まっかなくちべに

同窓会と小さな復讐と大倉さん
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よつげ @Eight_os

181 「ちょ、不意打ち!w」 「あははw」 頬を押さえて笑う大倉くん。 …うん。 最後に見たのが笑顔で良かった。 そっと背を向けて、大倉くんの車が離れる音を聞く。 待ち合わせ場所は決めてある。 でも、そこに辿り着けるかは分からない。 …相手はあの丸山くんだ。 #エイトで妄想

2020-10-10 14:16:49
よつげ @Eight_os

182 殴られる、蹴られるは覚悟してる。 …いや、そんな手荒な真似はしないか。 でも、 殺されるくらいの覚悟で来た。 いやもちろん、死にたいかって言われたらそんなことはないけど でも 愛したいのは彼じゃない。 ここに居たって幸せにはなれない。 #エイトで妄想

2020-10-10 14:16:50
よつげ @Eight_os

183 その先に待ち受けるのがどんな世界だとしても 私はこの手を離したい。 …せっかくあの時救い出してくれたのに ごめんね。 そっとインターホンを押せば がチャリとドアが開いて 「いらっしゃい」 私の表情を見て一瞬で何か察した丸山くんが 含むような笑みを浮かべた。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/opSOakOgpW

2020-10-10 14:17:14
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よつげ @Eight_os

184 淹れてくれた珈琲には手をつけられない。 きっともう冷めてしまっているだろうけど、 丸山くんはきっとこの後私が何を言うか見通してるから。 だから恐ろしい。 「…あのね丸山くん 私と別れて」 この人の前でだけ、私は演技が出来ない。 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:37
よつげ @Eight_os

185 いつもみたいに強く居たかったのに、声が震えた。 「大倉くん?」 「…うん」 「そう 復讐終わったのに、離れられへんかったんやね、結局。アホらしい」 自嘲気味に笑った丸山くんの目から 一粒 涙が零れた。 「っ、まるやまく」 「好きやったのに」 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:38
よつげ @Eight_os

186 ぐしゃりと、丸山くんは自分の髪を握る。 「…ほんまに、大好きやったのに」 「そんなこと、言ってくれなかった」 「縛りたくなかったのに、僕やって 勝手に離れてったんはお前の方や」 ゆらりと丸山くんが立ち上がった。 そっと、私の首筋に手をかける。 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:40
よつげ @Eight_os

187 くっと力が篭って、一瞬目を瞑ったけど すぐにその手は離された。 何となく安堵して目を開けると 丸山くんの目は真っ直ぐこちらを見て …いたのかは、分からなかった。 瞳の中にあったのは、どろどろに溶けた闇だけだった。 「殺したい」 「っ、」 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:40
よつげ @Eight_os

188 「お前の好きな人を殺して、お前も殺して、僕も… いや、違うな 僕と彼だけ殺して、一生お前を苦しめようか」 はらはらと涙を零しながらそう苦しそうな声で言う。 …そんな風に本気で思ってたら 今ここで私の首から手を離すことはなかったでしょう? #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:41
よつげ @Eight_os

189 肝心なところで悪者になりきれない そういうところを好きになったんだよ。 「…ごめんね」 「許さへん、こんなんで ずっとずっと、ずーっとお前らのこと追い続けたる」 頬を涙に濡らしながらも ゾクッとするような目で見つめてきて 背筋が凍るような気がした。 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:42
よつげ @Eight_os

190 「あは、僕怖い?」 「や…」 「…追われるのは嫌? それならやっぱり一緒に死んでよ」 丸山くんが、私の席に置かれたコップを手に取った。 珈琲が入ったままのカップを。 「…どうぞ?」 「要らない」 「じゃあお前らの平穏な日々は保証出来ひんよ」 めちゃくちゃだ。 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:43
よつげ @Eight_os

