生活初めての日、始業式はあっという間に終わった。地区ごとに分けられた小学校、中学校とは全然違う人のグループ。今までとは比べ物にならない、たくさんの分厚い教材。どこか『大人』な印象を持ってる建物。どれもこれも初めてづくしで、あれこれ驚いている間に一日が終わってしまった。1

2020-07-04 21:03:00
劉度 @arther456

これから高校生活が始まる。嬉しさよりも、不安よりも、とにかく驚きでいっぱいだ。何も知らない。何もかもが今までと違う。部活も本格的に始まるし、学校に見つからなければバイトもできる。自分の力でお金を稼いで、欲しい物を買う。それは今までとは違って、凄く、自立している感じがする。2

2020-07-04 21:06:02
劉度 @arther456

「ゆーづきっ」不意に声をかけられ、優月は我に返った。違うことばかりだけど、今までと変わらないものもある。「何だ、ゴトか」パリッとしたセーラー服を着た、青い髪の少女。幼馴染のゴトランドだ。「何だって何よ。せっかく同じ高校になったのよ?もっと喜んでくれたっていいじゃない」3

2020-07-04 21:09:00
劉度 @arther456

頬をつついてくるゴトランドは不機嫌そうだ。「喜んで、って言われても……」ゴトランドは同じ小学校、中学校に通った、スウェーデン人の幼馴染だ。今は高校生活の新しさに驚いているのだから、変わらないものを喜べと言われても無理がある。4

2020-07-04 21:12:01
劉度 @arther456

「何、ゴトに飽きちゃった?」ゴトランドが詰め寄ってくる。いつもの事だけど、距離が近い。「飽きるも何もないでしょ。長い付き合いなんだから」「ん、そーう?」何故かゴトランドは嬉しそうだ。「ただほら、明日から色々あるからさ、これからどうなるんだろうなー、って考えてて」5

2020-07-04 21:15:01
劉度 @arther456

「なるほどー。高校生活が楽しみな訳ね。前向きで偉い!」ゴトランドが優月の頭を撫でる。背伸びをして優月の頭を撫でるので、必然、顔が近くなる。「ちょ、ちょっと」優月はゴトランドから離れた。「何?」「やめてよ、子どもじゃないんだから」6

2020-07-04 21:18:01
劉度 @arther456

「何言ってるの?まだ15歳じゃない、子どもでしょ?」「もう高校生だよ……」子どもだけど、大人が近付いてる。未来を考えるようになる時期だ。部活も、大学も、就職も、かあさまじゃなくて自分で決めないといけない。7

2020-07-04 21:21:00
劉度 @arther456

「……あれ?」意識にヒビが入る。空間が色を失う。違う。こんな光景はありえない。学校なんて士官学校しか知らない。高校とか、中学校とか、小学校とか、聞いたことはあっても行ったことがない。灰色の光景の中で、青い髪の少女は平然と目の前に立っている。8

2020-07-04 21:24:01
劉度 @arther456

「でも憧れてたんでしょう? そういう、普通の生活。それとも、ゴトと一緒じゃ不満?」憧れていたし、不満でもない。「でも、駄目なんだよ、それは」「どうして?優月を酷い目に遭わせた人たちはいなくなるし、この先辛い思いもしなくて済むし、最後は必ずハッピーエンドにしてあげるのに」9

2020-07-04 21:27:00
劉度 @arther456

「そうしたら、今まで関わってきた人たちを皆、置いていくことになるから」今、この瞬間は、過去の積み重ねだ。生きていて、死んでいった人。今あって、かつてあったモノ。過去を変えてしまったら、そうしたつながりを全部見捨ててしまう。そんなのは無責任だ。できない。10

2020-07-04 21:30:01
劉度 @arther456

ゴトランドはキョトンとした顔で優月を見つめていたが、やがてにんまりと表情を歪めると、優月の目の前まで近寄ってきた。「な、何……?」鼻と鼻がぶつかりそうな距離。視界がゴトランドで一杯になる。「真面目なキャラなんだね、優月は」ゴトランドは指の先で、優月の胸元を軽く押した。11

