痛快ファンタジー活劇 ご存知!エルフ三人娘
- suzumeninja
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「おかしい……とは?」「んとねー、んとねー、ゴブリンは頭悪いからそんなことしないんだよね」ハカセの発言は思考が数段階吹っ飛んでいるので、他のメンバーは全員の頭上に『?』が浮かんでポカンとしている。「えっと、どういうことだゆ?」
2020-07-14 22:38:21「だからー、えっと、ゴブリンは頭悪いから、食べ物は生で食べるんだよ」「そういうことかゆ!」ポテチがハカセの言葉を理科した。「ゴブリンが保存食を知ってるはずがないゆ。つまり、もっと頭がいいやつがいゆってことゆね?」「そうそうそれそれ!」ハカセが頷く。
2020-07-14 22:40:46「もっと恐ろしい魔物がいるというのですか」村長は恐怖を隠せない。「つってもよお、その頭いいやつってのはなんなんだ?」悩むメンマ。「はいはーい!女の子!女の子!」またもやハカセが手を上げて発言する。「女の子……?」またもや全員がキョトンだ。
2020-07-14 22:43:03「女の子、女の子、いや、まてよ」メンマは逃げていったゴブリンを思い出す。「確かアイツ、娘をさらっていくとかなんとか言ってたよな……ってことはオークか?」メンマの記憶が掘り起こされる。ゴブリンより体が大きく賢いオークは若いヒューマンを食べると聞いたことがあった。
2020-07-14 22:45:31「それそれ!オーク!オーク!」ハカセはにこやかに答える。「オークですか、それは……」一般的なヒューマンはゴブリンにすら敵わない。それがオークともなれば格段の恐怖だ。しかし、メンマは堂々と胸を張って答える。「心配すんなって!アタイらがとっちめてやるよ!」
2020-07-14 22:47:51「んゆ。まかせるゆ」「わたしもやるよー!」ポテチとハカセも自信たっぷりだ。「おお、なんとお礼を申し上げたらよろしいか……」「お礼とかは終わってからでいいんだよ。な?」「んゆ」「うんうん!」三人のエルフは当然とばかりに答える。
2020-07-14 22:50:06「ようし、そうと決まれば今夜は準備だ。ポテチはポテサラ用意しとけよ!ハカセは休んでくれ!」メンマが気合を入れる。「村長さん、畑を貸してほしいんだけどいいかゆ?」「いいですが、先日荒らされた畑しかありませんよ」「好都合だゆ」
2020-07-14 22:52:26メンマとハカセは明日に備えて部屋にこもって準備を始めた。一方、ポテチは村長に案内されて荒らされたキュウリ畑にやってきた。「ここです」「ポテサラになゆはずだったのに、かわいそうにゆ……ポテチが無念を晴らしてやるゆ」ポテチはミスリル銀の背負い保管箱から魚を取り出すと、畑に投げた。
2020-07-14 22:56:05ポテチは不思議な形の杖を構える。それはポテトを潰す調理器具の形に似ていた。「ムニャムニャ……ムニャムニャ……」ポテチはヒューマンには聞き取れないムニャムニャ声を出しながら杖を降り、畑の周りを歩き始める。するとどうだろうか。みるみるうちに畑はぐずぐずに耕されていくではないか。
2020-07-14 22:58:02しかもそれだけではない。ゴブリンに踏み潰されたキュウリと投げ入れた魚がまたたく間に腐敗して肥料となっていく。ひとしきり畑を整えると、ポテチはミスリル銀の背負い保管箱からポテトを何個か取り出して畑に埋めていく。「これは、不思議な……」村長はその光景に目を奪われていた。
2020-07-14 23:00:00「明日にはポテトが育つゆ。それじゃあおやすみなさいゆ」ポテチは畑の中心に立つとズブズブと畑に埋まっていった。ポテサラ魔法の一つ、急速ポテト成長畑魔法だ。大地と肥料と、自らの魔力を栄養に急速にポテトを育てるのだ。「お、おやすみなさいませ」村長は目を丸くしながらも家に戻った。
2020-07-14 23:02:43ポテトには連作障害があり、急速にポテトを育てるこの魔法を乱発すればまたたく間に大地はポテトの育たない不毛の地となってしまう。しかし、ポテト以外を育てるヒューマンの畑ならばそのデメリットはある程度無視できる。そして、ポテサラエルフたちにとっても、飢饉を乗り切る重要な魔法だ。
