ウェイティング・フォー・マイ・ニンジャ #4
バシダは闇雲に路地裏から路地裏へ走っていた。わけがわからない。どうしてしまったんだ。一体どうなったんだ。意識を失い、気がつけば今度は外、路地裏だ。激しい頭痛がバシダを苛み、再生される女性の悲鳴が繰り返しニューロンを焼く。次第に、仮定したくない仮定がモヤモヤと立ち上る。
2011-07-12 20:08:21もしや私は人を殺してしまった?悲鳴を上げたのは私の手にかかった犠牲者なのでは?そう考えれば返り血も説明がつく……バシダの心は乱れた。そんな事が私にできるのか?でも、この血は……途切れがちな記憶と時間……記憶……映像……!「いたわ!そこよ!」野太い声が飛んできた。バシダは凍りつく!
2011-07-12 20:13:21闇の中からバシダめがけて一直線に走って来るのは長身の……ニンジャ!そして若い娘だ。「観念なさい!」長身のニンジャが叫ぶ。そしてますますダッシュ速度を増す。娘のほうも同様だ!その目には殺気!「ア、アイエエエ!?アイエエエエエ!」バシダは悲鳴をあげる!
2011-07-12 20:19:07「グワーッ!」プロセッサーは横面にネザークイーンの蹴りを受け、吹き飛んで狭い道路を転がった!着地するネザークイーンの横をヤモトが駆け抜け、追いうちを仕掛けに行く!「イヤーッ!」プロセッサーは上体だけを起こし、両腕をクロスさせてヤモトのカカト落としをガード!
2011-07-12 20:27:05「アイエエエエエ!」血まみれのコートを着た妙齢の女性が狂ったように悲鳴を上げ、座り込む。ネザークイーンはニンジャ洞察力でコートの血が彼女のものでないことを読み取った。返り血?少なくともこの女性に深刻な負傷は無いのだ。
2011-07-12 20:29:21「アータ節操無さすぎるわ!」ネザークイーンはプロセッサーに叫んだ。「さっき逃げてから五分も経ってないじゃないの!このケダモノ!」そして女性に屈み込む。「ダメよ、こんな時間にウロウロしたら。アタシ達が居合わせなかったらアータ、後ろから狙ってたあのケダモノに……」「アイエエエ!」
2011-07-12 20:33:52ネザークイーンは目を白黒させて耳を押さえた。「ま、とにかく……」立ち上がり、素早くアイサツした。「ドーモ、ネザークイーンです。安心する事ね。アタシは取って喰ったりしないわ、オンナはね」「ド……ドーモ」女性は震えながら返す。「バシダです……」
2011-07-12 20:38:46ネザークイーンの視線の先でヤモトと格闘する凶悪なニンジャに気づいた時、バシダは一際強く絶叫した。「アイエエエエ!アイエエエエエ!アイエエエエエ!嫌!嫌ァー!」「ちょっと!」ネザークイーンは膝をつき、バシダを落ち着かせる。「コワイ!コワイ!あいつ!あいつが!あいつなんだ!アーッ!」
2011-07-12 20:48:34ネザークイーンは推察した。この返り血、どこか上の空だった佇まい。そしてプロセッサーを目撃して、この反応。強烈なストレスにさらされ、ニューロンにトラウマ的なダメージを受けたのだ。犯行の場に居合わせたか、それに近い何か。受け止めきれない事象を前に現実から乖離したようになるケースだ。
2011-07-12 20:52:55「参ったわね……ヤモト=サン!まだやれる?」「やれる!」ヤモトがネザークイーンに叫び返した。彼女は今やプロセッサーのマウントポジションを取っている。「イヤーッ!」「イヤーッ!バァーハハハハ!」ヤモトが繰り出すパウンドをプロセッサーが防御!その応酬!
