タトゥー裁判上告審判決(R2.9.16.最高裁決定)についての法学者・弁護士のコメント

被告人弁護を担当した亀石弁護士、理論面で協力した辰井氏、弁護側意見書を提出した曽我部氏、判決文を批判する吉峯弁護士、以上4氏のツイートを中心に収録。また、記事末尾には他の医療類似行為等への影響を検討するツイート群を併せて収録。
14
弁護士 亀石倫子 @MichikoKameishi

辰井聡子先生(刑法・医事法)「『法』というものは自由を守るためにためにこそ存在しているのだということ、自由を守るためにこそ『法』を正しく扱わなければならないのだということに、ぜひ、関心を寄せていただけたらと思います」 twitter.com/tatswi/status/…

2020-09-19 08:51:58
神庭亮介 @kamba_ryosuke

ダイヤモンド・ライフ編集部 副編集長。著書に『ルポ風営法改正』。朝日新聞記者、BuzzFeed Japan編集長を経て現職。『ABEMAヒルズ』、『ONE MORNING』(TOKYO FM、月火)、『マイあさ!』(NHKラジオ、不定期)など。ご依頼はryosuke.kamba@diamond.co.jp まで。

diamond.jp

神庭亮介 @kamba_ryosuke

「法とは自由そのものを意味しています」 辰井聡子さんの指摘が胸を打つ。 タトゥー裁判で無罪確定へ 法学者が彫り師に「深くお詫び」した理由 buzzfeed.com/jp/ryosukekamb… @kamba_ryosukeより

2020-09-19 11:03:33

曽我部 真裕氏(憲法):控訴審で弁護側意見書を提出

曽我部真裕/Masahiro SOGABE @masahirosogabe

憲法・情報法。実務家としてはペーパードライバー(54期大阪4班)。学生さんのフォローも歓迎します(フォロー返しはしません)。RT等は賛意とは限りません。Professeur de droit constitutionnel à Kyoto @masahirosogabe.bsky.social

https://t.co/dT6KgtERD1

京都大学法学部・大学院法学研究科で憲法・情報法の研究・教育をしています。
――本人ブログのプロフィールより引用

曽我部真裕/Masahiro SOGABE @masahirosogabe

タトゥー事件。決定文が公開されています。草野裁判官の補足意見は、憲法との明示的な関連を極力薄めようとする意図が見えるものの、実質的には被告人の主張してきた憲法的な価値を考慮するものといえましょう。 twitter.com/HanreiWatch/st…

2020-09-18 17:40:29
裁判所判例Watch @HanreiWatch

最高裁第二小法廷 令和2.9.16 平成30(あ)1790 医師法違反被告事件 kanz.jp/hanrei/detail/…

2020-09-18 16:01:18
曽我部真裕/Masahiro SOGABE @masahirosogabe

高裁判決の評釈ですが、下記で本文も公開しております。hdl.handle.net/2433/244394 twitter.com/hanji_hanjiro/…

2020-09-18 09:04:40
判例時報社営業部 @hanji_hanjiro

【タトゥー裁判関連記事掲載号①_判例時報】※敬称略 No.2415:タトゥー施術行為に医師法17条を適用して処罰することは、職業選択の自由を侵害するおそれがあり、憲法上の疑義があるとされた事例(大阪高判平30・11・14)…曽我部真裕 twitter.com/nhk_news/statu…

2020-09-18 08:56:10
曽我部真裕/Masahiro SOGABE @masahirosogabe

タトゥー彫師医師法違反事件最高裁決定について、メディア向けコメントを求められましたので、以下の通り作成しました。 タトゥー彫師医師法違反事件最高裁決定についてのコメント - Bienvenue sur le blog de mas… masahirosogabe.hatenablog.com/entry/2020/09/…