2020-07-14 23:04:11こういった、普段は練習できないがいざとなったときに重要になってくる魔法を我が物にするということも、エルフ旅の目的の一つなのだ。「スヤスヤ……」ポテチは柔らかい土の布団に包まれてぐっすりと眠った。
2020-07-14 23:05:44……翌朝。ポテチが目覚めて地面から顔を出すと、畑一面にポテト葉が生い茂っていた。「うまくいったゆ」そのまま寝起きの運動とでも言わんばかりにポテトを収穫しては湯の湧いた鍋に投げ入れ、どんどんポテトサラダを作っていく。
2020-07-14 23:07:56……それからしばらくして、メンマとハカセがやってきた。「おーい、ポテチ。準備できってか?」「準備万端だゆ」そこには大量のポテトサラダを摂取してやや顔つきが丸くなったポテチの姿が。「うわー、ポテチぷよぷよー」ハカセがポテチの横腹を突く。明らかに普段よりも肥えている。
2020-07-14 23:10:44「あんまりさわんなゆ」ポテチがハカセをはねのけて立ち上がる。「そっちの準備はてきてゆ?」「あったりまえよ!」メンマは緑井色の札を持つ。ハカセが寝ている間に魔力を分けてもらった札だ。メンマは一息ついてから呪文を唱える。「ササノハサラサラゴシキノタンザク」
2020-07-14 23:13:48バンブーエルフに伝わる竹魔法は大きく分けて2種類ある。一つは竹そのものを伸縮させたり枝を伸ばしたり強度を強めたりする魔法。もう一つはゴシキノタンザクと呼ばれる色のついた札を使った魔法。今回メンマが使ったのは後者だ。呪文に答えるように札は笹舟の形となり方位磁石のように方角を示す。
2020-07-14 23:15:51「あっちだな」メンマが笹舟の指す方角を見る。昨日ゴブリンに追わせた矢には、こんなこともあろうかと探知魔法の札を組み込んでいた。矢を抜いても1日くらいなら十分探知可能だ。「よーし!いくぞぉ!」ハカセ先陣をきり、三人は進軍を開始した。
2020-07-14 23:18:46……三人が息を潜めながら暫く進むと、これ見よがしな洞窟があった。入口には見張りゴブリンが2匹。明らかにここが敵のアジトだろう。「2匹か、アタイにまかせてくれ」メンマは竹弓に矢を2本つがえる。ポテトとハカセはメンマを信じて数歩後ろに下がる。
2020-07-14 23:21:20「……シッ!メンマの弓が放たれた!「「グァ……」」2本の矢は2匹のゴブリンの頭を同時に貫く。仲間を呼ぶ事もできず、見張りは排除された。「相変わらずほえぼえすゆ腕前ゆ」「当然さ。弓はアタイの一番得意な武器だからね」
2020-07-14 23:24:22メンマはバンブーエルフの中でも特に戦士としての素質が高かった。だが、魔術の扱いがあまりにも不得意だった。特に札に魔力を込めるのは大の苦手で、今でもクソバカエルフのハカセの魔力を借りなければ、まともに札魔法が使えないくらいだ。
2020-07-14 23:26:23そういった自分の弱さを知り、同時に克服するための方法を得ることも旅エルフの大きな目的なのだ。そういった意味では、メンマは旅エルフ仲間に恵まれたと言っても過言ではないだろう。
2020-07-14 23:27:46「よし、いくぞ」メンマの合図で三人は洞窟に入っていく。しかし、進めども進めどもオークは愚かゴブリンの姿が見えない。「どういうことだ?笹舟は反応してるから間違いないはずだぞ」三人は笹舟を信じて進み続けた。……やがて、洞窟の出口にたどり着いた。「あれ?出口?」
2020-07-14 23:31:07洞窟を出る三人。「まずいよまずいよ!」最初に気がついたのはハカセだった。「罠だゆ!」ポテチも気がついたが時既に遅し、即座に三人のの背後で洞窟の出入り口が塞がれた!もう後戻りはできなくなった。「あー、そういうことかい」メンマもようやく自分たちが置かれた状況に気がついた。
2020-07-14 23:33:19三人が洞窟を抜けてたどり着いた場所は巨大な穴の底のような場所だった。周囲はすべて数メートルの断崖絶壁に囲まれており、もと来た洞窟も岩で塞がれてしまった。「グフフ……キサマラが来ることはわかっていたぞ!」三人が見上げると、そこには高笑いするオークの姿が!
2020-07-14 23:36:25