2011-07-12 20:55:43「いいわ」ネザークイーンは呟き、懐からザゼン・ピルを取り出す。強力な鎮静剤だ。「嫌ァー!嫌ァー!悲鳴が!あいつが殺した!あいつなの!助けて!」叫び続けるバシダにザゼン・ピルを飲ませ、飲み込ませる。すぐにバシダの目はどんよりと曇り、暴れるのをやめた。「ごめんなさいね」
2011-07-12 20:59:58「イヤーッ!」ヤモトのパウンド!「バァーハハハハ!」プロセッサーは防御をやめた。ニンジャソウルを帯びた拳がプロセッサーの鼻面を殴りつける!「グワーッバァーハハハハ!」ヤモトはさらに殴りに行く、だがこれはいけない!あえてプロセッサーはパウンドを受けたのだ、攻撃準備のために!
2011-07-12 21:04:07シュイーム!プロセッサーのなんらかの操作により、右手首に接続された不気味な鉤爪が回転を始める!ゴウランガ!まるでそれは名が体をあらわすがごとし!フードプロセッサーめいたミキサー回転である!このブレードは危険!「バァーハハハハ!イヤーッ!」
2011-07-12 21:09:23「ンアーッ!?」アブナイ!ヤモトは瞬時にバック転してマウントポジションを解除!そのニンジャ反射神経が至らずば、今ごろプロセッサーの回転ブレードはヤモトのハラワタを切り裂いていたであろう……オイラン犠牲者のように!「バハーッ!」
2011-07-12 21:20:09「イヤーッ!」起き上がったプロセッサーへ、ネザークイーンが電撃的なチョップを繰り出す!「バーハハハ!イヤーッ!」プロセッサーは仰け反ってチョップをかわしつつ、ミキサー回転ブレードで反撃!危険な刃がネザークイーンの鍛え上げた腹筋をかすめる!「グワーッ!」
2011-07-12 21:30:57隙をついたプロセッサーは左手でフラッシュパンを取り出す。「邪魔ばかり!」地面に叩きつける!「しやがって!」スマック!閃光が迸りネザークイーンとヤモトの目をくらます!「悪いが、せっかく手に入れた力!まだまだオイランを殺すぜ!殺しまくってやるぜ!ニンジャ、イラナイ!オタッシャデー!」
2011-07-12 21:39:58「イヤーッ!」「何だお前グワーッ!」プロセッサーの悲鳴である!ネザークイーンは目くらましにもがきながら叫ぶ。「ザッケンナコラー!ちょっと!何よ!?何が?」
2011-07-12 22:01:29ネザークイーンのニンジャ自律神経がすぐに視界をリカバリーしてゆく。まず映ったのはカエルめいてブザマに仰向けで倒れるプロセッサー。そこへツカツカと近づく足先。そして赤黒のニンジャ装束……
2011-07-12 22:06:04「何だこりゃあ?」その後ろからうるさく喋りながら歩いて来る、もう一人の……これもニンジャ。「ニンジャ、ニンジャ、ニンジャが一杯だ!ネオサイタマってのは、こうなのかい?」「い、いきなり何をしやがる!」プロセッサーは後ずさりしながら言う。赤黒のニンジャはそれを見下ろす。
2011-07-12 22:11:21「状況判断だ」赤黒のニンジャは冷たく言い放った。「オヌシの下劣な独白は路地の角のそのまた角から充分届いておる」そしてコンマ一秒でネザークイーン、ヤモト、バシダ、プロセッサーへ視線を走らせ、アイサツした。「ドーモ皆さん。ニンジャスレイヤーです」
2011-07-12 22:20:32「ドーモ、シルバーキーです」痩せたニンジャが進み出てアイサツした。「そっちの若いお嬢さんもニンジャか」「ドーモ、ヤモト・コキです」ヤモトはアイサツを返す。「ニンジャスレイヤー=サン……!?」
2011-07-12 22:49:19「あの時はドーモ」ニンジャスレイヤーは再オジギした。同時にプロセッサーを殺気で威圧し、挨拶を無視した逃走は許さない。プロセッサーはバック転して壁を背にした位置に立ち、オジギした。「ドーモ。プロセッサーです。ニンジャスレイヤーだと……?」
2011-07-12 22:54:25