くろぐだの奇妙な冒険 第3巻 ~フニコロの休日~

作者:日向寺皐月(@satuki_hyugaji)さん 「#自分のスタンドを考えてみるタグ」から始まったフォロワースタンド使い化企画連載小説(三次創作) 第3巻分まとめ https://togetter.com/li/1608736 ←2巻 4巻→ https://togetter.com/li/1609065
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日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 9 「だが、夜泣き石まではまだ長くないか?」 はんちょ~はそう言って、マップを見る。夜泣き石があるのは、睦月山中腹にある休憩所だ。しかしここは山道入口から暫くの所。まだまだ先は長い 「…何とかしようか」 そう呟いたかせんの手には、小さなロケットが握られていた

2020-09-25 22:38:53
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 10 睦月山中腹。ここからはT市を一望出来る。が、それを見ているのはくろぐだだけで、残り二人はベンチで休んでいた 「そもそも、山を歩いて登るなんて非効率極まりないんだよ」 「お前それ山登る意味ねぇだろ」 呆れた声を上げるはんちょ~。だが、かせんに正論は通じない

2020-09-25 22:42:48
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 11 「あの時、君達に止められなければもっと早くここに来れたんだよ…?」 結局。かせんにロケットを使わせないように二人は説得し、変わりにはんちょ~が荷物を持ってあげたのだ。結果、山馴れしているくろぐだ以外は死屍累々である 「あのなぁ…」 はんちょ~は呆れた

2020-09-25 22:47:26
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 12 と、くろぐだがもじもじして二人の方に来る。直ぐに察したはんちょ~は、トイレの位置を教えた。そうして視界をベンチに戻すと…かせんが居ない 「はんちょ~!来てみろよ!」 疲れていた筈のかせんだが、何故かテンション高めにそう言っている。見れば、夜泣き石の側にいた

2020-09-25 22:51:10
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 13 と、言うより夜泣き石が普段より横にズレており、変わりにそこにはぽっかり開いた穴があった 「これ、何だろね」 眼をキラキラと輝かせてはんちょ~に聞くかせん。はんちょ~はそんなかせんを見て嫌な予感を感じた 「いやお前、入るなよ…?」 が、そんな制止を聞く訳もなく

2020-09-25 22:55:48
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 14 「行ってみるか!」 「いや人の話聞けよ!」 はんちょ~の突っ込みも虚しく、かせんは柵を越えて入ってしまった。はんちょ~は引っ張り出す為にかせんの服を掴み― 「あ」 「げ」 かせんが転んだ拍子に、穴の中に吸い込まれてしまった 「で、どうするかだ」 はんちょ~は言う

2020-09-25 22:59:30
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 15 「先ずは試す?」 そう言うなり、かせんはロケットを作り出した 「ウィール・ミート・アゲイン!」 「いや、お前っ!?」 慌てて頭を下げるはんちょ~。飛んでいったロケットは、何故か入口を塞いだ岩に当たる しかし… 「ゲホッ…駄目か…」 傷一つ付いていない様だ

2020-09-25 23:04:54
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 16 「あ、駄目だこれ」 スマホのライト機能で岩を照らしたかせんはそう呟く。はんちょ~は飽きれ半分で、かせんを退かせた 「もう良い。俺がファスト・アンド・フュリオスで―」 「それは駄目だ。酸素が無くなる」 初手ロケットの阿呆がそう言った。とは言え事実でもある

2020-09-25 23:09:32
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 17 実際ファスト・アンド・フュリオスのエキゾーストは、全力を出さずとも炎を吹き上げる。それはこんな狭い空間では危険な賭けになる 「どうして何時もお前は…」 はんちょ~は小言を言おうとして止めた。かせんが何かを見付けたようだ ライトに照らされた先には、文字があった

2020-09-25 23:14:39
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 18 「…この岩閉じし時、出ようとも叶わず。心清く身体健やかなるもののみ、この岩を開ける…」 そこに書かれた古文を読んだかせんは、ライトを消して考える 「心清く…つまり、僕やはんちょ~じゃ開けられない…」 「おい」 はんちょ~は突っ込んだが、何となく心当たりはある

2020-09-25 23:19:20
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 19 「…まぁ、確かに俺はあのスーツ野郎をボコしちまったかなぁ…」 はんちょ~は常々考えていた。スタンド使いにとってスタンドは第二の身体。そのスタンドを消えるまで殴ったのだ。もしかしたら、あのスタンド使いは― 「いや、あれは正当防衛だ。はんちょ~が悩む事はないよ」

