茂木健一郎さんの「創造性」
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創造(1)パリにはパスツール研究所がある。パスツールは、煮沸して放置した肉汁は腐敗しないことを示して、自然発生説を否定した。「無」から「有」は生まれないことを明らかにしたのである。同じことが、私たちの「創造」のプロセスにも言える。
2011-07-11 13:16:09創造(2)創造のプロセスを、ロマンティックに考えがちだし、主観的にも「無」から「有」が生まれるように思えるが、実際にはちゃんとタネがある。それでも、なぜ驚くほど新しく、そして美しいものが生まれるのか。ここには脳の働きについて最大のミステリーの一つがあるのだ。
2011-07-11 13:17:14創造(3)人間の脳の創造性の最大の不思議の一つは、「歩留まり率」がいいことである。コンピュータに作らせようと思ったら、今のところランダムに生成して、評価関数で最適化するしかない。ところが、脳は、最初からまるで「決め打ち」したかのように新しいものを生み出せる。
2011-07-11 13:18:11創造(4)「yesterday」「あの素晴らしい愛をもう一度」「タイガー&ドラゴン」。これらの曲に共通なのは、あたかももともと存在したかのように作曲者の頭の中から出てきたということ。脳の創造性は、木の中に最初から埋まっているフィギュアを掘り出す彫刻師のようなもの。
2011-07-11 13:20:15創造(5)歩留まりの良い創造のプロセスは、どう支えられるか? 側頭連合野を中心に蓄えられた知識や経験が、無意識のうちに配列を変え、結びつき、再編成されて出てくるのであろう。無から有は生まれない。必ず、素材はもともとあって、それが変形されて出てくるのである。
2011-07-11 13:22:11創造(6)「ど忘れ」した時には、前頭葉で「これは知っている」というFOK(feeling of knowing)が生じ、それに導かれて側頭葉から情報が引き出される。創造性においても、前頭葉でFOK類似のタグが生まれ、それにあわせた新たな編成が側頭葉から生まれる。
2011-07-11 13:24:11創造(7)つまり、創造性とは、過去のアーカイヴがある側頭葉と、こんなものを生み出したいという前頭葉の機能のかけ算である。FOKは、無意識のうちに存在することもある。だからこそ、様々なことを経験すると同時に、情動の嵐に身を置くことが必要となるのである。
2011-07-11 13:25:33創造(8)創造性=前頭葉(意欲)×側頭葉(経験)。しばしば若者が創造的だと言われるが、経験を蓄積した年寄りは、意欲さえあれば創造的になるはず。意欲のあるジジイは、最強の創造マシンだということになる。岡本太郎やピカソを見よ。
2011-07-11 13:26:47創造(9)人間の脳のような創造性をコンピュータに持たせることにはまだ成功していない。どんな時代も、最も希少な財が高い価値を持つ。今日の世界で貴重なのは、新しいものを生み出すこと。みんな、意欲を持ち、経験を積み重ねて創造的な人生を送ろうではないか!
2011-07-11 13:28:19