ストレイトロード:ルート140(51周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2501~2550+おまけ。リクエスト回以外のテーマは「空」。一部は宇宙まで見ています。なお各話の内容につながりはありません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2525。昇る。 子供の解釈だからとニコニコして聞いては……くれないか。 昔子供だった人々にとってその世界はリアルに怖い場所でしかない。

2020-08-19 19:43:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

上り坂の前に立入禁止の看板が落ちていた。昔の封鎖は多くの足跡に潰されている。道の先には見晴らしのよい丘と二本の石柱しかなかった。「危険行為があったと聞きましたが」「これでしょ」藍の端末に答えが出ていた。柱の間にゴムを渡した画像がある。「帯を引っ張った反動で飛ぼうとした人がいたの」

2020-08-20 18:53:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2526。反動。 いわゆるスリングショットで人間を、あるいは乗り物を空に向かって飛ばす。 とても危険。たとえ怪物がいないこちら側の世界でも。

2020-08-20 18:53:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

古びた模型が天井から吊るされていた。藍が側面の文字を読み、顔をしかめた。「これが飛行船?本当に浮いてたの?」以前に山奥で浮遊する怪物を見たことがあった。その体型が飛行船に似ていると聞いた藍は昔の記事や動画を確認していたようだが、映像から膨らませた想像は現物と少し違っていたらしい。

2020-08-21 18:47:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2527。飛行船。 乗るどころかミニチュアを飛ばすことさえかなわない世界での一場面。

2020-08-21 18:47:31
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

室内のあらゆる道具が浮遊している。無重力状態よりは水中に置かれたときの挙動に似ている。「誰かに呼ばれた気がして」この家に住む少年がつぶやいた。彼の足は床から離れていない。「探してたら、こんなことに」藍に周囲の気配を尋ねようとしたら髪の房に叩かれた。「大事な話なの。割り込まないで」

2020-08-22 18:39:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2528。浮遊。 ある目覚めの一場面。

2020-08-22 18:39:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

画面の中で雲や陸地が目まぐるしく動いている。飛行機の操縦士のような視点だが、古い映像を元に風の魔女の視点を合成した、と研究員が説明した。「だいたいこんな感じかなーと」「なんか違う。スピード出しすぎだし」偏西風に乗って大陸を横断している設定らしいが、藍本人の評価はいまひとつだった。

2020-08-23 21:15:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2529。偏西風。

2020-08-23 21:15:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「星はいい。いつ見ても美しい」幼い頃から夢中になっていた望遠鏡を、老人になった今も覗いている。発言に説得力を与える横顔を見た。「近頃は空が遠くなったとみんな言うが、本当は何も変わっていないのさ」望遠鏡が気になって仕方ない藍に気づいた老人が笑う。「見るかい?だいぶ昔の星ばかりだが」

2020-08-24 20:56:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2530。望遠鏡。

2020-08-24 20:56:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あの子、前にも見た気がする」藍が言うのは昨日今日の話ではない。私達がこの町を通るのは三度目で、前回も人目を避けて夜中に移動した。今夜と同じように小屋の上にいたという誰かを、藍は遠ざかる車窓から見ていた。数日後に彼女は言った。「毎晩あの場所で空を眺めてただけ。見張りじゃなかった」

2020-08-25 18:47:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2531。毎晩。

2020-08-25 18:47:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

口論する人々が吊り橋を塞いでいた。女が橋にロープを掛けるのを地元住民が止めていたという。「何もない崖の下に降りようと」「あるわよ!地底空間が!」彼女の名を聞いて納得した。突如現れた怪物は未確認なだけで初めから地球にいた、とする論文の著者だ。「本当に何もないのに」藍が隠れて呟いた。

2020-08-26 20:03:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2532。未確認。 誰かが確かめて記録に残すまでは確定しないもの。

2020-08-26 20:03:27
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

空は何色か。子供達がウェブ会議で意見を戦わせる姿を私達は遠巻きに見学する。「あなたはいつ気づいた?」藍に問われた。空気自体は無色透明、色は射し込む光の一部が反射されたもの。遠い昔に学んだと答えると、何故か勝ち誇った顔をされた。「教わる前に気づいたの。色ついてたら何も見えないって」

2020-08-27 19:43:04
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2533。無色。 教科書を読む前から知っていた、という小さな優越感。

2020-08-27 19:43:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あの人は星になったんだ」少年は多くの名が印字された星図を見せて笑った。藍は病室にいる間は相槌を打っていたが、車に戻ってから本音がこぼれた。「あれって名誉なの?」彼の恩人の名がついた星は私達の進行方向に存在するらしい。だが昔より輝きが増えた夜空でも、それと判る光は見えそうにない。

2020-08-28 19:43:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2534。名誉。

2020-08-28 19:43:48
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

ある農村の人々は私達を歓迎し、様々な形でもてなすと共にしつこく引き留めてきた。先を急ぎたい藍は危険な道が多いと諭され、情報を得たい私には頼み事が舞い込んだ。連れ出された先で見せられたのは日照り続きで壊滅した川や畑だった。恵みの雨や風をもたらす魔女にすがりたくなるのも無理はないか。

2020-08-29 19:28:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2535。もたらす。

2020-08-29 19:28:26
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

逃げた幼体を探していたら、民家の壁を登る夜盗に出くわした。月明かりしかない夜でもさすがにあの怪物と人間を誤認はしない。無視は惜しいが時間はない、後で通報をと考える間に藍が本人へ声をかけた。「ちょうどよかった、屋根の上にいる生き物捕まえて!」手を窓枠に掛け損なう瞬間を見てしまった。

2020-08-30 18:38:14
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2536。夜盗(やとう)。

2020-08-30 18:38:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

今も昔もこの地球こそ人類が生きていける唯一の環境だが、個人には広くても集団には狭い。故か星空の彼方への移住を夢見る人々は常にいた。絵本を抱えた少年もその一人らしい。他の子の遊びには見向きもせず藍に質問を浴びせているが、内容が現実的で未来に厳しい。そろそろ私に押しつけられるだろう。

2020-08-31 19:38:42
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2537。唯一。

2020-08-31 19:38:43