日米暗号解読 太平洋戦争前交渉とカルチャーギャップ

29

関連

「真珠湾攻撃 「新高山ノボレ」「無線封止」各説
(阿川弘之「山本五十六」より)

 昭和16年12月2日、聯合艦隊の各部隊には、午後五時三十分、山本五十六の名前で、「新高山ノボレ 一二〇八」という電報が発せられた。

 これが、「X日を十二月八日午前零時と定め、開戦」の意味であることは、周知の通りだが、一般に誤って解されているように、この短文そのものが暗号で、「ニ、イ、タ、カ、ヤ、マ、ノ、ボ、レ」とモールス符号が打たれわけではない。機密保持を二重にするためと、電文を簡略化するために、艦隊では各作戦毎の陰語書が作られるのが例で、「新高山ノボレ」も、開戦に関する隠語書の中の一つの陰語で、謂わば電信略号の如きものであった。各艦隊への通信に使われていたのは、主として五桁の数字の乱数暗号である。

 これからのち、山本五十六の戦死にいたるまで、暗号の問題は、かなり大きな蔭の問題になって来るので、書き添えておけば、「D暗号」「呂暗号」「波暗号」など海軍の乱数暗号は、五十音順に約五万語から十万語の語彙を収録した発信用暗号書と、同じだけの言葉を00000から99999まで数順に並べ直した受信用暗号書と、使用規定と乱数表の四冊から成っていた。乱数表というのは、全く無意味で無作為な五桁の数字を、何万と収めたものである。

 発信用暗号書をひいて、「ニ」の欄に「新高山」という地名を見出し、それに対応する暗号符字が、仮に40404であったとすると、暗号員は使用規定にしたがって、乱数表の一定の頁がある行の、ある五桁の乱数を選び、それが仮に56789であったとすれば、40404に56789を加えて、(但し、実際の算術のように繰上げはしないので)96183という答を得る。この96183が、実際に暗号として打電される「新高山」である。「ノボレ」も「一二〇八」も、同様の操作で暗号化される。」

https://web.archive.org/web/20160614030154/http://www.page.sannet.ne.jp/mori-y/nihon2.html

リンク NAVER まとめ 暗号 太平洋戦争 解読されても翻訳は誤訳だらけ - NAVER まとめ 太平洋戦争の暗号とカルチャーギャップについてとりとめのないまとめです。