2020-07-04 21:33:01
劉度 @arther456

ほんの少し触れただけなのに、優月は背中から床に倒れた。衝撃に顔をしかめる。「……え?」目を開けると、景色が一変していた。夕日が差し込む教室ではない。鉄と油の匂いが充満した倉庫の中だ。ゴトランドは床に倒れた優月を見下ろして、その上に乗った。12

2020-07-04 21:36:01
劉度 @arther456

「本当に真面目。立派。偉い。理想的な主人公だよ」ゴトランドが優月の胸に指を這わせる。「ぐっ――ッ!?」焼けた刃で切り裂かれたかのような痛みを感じる。いや、斬り裂かれている。ゴトランドが触った場所に、次々と傷がつく。「やだなあ、傷つけてるんじゃないよ。戻してるだけ」13

2020-07-04 21:39:00
劉度 @arther456

胸。肩。腕。手首は念入りに。「あ、ぐっ……」腹。臍。太腿。膝。足首。「い゛っ!?」全身、余す所無く傷を戻される。引き換えに、学校の記憶が薄れていく。「嫌だと思ったから別の展開にしてたんだけど、優月がそれだけ責任感のある子だったらしょうがないよね。偉い偉い」14

2020-07-04 21:42:01
劉度 @arther456

青い髪の少女に頭を撫でられる。その時、今までに無い痛みが全身に奔った。体の内側からヤスリがけされたかのような激痛。「がっ、あああああっ!?」体が、心が引き千切られて、作り変えられる。くちからもれることばのいみも、ばらばらになる。つなぎとまるごな。15

2020-07-04 21:45:01
劉度 @arther456

「かるめ、はめろんが、おろんべね!」てぐ、のさか、さあごえとふむ。「えるじょはむぶな。ほお、ねえぐる」「……あ?」「てるごはなるしつめる?ほのかはあれんぐいげる。なほう?」くいんげる、くいんげる、こ、はるんぽせいん。「ゆむ、れふれんこうおんが」つぁ、ねげろんが、さた。16

2020-07-04 21:46:01
劉度 @arther456

「けるんどくさめた、ほら、もどった?」ばらばらになったわたしが、撚り合わされる。「なん、で……?」「あなたの理解しようとする力が、ほぐれた物語から意味を見出したの。物語から物語を紡ぐなんて初めてだったけど、あなたが読もうとしてくれたお陰で上手くいったみたい。ありがと」17

2020-07-04 21:47:00
劉度 @arther456

「ゴト、誰と……」「あ、ごめん。今はあなたよりも優月よね」ゴトランドが優月の頬をそっと撫でる。「大丈夫よ。優月がどれだけ壊れても、醜くても、汚されても、ゴトは変わらず貴方を愛してあげる」その指は優月の体を這い、傷痕をなぞる。襟元に指が引っかかり、動きが止まる。18

2020-07-04 21:48:00
劉度 @arther456

「……ところで、どうして和服を着ているの?」「え?」言われてみれば、服が違う。さっきまでは高校の制服を着ていたのに、今着ているのは紅白の弓道着だ。この服は確か。提督は記憶を辿る。「えっ?」しかし、思い出す前にゴトランドが横から顔面に蹴りを入れられて吹き飛んだ。19

2020-07-04 21:54:00
劉度 @arther456

【グッドオーメン・フライングクルーン 中編】

2020-07-04 21:56:00
劉度 @arther456

「ぐっ!?」鈍い音の後に、ゴトランドは床を転がる。提督の傍らに誰かが立っている。船首を模した鋼鉄のブーツ。赤い袴。腰まで届く銀髪。そして。「ひっ」顔を見た提督は思わず悲鳴を上げた。「あなた、瑞鶴に何をしているの?」そこに立っていたのは、翔鶴だった。20

2020-07-04 21:57:01
劉度 @arther456

Shin Megami Tensei: Strange Journey - Boss Battle youtu.be/w2Rugr05FMM @YouTubeより

2020-07-04 21:59:01
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劉度 @arther456

「いったあ……初対面の人の顔面に本気の蹴り入れられる、普通?」ゴトランドが立ち上がる。言葉とは裏腹に、顔には傷一つついていない。「瑞鶴に触らないで」「瑞鶴?」ゴトランドは提督を見て、翔鶴の顔をまじまじと見つめる。「いや、優月でしょう?」「瑞鶴よ?」翔鶴は間髪入れずに答えた。21

2020-07-04 22:00:04