柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『何が利休に起こったか』

これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです
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前話
『第三話 百手のマサ対悪夢堂轟轟丸』

まとめ 柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『第三話 百手のマサ対悪夢堂轟轟丸』 これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです 646 pv

柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『何が利休に起こったか』

2020-11-24 18:03:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「グワアアアアアアアアアアアア!!!!」 利休は目を覚ました。  体が動かない。息ができない。混乱と苦痛の中で数分、あるいは数時間、あるいは数日が過ぎ、利休はようやく己を取り戻した。 体が動かないのは当然だった。己の体は無かったからだ。 1

2020-11-24 18:08:20
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息が苦しいのは当然だった。己の首は、水槽に浮かんでいたからだ。首は大小様々な管に繋がれていた。 状況はわかったが、事情は思い出せなかった。まず浮かんだ疑問は、『誰が』、次に『なぜ』だった。己を、殺しもせずにわざわざこのような目に遭わせているのは何者か。それはなぜか。 2

2020-11-24 18:13:21
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全ての記憶がおぼろげであった。 唯一動く目で辺りを見回す。部屋そのものはかなり広いが、見たこともない器具や機械がそこかしこにぎっしりと詰め込まれており、窮屈極まりない。外からの光は入っておらず、ろうそくの光だけが部屋を照らしている。 3

2020-11-24 18:18:20
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首に繋がれた管は複雑に絡み合い様々な機構を経由して、部屋の中央にある巨大な算盤に到達していた。算盤には別の部屋からと思しき蒸気が金属管で運ばれ、珠を自動的に上下させている。足音。部屋の扉が開いた。利休は反射的に目を閉じ、意識の回復を隠した。 4

2020-11-24 18:23:21
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「相変わらず忌々しい部屋じゃ」「宗匠殿もこうなっては哀れよのう」二人組の男の声だ。 5

2020-11-24 18:28:20
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「お主、利休番は今夜が初めてだったのう。ま、勤め自体は簡単じゃ。そこの小さな碁盤に、答えを得たい内容を打ち込む。すると宗匠の脳とあのデカい蒸気仕掛けの算盤が組み合わさって、その答えが弾き出されるという仕組みじゃ」「おぞましい仕掛けじゃのう」 6

2020-11-24 18:33:22
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「碁盤への打ち込みの規則さえ理解すれば簡単な勤めじゃ。ま、おいおい覚えていくがよい」「おお、試しに一つ教えてくれ」「そうじゃのう・・・では、ここ江戸から大阪に大砲を撃ちたいとする」「なんと、大阪に!?」 7

2020-11-24 18:38:19
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「物の例えじゃ。その場合にどのような大砲を拵えたらよいか、どれだけの火薬がいるか、どのような角度で撃てばよいかを確かめたい」「ふむ」 「しからばこのように、適切な設定で問いを打ち込んでやると…」何を―瞬間、利休の頭に言葉が流れ込んでくる。 8

2020-11-24 18:43:20
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『ピピピ…火薬は310kg、角度は55°、必要な砲身の長さは48.3m、口径は530mmです…』(訳注:劇中の日本では実際は尺貫法が用いられているが、明瞭さのため作内では単位はキログラム・センチメートル法に統一している) 「おお、首が喋ったぞ、面妖な」 9

2020-11-24 18:48:15
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「これが先ほどの答えだ。間違いは無い…問いさえ正しければな」 「なるほど…どのような問いでもこれは答えられるのかな。例えば生命、宇宙、そして万物についての究極の答えも…」 10

2020-11-24 18:53:22
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「いいか、絶対に、そんな考えは二度と持つなよ。前にその問いをした奴がどんな目にあったか知りたくはあるまい…ちなみに答えは42だ」 そして利休の意識は再び薄れた。二人組の男は利休の目覚めにも眠りに気づくことがなかった。 11

2020-11-24 18:58:20
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夢を見ていた。過去の夢。過ぎ去りし日々の夢。「詫庵」と書かれた小さな茶室。在りし日の利休、当代一の茶人、千利休はその奥に座っていた。 13

2020-11-24 19:08:17
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

そこに一人の男が入ってくる。身に付けているものはいずれも一流の代物ばかりだが、その男の発散するどことなく気の抜けた、あるいは剽げた雰囲気が、それらから虚飾の臭みを抜き、飄々とした風情でまとめている。 「ご無沙汰申し訳ござらぬ宗匠。最近は江戸での勤めが滅法忙しく…」 14

2020-11-24 19:13:21
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男は利休に丁重に頭を下げた。「宗匠はやめてください、古田様」利休はより深く頭を下げる。「天下一の茶人は古田様。私は死んだ身なれば」 15

2020-11-24 19:18:20
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もう一人の男…古田織部は丁重ながらも、胡散臭げな笑みを崩さず言葉を返す。織田・豊臣・徳川の世において、茶の湯を通じて天下に莫大な影響を及ぼす数寄大名である。 16

2020-11-24 19:23:21
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「なんの、某など宗匠の穴埋めに過ぎぬ未熟者…いつまで経っても某にとって宗匠は宗匠でござるよ。それより、この辺りの住み心地はいかがかな」 「太閤様から切腹を申し付けられた私を密かにお匿いいただき、住処から何から何まで…何とお礼を申し上げてよいかもわかりませぬ」 17

2020-11-24 19:28:15
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織部は一笑して利休の改まった礼を受け流す。「いやいや何も大したことなど!某も形だけなら数寄の頂点に収まれ、おかげさまで金子には全く苦労しませぬで!ゲヒヒヒ!」 18

2020-11-24 19:33:23
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古田の笑いに釣られて、利休も笑う。この男はいくら下卑た振る舞いをしても、どこか爽やかさを常に残しており、それが利休はたまらなく好きだった。間を置いて、織部が続ける。 19

2020-11-24 19:38:14
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「礼ならば、我々の下手な芝居に見て見ぬふりをしてくださった太閤殿下にこそ言わねばなりますまいな。殿下も腹の底では、宗匠を死なせたくなかったのでしょうとも」笑みは崩れていないが、その目は僅かに寂しげだ。利休も目を伏して答える。 20

2020-11-24 19:43:20
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「まことに…太閤様とは色々とありましたが、最後にもう一言だけでもお話ししたかった…」少しの沈黙。「さて」織部が切り出した。先ほどまでとは打って変わって油断のない表情である。 21

2020-11-24 19:48:18
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「やはり大方の読み通り、上様…秀忠様は大阪方を討つ腹のようにござる。大御所様(訳注:家康のこと)の腹は読めぬ。あのお方のことであるから、いずれに転んでも良いように備えておられるはずだが、本音は分かりませぬ」「このままであれば、やはり戦は避けられませぬか…」利休が答えた。 22

2020-11-24 19:53:21
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「そこで、我々の出番にござる」織部が再び、ニタリと笑った。 「徳川、豊臣の和平を立たせ、京阪を中心に自由な「公界」を築く。かぶき者、いくさ人、道々の輩、そして我々数寄ムジナにとって徳川の世は流石に窮屈すぎますからな」 23

2020-11-24 19:58:20
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「私は太閤様とは、最後まで好みが合わず…あの方の派手好きにはなんど辟易させられたかわかりませぬ」利休が茶を置いた。「が、それでも秀忠様の求めるものは、私の目指した侘びの静謐ではありませぬ。あれは単なる人を縛りつける窮屈さ。古田様、私は何をすればよろしいでしょうか」 24

2020-11-24 20:03:23