ギガベース日誌 ACT08「PHANTASMA BEING」05

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「こちら長門！サラトガと人型部分の一部が、他の残骸の塊から分離した！！艦首に艦娘が見えたぞ！！」 「分離したユニットがPAを再展開しています！！」 「艦娘だとっ！？……嗚呼、そうか、そうかそうか、そうだ！！畜生、そんな手がぁっ！！」　#ギガベース日誌

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長門の報告を艦橋で聞いたエミールは、文字通り頭を抱え床に倒れ込んだ。 「一人で発狂してねえで説明しろやおっさん！」 「効かない、効かないんだ。私と大宮が書き上げたあのプログラムは、艦娘には効かない！！」　#ギガベース日誌

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「深海棲艦の自我とは、即ち彼らが観測し、回収した情報から自然に生じるものなんだ！私はそれをバラバラに裁断して、参照元の情報にノイズを紛れ込ませた！！レコードに傷を入れたようなものだ！だが、嗚呼、クソ、クソっ！！何故こんな事に気付かなかった！！」　#ギガベース日誌

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「あの船体の操縦者が艦娘に成り代わったなら！！艦娘の自我に悪性情報は効かない！！情報の種別が同系統なんだ！！！」 「海防艦にもわかるように言え！！！」 「蛇が自らの毒では死なないのと同じだ！！」　#ギガベース日誌

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「深海棲艦が回収した情報の出力物たる『妖精』！！それが、蓄えた情報を脚色し、改竄して作り上げた『艦娘』の自我に、あの情報が効くわけないだろっ！！！」　#ギガベース日誌

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「なっ……」 喉を裂くような絶叫と共に吐き出されたエミールの言葉。 『妖精が深海棲艦の出力物である』という彼の言葉を聞き、動揺しない艦娘はいなかった。 「おい、大宮！！さっきから黙りこくってるが、このおっさんが適当こいてるだけって認識でいいよなぁ？！」　#ギガベース日誌

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「……撤退を、進言します」 「大宮、貴様」 「この老人は耄碌してはいません。こいつが今吐き出した言葉は、表現こそ適切でないとはいえ、全て事実です。恐らく、もうあの敵に対して、OCリバイサーは効果を発揮しないでしょう」　#ギガベース日誌

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「……説明する気はあるのか」 「ありますが、長話になりますよ。聞きながら振り切れる相手とは思えませんがね」 「ばっきゃろう！！効かねえなら効かないで、通常火力でぶっ壊せばいいだけの話だろうが！！」　#ギガベース日誌

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そう叫び返した天霧の身体は、既に海上を滑り出した敵艦へ向け突撃していた。 「当たりゃ殺せる相手だって、さっき見てわかったんでなぁ！！」 サラトガの甲板から艦載機が飛び立つ。猛禽のように天霧を狙う爆撃機ドーントレスに向け、対空射撃が炸裂する。　#ギガベース日誌

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発艦した艦載機の注意を天霧が引き付けた事を確認し、残る艦娘も攻勢に転じた。 エミールと大宮の暴露は少なくない衝撃を齎した。それでも、此処は戦場だ。 この海にある彼らにとって、戦いに優先する事象は無い。　#ギガベース日誌

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サラトガの船体は、コジマ技術に支えられたギガベースの艦娘と比較して機動性に劣る。それでも、水上艦であることを忘れさせるような速度で海上を駆け巡り、艦載機と副砲による立体攻撃で広範囲に致死領域を形成する。　#ギガベース日誌

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「通常モデルばっかか……張り合い甲斐のねぇ！！」 猪突猛進を体現する天霧の戦闘は、それに精密機械めいた動作の極みを織り交ぜられ、寄せくる艦載機を叩き落としていく。 上空を飛び回る艦載機は、艦娘用の一般型。天霧を抑えるには不十分が過ぎた。　#ギガベース日誌

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止まることを知らぬ悪鬼へ向け注がれる攻撃は、海面もしくはPAを叩くに留まり消える。 しかし、離乳食のような攻撃の中に織り交ぜられたそれを、天霧は自らの背後に感じた。 「新型……うおあっ？！」　#ギガベース日誌