2020-09-19 06:29:56
リンク Bienvenue sur le blog de masahiro sogabe タトゥー彫師医師法違反事件最高裁決定についてのコメント - Bienvenue sur le blog de masahiro sogabe タトゥー彫師医師法違反事件最高裁決定(最二小決2020年9月16日)について、メディア向けコメントを求められましたので、以下の通り作成しました(少しだけ表現を変更しています)。 決定文はこちらで公開されています。また、弁護団の亀石倫子先生のコメントはこちら。弁護団の一審での印象に残る冒頭陳述はこちら。意見書などで協力された刑法学の辰井聡子先生のコメントはこちら。同じく刑法学の高山佳奈子先生のコメントはこちら(記事後半です)。高裁判決はこちら。高裁判決に関する拙稿はこちら。 まずは増田さんのこれまでの頑張り 1 user 8

 以下、判決内容についてコメントさせていただきます。最高裁決定は、高裁判決が「医行為」の限定的な定義を採用したことを正当とし、医療関連性のないタトゥー施術のような行為は「医行為」に該当しないとしました。その理由付けは、医師法の制度趣旨から導かれたもので、オーソドックスな法令解釈の手法に基づいたものとして、当然の判断です。
 タトゥーの文脈を離れても、「医行為」の概念はこれまで非常に曖昧で、恣意的とも言えるような運用がなされてきており、法治国家原理の観点から問題があったところですので、今回、一定の明確化がなされたのは一定の意義があったと思われます。ただ、「医行為」概念が曖昧であることによる混乱(AEDの使用が医行為ではないかと問題となったことなど)は医療関連性のある領域で生じており、また、今回の決定は、「医行為」に当たるかどうかは諸事情を考慮した上で社会通念に照らして判断すべきだとしているので、今回の決定が現実に及ぼす影響は限定的だと考えます。
 たとえば、今回の事件の中で引き合いに出されたアートメイクなどは、技術的にはタトゥーと同じであっても、社会通念を理由に引き続き「医行為」に当たるとするものだと推測されます。
 さて、今見たように、最高裁は、今回の問題を医師法の解釈によって解決し、憲法に対する言及はありませんでしたが、このことは個人的には予想されたことです。「医行為」の要件として医療関連性が必要だという解釈は、医師法の制度趣旨から自然に導けることで、憲法判断をするまでもなく無罪の結論が導けるからです。
 もっとも、最高裁決定の補足意見では、タトゥー施術行為に医師免許を要求すると、我が国において彫師がいなくなってしまい、タトゥー施術を受けることができなくなってしまうということへの懸念が示されています。タトゥーには美術的価値や一定の信条ないし情念を象徴する意義を認める者がおり、タトゥー施術が受けられなくなると、国民が享受しうる福利の最大化を妨げるものであると言われています。このような補足意見は、憲法との明示的な関連を極力薄めようとする意図は見えるものの、実質的には被告人の主張してきた憲法的な価値を考慮するものです。
 医師法の制度趣旨だけではなく、憲法的な価値を考慮することによって(また、場合によっては傷害罪が成立することに注意を促して)、今回の判断によって規制が全くない状態になってしまう不都合を正当化しようとしているものと見られます。

弁護士 亀石倫子 @MichikoKameishi

曽我部先生(憲法)「『誰もが自分らしい生き方ができる社会を』というのが憲法の理念だと私は考えていますが、たとえ社会から胡散臭く見られようともそれだけを理由に自分らしく生きる自由を止めることはできないということが増田さんや弁護団の訴えたかったことなのだろう」 masahirosogabe.hatenablog.com/entry/2020/09/…

2020-09-19 08:17:52
神庭亮介 @kamba_ryosuke

「たとえ社会から胡散臭く見られようとも、それだけを理由に自分らしく生きる自由を止めることはできない」 曽我部真裕教授の談話。 たとえ、うさんくさく見られても…憲法学者がタトゥー裁判に感銘を受けたワケ buzzfeed.com/jp/ryosukekamb… @kamba_ryosukeより

2020-09-19 11:22:11
曽我部真裕/Masahiro SOGABE @masahirosogabe

匿名ブログですが、情報量豊富な記事です。/最決令和2年9月19日裁判所website(タトゥー医師法違反事件上告審) - Life is Beautiful haruwas.hatenablog.com/entry/2020/09/…