191 それが本当ならどっちに転んだって 平穏な日々なんかないじゃないか。 この珈琲に何が入ってるかは知らない。知りたくもない。 きっと私を殺すための何かだ。 「…飲んでや、はよ」 この人は、私が壊したんだろう。 それは分かる。 それでも #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:44
よつげ @Eight_os

192 口に押し付けられるそれから必死で逃れようとした。 だってこんなの、やっぱり間違ってる。 (…助けて) 心の中で呟いた時 バシャッと音がしたと思ったら カップが空になってテーブルに置かれた。 それと同時に後ろに引き寄せられる。 「もうやめて」 #エイトで妄想

2020-10-12 17:23:45
よつげ @Eight_os

193 心の奥底で待っていた低い声に、 涙が溢れた。 「この子はもう俺のやから 追いかけたいなら勝手にしてええけど…絶対に俺が守る」 そして、小さな声で言ってくれたんだ。 「よお頑張ったな …もうええやろ、俺と二人で逃げよ」 #エイトで妄想 pic.twitter.com/C0hVr6ugrx

2020-10-12 17:24:57
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よつげ @Eight_os

194 数か月後 私は大倉くんの家に移り住んで 一緒に暮らしていた。 あれ以来、丸山くんと会うことは一切ない。 「あのー大倉くん」 「忠義くんな、ええ加減慣れて」 「た、だよしくん あのー、離れて。仕事出来ひん」 私はのびのびと、大倉くんに愛されている(多分)。 #エイトで妄想

2020-10-14 19:07:16
よつげ @Eight_os

195 「せんでええやん」 「そんなこと言ったってこれ来週締切でっ…んー!届かない!!」 現在後ろから大倉くん、否、忠義くんに抱き締められている状態で 思いっきり手を伸ばしてもパソコンに手が届かない。 「…家でまで仕事せんでもさ」 「んっ、ちょ、」 服の中!手! #エイトで妄想

2020-10-14 19:07:17
よつげ @Eight_os

196 抵抗しようとすればむしろ体勢を崩して その場に押し倒される。 ちゃんと付き合いだして分かったこと。 忠義くんは思ってた以上に手が早い。 「家でしか出来ひんことしよ」 「ばか…」 「好きやろ?俺みたいな馬鹿」 「…ノーコメント」 #エイトで妄想

2020-10-14 19:07:18
よつげ @Eight_os

197 同い年だってのにどんだけ体力あんのよこの人…。 でもソウイウコトしてる時の忠義くんはすごく愛おしそうな、余裕のない目をしてるから憎めない。 「…あのさ」 「ん?」 押し倒したままの状態で忠義くんが言う。 「散々振り回したんやから 俺の人生に責任取ってよ?」 #エイトで妄想

2020-10-14 19:07:19
よつげ @Eight_os

198 「…と、言いますと」 忠義くんは私の唇をそっと指でなぞると 「続きは今度ちゃんと…な?」 「えっ…ん、」 そう言って、何度もキスをして 深く深く、絡み合う音がするまで重ねて。 そのまま二人熱に溺れた。 あの日確かに傷ついた私は #エイトで妄想

2020-10-14 19:07:20
よつげ @Eight_os

199 今のこんな未来を予想もできなかったことだろう。 自分がある日突然出会った誰かに変えられて 今こんなに幸せだってことも。 そんな人が世界にどれほど居るんだろう。 今はもう何処へでも踏み出せる。 あの日の真っ赤な口紅と 隣の貴方が 私に自信を与えてくれる。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/lVVX2XBDRQ

2020-10-14 19:07:35
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よつげ @Eight_os

200 そっと大きなその背中に腕を回す私は 数ヶ月後に丸山くんの手の中に 彼には出していないはずの 私と忠義くんの結婚式のハガキが握られていることなど 知る由もない。 「あーあ、つまらんなぁ そろそろ新しいオモチャ、どっかから拾って来おへんと、ね」 #エイトで妄想 pic.twitter.com/IUS7HTbqKY

2020-10-14 19:07:41
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