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AL/MI作戦以降、広く深海棲艦が用いた球状の艦載機。 既存の艦娘用航空機を鼻で笑うような性能を発揮したそれらに似た球状でありながら、対象的な漆黒の装甲に包まれた艦載機。 ソルディオスに赤子の手足と翼を生やしたようなそれは、下品に垂らした舌を見せつけて笑っていた。　#ギガベース日誌

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新型艦載機達は衝突も厭わないような埒外のマニューバを繰り返し、天霧の周囲に手に持った魚雷を次々と投下する。 近接信管で炸裂した魚雷が撒き散らす粒子光に、天霧の口角が上がった。 「コジマ魚雷……はは、はははっ！！」　#ギガベース日誌

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「良いねぇ良いねぇ！！あの男とてめえら、どっちが根性あるか見極めてやらぁ！！」 高濃度粒子に晒され、減衰していく天霧のPA。気は熟したと言わんばかりに殺到するドーントレスの爆撃が、周囲の海面を砕いていく。　#ギガベース日誌

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反転からのOB。身体を引き裂くような側面への連続QB。暗躍の日々で培った技術が、降り注ぐ災禍と天霧を対等の立場に留め続ける。 砲戦火力に長けた長門達は、既に天霧の意を理解しサラトガを追い立てている。この状態を継続すれば。　#ギガベース日誌

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そんな天霧の思惑を断つ光が、空中で同時に弾けた。 フラッシュロケット。視界を一時的に奪う閃光は、新型艦載機が連携して放ったものだ。 「んのクソっ……があぁあっ！？？！」　#ギガベース日誌

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右腕に走る激痛。 視界が回復するまでの一瞬を狙い襲来した一機が、その口蓋に生え揃う牙を天霧の細く引き締まった腕に突き立てたのだ。 引き裂かれる体組織。伝う駆動液を押し出すように、どす黒い深海棲艦化励起物質が注がれた。　#ギガベース日誌

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「ごっ、ア、てめっ……」 書き換えられていく天霧の心身。全ての主導権を奪われる直前、天霧は未だ艦娘のままである左腕に命令を下した。 連装砲を右肩に押し当て、引き金を引く。 爆風に包まれる天霧の上半身。　#ギガベース日誌

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オーメル本社海域を生き残った艦娘の戦闘データは、その全てがサイセターに引き継がれている。 深海棲艦化を励起する敵の攻撃に対する究極的な対処方法。泊地水鬼との戦闘で軽巡神通が実践した、被弾部位の強制的な切除を、天霧は真似たのだ。　#ギガベース日誌

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「ひっははははははははははぁぁぁァアァ！！！今のはちょっと股座に来たぜ、カラス共よぉ！！」 天霧は笑い、戦い続ける。爆風の中から飛び出した顔は痛々しく爛れ、血潮と歓びに濡れていた。 侵蝕は止まっている。天霧はまだ、天霧のままだ。　#ギガベース日誌

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天霧と新型艦載機の戦闘の激化は、サラトガを追い立てる長門達を一挙に数的有利に導いた。 「よく見ればいい女じゃないか。死ぬとこ見せろっ！！近くでっ！！」 「貴女は……嗚呼、長門"の"……」　#ギガベース日誌

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「のってなんだ、のって！！」 「出力体。貴女だけじゃない。他も、私も」 ギガベースの艦娘のPAの減衰を狙い、その巨体で海水を巻き上げながら水上をドリフト移動するサラトガ。飛沫の向こうから飛来した弾丸が長門のヘッドギアを叩く。　#ギガベース日誌

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「艦娘の意思は、深海棲艦の出力物に過ぎない。情報という金型から産まれた成形品。無意味なんですよ、過去の再現でしかない私達に、今を生きる意味なんて無い」 交わされる砲撃が互いのPAに阻まれ炸裂する。三式弾の発射と同時に、長門はOBを起動した。　#ギガベース日誌