2020-09-19 10:40:53
リンク Life is Beautiful 最決令和2年9月16日裁判所website(タトゥー医師法違反事件上告審) - Life is Beautiful 目次 報道 前提知識 医師法17条 タトゥーの医行為該当性 判決・決定 控訴審 最高裁 草野補足意見 コメント 憲法審査について(曽我部評釈を読んで思ったことなど) ★医師法17条の趣旨 社会通念論の問題点―「医師の先占」論? 職業選択の自由の2つの意義と、最高裁の役割―草野補足意見 通達による具体化について レファレンス ★は追記した箇所。 報道 入れ墨のタトゥーの彫り師をしている男性が医師の免許がないのに客にタトゥーを入れたとして医師法違反の罪に問われた裁判で、最高裁判所は検察の上告を退ける決定をし、

吉峯 耕平弁護士・・・最高裁決定のロジックを批判

弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

東京の弁護士(58期、第一東京弁護士会所属)。経済学部出身。千葉県市川市出身。【趣味】スキー、日本酒、読書(中毒)【興味ある分野】医事法(医療情報法、医学研究法、ヘルステック、応招義務)、統計的・経済学的証拠、デリバティブ、デジタル・フォレンジックス、裁判のIT化、リーガルテック、刑事弁護【物欲】カメラレンズ、靴

twilog.org/kyoshimine

弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

「タトゥー」最高裁決定の評判がいいけれど、私は疑問。 要約すると、「医行為は何か、医療である。医療とは何か、社会通念で決める」ということで、要はトートロジー+社会通念でしかない。 なぜ彫師が医業にあたらないかというと、結論の妥当性からの逆算。 courts.go.jp/app/hanrei_jp/…

2020-09-19 10:34:38
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

なにがまずいか。 「医」の解釈が問われているが、「医」は非常に人工的な概念で、せいぜい江戸後期からの歴史しかない。この文理上の特殊事情から、社会通念に委ねると解釈が安定しない。 「医療」ではないという弁解のもと、保健衛生上危険な行為が横行するおそれがある。 twitter.com/kyoshimine/sta…

2020-09-19 10:42:19
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

さて、ここでやや特殊な事情があって、「医」という言葉の内実が、江戸時代以前と明治以降で大きく変わっていることだ。 いうまでもなく、明治以降の「医」とは主に西洋近代医学を指す。あるいはやや遡って解体新書以降の江戸期西洋医学を含めてもよい。

2017-10-01 00:39:33
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

これは医行為の要件として医療関連性を設定したことによる弊害ではなく、「医療関連性を要件としながら、その内実を示さず、社会通念に丸投げしたこと」による弊害である。 最高裁は「医療」とは何かについて、考慮要素挙げて社会通念と言うだけで、その概念の内実についての判断から逃げた。

2020-09-19 10:50:10
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

従来の通説をひっくり返して医療関連性を要件とするのであれば、当然、医療とは何か判断するべきだった。 そこで、美容整形と入墨の違いが整除されなければならなかった(これはかなり難しい。歴史的には美容整形は医療とは考えられていなかったという事情もある)。

2020-09-19 10:59:09
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

医療とは、素直に考えると、人の健康を改善するための介入行為といったものだろう。そこで「健康」とは、狭い「病気」の治療だけではなく、心理的なものも含まれる。だから美容整形(絶対に病気の治療とは位置付けられない)も医療の範囲内となる。ではなぜ入墨は医療ではないのか?

2020-09-19 11:15:24
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

おそらく、ここの判断は、行為の危険性の大小と目的の相関的な判断になっている。美容整形は目的としては医療から外れそうだが、顔にメスを入れるという行為の危険性が極めて大だから医療に入ってくるのだと思う。 そうすると入墨は危険性がそれほど高くないから医療ではないという理路になる。

2020-09-19 11:19:00
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

しかし、刺青の侵襲性は相当に高いように思えるし、将来基本的に除去できず、一生涯外見を変更するという性質を軽視してはならないと思う。

2020-09-19 11:22:18
弁護士 吉峯耕平 @kyoshimine

最高裁の判断は、結局のところ、「彫師に医師の資格を取らせるわけにもいかないし、医師が刺青を彫ってくれるわけでもない」という結論の妥当性だろう。それはおかしいと思わせたのは、刺青の歴史・文化論についての弁護人の立証が効いている。ここは見事。

2020-09-19 11:29:06