【再放送】サンズ・オブ・ケオス ＃2

ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

以来、すべてが美しい。ドブ水の臭いは美しい。表面の油膜は美しい。腐乱死体に湧く虫は美しい。殺しは美しい。死んでゆく人間が美しい。なかでも己自身は宝石のように美しかった。そして、「宝石」は自分一人ではなかった。ただ感じる事が出来た。ネオサイタマ。世界。共有できる仲間を感じた。　23

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思えば、かつての己は他者を羨み、妬むばかりの存在だった。ニンジャとなって常人をはるかに勝る力を得てからも、境遇はさして変わらなかった。世界の裏側のレイヤーにはニンジャが既に溢れており、彼らはメイレインよりもよほど価値があるように思えた。サンシタはどこまでいってもサンシタだ。 24

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だが今は違う。彼はサツガイに選ばれた。そして世界には、彼同様にサツガイに祝福された、恵まれたニンジャが複数存在する事を知っている。彼らを結ぶのがサンズ・オブ・ケオス。愚かなナハトローニンはメイレインの誘いを取り合わなかった。互助を軽視し、差し伸べた手を拒絶した。理解しがたい。　25

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「フー……」階数表示。廃れたビルの5階に彼らの「礼拝堂」はある。今このとき、同胞たちの存在は感じない。誰もが戻りたいときに戻ればよい。緩やかな連帯なのだ。「礼拝堂」すらも不定でよい。上昇するエレベータ内で、瞑想的に思考は巡る。この上昇の感覚すら美しく心地よい……（イヤーッ！） 26

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声は足元はるか下から聴こえた。反射的にメイレインは跳び下がり、エレベータの壁に背中をつけた。……床の中央付近が隆起し、裂け、錨、あるいは鏃めいた、鋭利ななにかが飛び出した。それはまるで爪のように、金属の刃で床を噛んだ。ギギッ……ゴギギギギ。軋み音が鳴り、エレベータが震動した。　27

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「何だ！？」メイレインは身構えた。上昇が停止。床が下に向かってひしゃげ始めた。鉤爪が食い込み、下に引っ張っている。「これは」メイレインは目を見開く。どうやらそれはフックロープ状のなにかだ。彼のニンジャ第六感は、このまま放置すれば何が起こるかを予感として伝えてくる。極めて危険だ。28

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鋼のロープは異様な熱を放つ。接触部周囲の空気が歪み、ひしゃげた床がブスブスと黒ずみ始めた。「イヤーッ！」今度ははっきり聞こえた！KRAAASH！エレベータの床が完全に裂けた！「グワーッ！」メイレインは否応無く下へ零れ落ちる！側壁の凹凸に反射的に手をかけ、危うくぶら下がる！　29

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（何が……起きた？）鼓動が速まる。彼は首を巡らせ、エレベータ・シャフトの下に目を凝らした。下から赤黒の眼光が見返した。フックロープで床を破った者。剥き出しの殺意がメイレインを射た。「なッ……クソッ！」彼は四階のエレベータ用扉を、振り子の勢いをつけた蹴りで破り、フロアに進入した。30

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この雑居ビルに他の住人は無い。棲みついていた連中は、あらかた彼と仲間の手で殺して奇麗にした。そしてプライバシーを守るべく、IRC監視対策ユニットもひときわ強力なものを導入してある。（とにかく5階だ！）メイレインは廊下を走り出した。（非常階段から5階に上がり、礼拝堂へ……！）　31

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礼拝堂にはUNIXがある。仲間に異状を伝えるべし。闇社会の住人である以上、命を狙われる謂れは一つ二つある。常に覚悟し備えてきた。何よりサツガイに与えられた力がある。「美」に護られている！メイレインは屋外非常階段へ飛び出す。すると、ガン！ガンガンガン！下から駆けあがって来る音！　32

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「来たな」彼は呟き、階段を駆け上がった。ガンガンガンガンガン……二者の足音が鉄の非常階段をうるさく鳴らす。下の音は疑いようもなくメイレインを追跡してきている。「おお、サツガイ＝サン……！同胞たちよ……！」走りながらメイレインは祈る……。　33

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◆◆◆ 34

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「イヤーッ！」ニンジャスレイヤーは非常階段を五階まで上がり切り、逃げるメイレインの影を追って屋内へ走り込んだ。前方左手、音を立ててシャッターフスマが閉じられたところだった。全力疾走の勢いをスライディングでブレーキし、一切の躊躇なく、シャッターフスマに蹴りを見舞う！「イヤーッ！」35

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KRAAASH……シャッターフスマは鉄屑と化して室内を撥ね跳び、無数の白い羽根が、奥の窓から入り込む光の中を舞った。ミーティング・ホールめいた広い室内を、数羽のバイオ鳩が狂ったように飛び回っていた。踏み込んだニンジャスレイヤーの死角からレーザークナイが襲い来た。「イヤーッ！」36

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ニンジャスレイヤーはこの種のアンブッシュ（奇襲）が来る事を事前に織り込んでいた。ゆえに彼のニューロンと身体は極めて速く反応した！……「グワーッ！」呻き声をあげ、レーザークナイを取り落したのはメイレインだ！　間髪入れずニンジャスレイヤーはケリ・キック！「イヤーッ！」「グワーッ！」37

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メイレインは床をバウンドし、観葉植物を薙ぎ倒し、壁の聖画の額を砕いた。ニンジャスレイヤーはオジギを繰り出した。「ドーモ。メイレイン＝サン。ニンジャスレイヤーです」「ゴボッ」舞い散る羽根の中、メイレインは咳き込み、そしてアイサツを返した。「……メイレインです。何者……なぜ俺を」　38

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「サツガイという男を知っているか」「……ふむ」問いを聞くや、メイレインのアトモスフィアが変わった。「サツガイを、知る？それは哲学的な問いではないかね」彼は笑い出した。「ふふふ、知るなどおこがましい。冒涜だよ。俺は無知を知る」神がかりの言葉に凄みが宿った。彼は呟いた。「サツガイ」39

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再放送 【サンズ・オブ・ケオス】#2 終わり #3 に続く

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サツガイ接触者メイレインとの戦闘が始まる！ そして次回、コトブキ本格登場。 明日の【サンズ・オブ・ケオス】#3 にニンジャオンしよう！