2020-09-25 23:22:05
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 20 かせんはそう言って、はんちょ~の肩に手を置いた 「その点に関して言えば、そもそも海に行くって言った僕のせいだ」 「でもそれは」 くろぐだの為。そう続けようとした。が、何かに気付いたかせんが手を打って叫ぶ 「そっか!脱出は無理だ!」 「は!?」 はんちょ~は驚く

2020-09-25 23:25:09
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 21 「つまり、僕達は少なくとも何かを悔いている。って事は…」 「心清くない…ってか?」 はんちょ~の言葉を聞き、かせんは楽しげに笑う 「あはは、無理だ!」 「じゃお前どうする―」 ガッ はんちょ~が言い掛けた時。岩の方から何か大きな音がした 「だから、脱出は無理だ」

2020-09-25 23:29:54
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 22 そうかせんは言って、はんちょ~を連れて少し下がる ガッ 「だから、《開けてもらうんだ》よ。岩をね」 ガラッ 突然光が差し、二人を白く照らす。隙間が開いたのだ。そして声が聞こえる 「かせん先輩とはんちょ~先輩!下がって下さい!」 その言葉と共に、大鎚が岩を砕いた

2020-09-25 23:33:37
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 23 何とか脱出した二人は、リュックの水を飲んで一息ついた。くろぐだはトイレから帰ってきた後、二人が居ないことに気付いた。そして辺りを探して…岩の中から声を聞いたのだ 「あぁ、道理で」 かせんは頷く 「これが何で夜泣き石か分かった。閉じ込められた人の声なんだ」

2020-09-25 23:37:31
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 24 かせんの言葉に、二人も納得したように頷いた。そして、夜泣き石の方を見る 「…壊しちゃいましたけど…」 「う~ん…でもほら、閉じ込められる人も居なくなるから良いんじゃない?」 そんな事を言うかせんに、はんちょ~は突っ込んだ 「良かねぇよ」 夜。それは起こった

2020-09-25 23:40:33
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 25 バラバラになった夜泣き石が、ゆっくりと一つになったのだ。まるで逆再生の様に傷や隙間が消え、元あった所に戻ったのだ そして、辺りに誰かの声が響く。それは泣いているような、笑っているような…

2020-09-25 23:42:55
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 26 さて、夜泣き石。全国にあるそれは、様々な伝承がある このT市の夜泣き石も、何か不思議なモノであるようだね スタンドでも何でもない、良く分からない謎の力…それが夜泣き石だけとは限らない… …さぁ、今日はここまで

2020-09-25 23:46:43

第九話「死にたがりのラプソディー」

日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 第九話「死にたがりのラプソディー」 1 その女は、死に場所を探していた 力なんて要らない 痛くなく、且つ穏やかに死にたい ただ、それだけだった それだけの筈だった 女の生まれた家庭は、普通で平凡なものだった。特にこれと言った問題もなく、そして特徴もなかった

2020-09-26 23:21:25
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 2 女は、そんな生活を嫌だとは思わなかった。平均、平凡。それが女の全てであった。一つを除いて 初恋は、小学生の時。担任の先生であった。当然実ることは無く、次は中学生の同級生。しかし、思いを伝えることは出来なかった 女が好きになったのは、同性だったのだ

2020-09-26 23:29:34
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 3 そして暫くして、その事が女の回りで広まった。最初は、単なる疑いだった。だがその事はクラスメイトの間に広まり…迫害の理由に変わった たまたま、同性が好きだった。それだけの事なのに、それを理由に虐めが始まる。女は理解が出来ず…理解した時には、全て手遅れとなった

2020-09-26 23:36:17
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 4 最初に自殺を思い立ったのは何時だったか。それは未遂で終わる。しかし虐めは、更にヒートアップした。異物を排除する。それが集団心理の恐ろしい点だ。気付けば、学校で彼女の味方は居なくなった しかしそれでも、女は学校に行った。自分が「普通」であると思うために

2020-09-26 23:41:21
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 5 それが逆効果であると分かっていても、意地でも学校に行った そんな彼女に転機が訪れたのは、高校に進学してからだ 直ぐに広まる尾ひれの付いた噂の数々。直ぐに高校でも、女は排除対象になってしまう。が、一人だけ。そんな彼女に近付いて来た女が居た

2020-09-26 23:45:27
日向寺皐月 @satuki_hyugaji

#くろくだの奇妙な冒険 6 その女も、境遇は同じだった。しかし、一人ではなくなった。二人が付き合い始めたのは、出会って直ぐの事だった 回りが排除しようとすればする程、二人の中は深くなる。寝食を共にする回数も次第に増え、そして… だが。そんな二人に悲劇が訪れる。或いは、始まりと言うべきか

2020-09-26 23:51:45
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