柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! 『何が利休に起こったか』

これはアロハ天狗によるSFパルプアクション剣豪エンタメ・マーダーパンク小説「柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のtwitter再放送ログです
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柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

真空管はマイクロ集積回路へと変わり、利休の脳の秒ごとの計算量も跳ね上がり、その頭脳は更に大きく肥大し、首だけでありながら10m近いサイズへと成長していた。それら事実のいずれも、利休にとっては全くどうでもよかった。「柳生…滅ぼしてくれるッ!一族郎党皆殺しぞッ!」 51

2020-11-25 19:08:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

利休は怒り狂い続けた。身体があれば暴れることもできたであろう。それもできぬ利休には怒り狂うしかなかった。怒り、怒り、怒りが更なる怒りを呼び、行き場の無い怒りは渦のように膨れ上がり…そして、利休を包むカプセルの外、研究机の上に置かれたペンが、ほんの僅か、微かに震えた。 52

2020-11-25 19:13:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

古今どの歴史書を紐解いても、千利休にサイコ・パワーの才があったと伝える記述は無い。しかし、最も恐ろしいのは才なきものの執念である。利休の果てしなき憤怒と、異常発達した脳髄が零を一にした。その一を百に、千に膨らませるのは…鍛錬である。 54

2020-11-25 19:23:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

十分に成長肥大した利休の脳髄を以てしては、絶え間なく柳生総本部から送られてくる「細菌兵器の塩基配列分析」「機動要塞の構造設計」「北辰一刀流の剣道計算」などの要求に対しても、脳の10%程度の稼働で十分であった。 55

2020-11-25 19:28:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

残りの90%で利休はひたすら怒り狂い、念動の力を鍛え続けた。泰平の闘争に慣れきった柳生研究員たちは、利休の覚醒を気づくことはなかった。 ペンの微かな震えは、明確な動きに変わり、そして持ち上がるようになった。少しずつ重たいものを、少しずつ早く、少しずつ正確に。 56

2020-11-25 19:33:22
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

朝も夕もなく怒り狂い続ける利休にとって、常時が稽古の時であった。やがて、利休が目覚めてから、数十年の時が経った。 相変わらず雑然とした、利休の設置された電脳算室。そこに、竜巻が生じた。 57

2020-11-25 19:38:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

書類の山、埃、乾いた握り飯、筆記具、椅子、その他もろもろが粉々に粉砕されながら渦を巻き、室内中の配線が尽くブチブチと千切れる。次の瞬間、それらの狂騒の一切合切がピタ、と静止するや、全てが巻き戻る。配線は繋ぎ直され、砕けた椅子や机は繋ぎ戻される。 58

2020-11-25 19:43:14
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最後の埃の一粒が元の位置に収まり、ここで利休は初めて満足げな笑みを浮かべた。サイコ・パワーはここまで成長した。 59

2020-11-25 19:48:18
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そしてある日、その男がやってきた。 「殿、こちらは殿が直々にお越しになるような場所ではございませぬ!」「結果は手前どもがお持ち致します故、殿は何卒、奥の院でお寛ぎください」「構わぬ」研究員たちの静止を男が振り切る。「奴の口から直接語られるところが見たい」 61

2020-11-25 19:58:20
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柳生の頭領、日の本を支配する昏き日輪、柳生宗矩であった。その相貌はモザイクに包まれて見ることが出来ない。我々読者に限らず、その場にいる全員にもそれは同じだ。 62

2020-11-25 20:03:19
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宗矩の剣気が、その場にいる、利休すら含む全ての人間の視神経シナプスの一部のみを強制切断し、その姿を視認すること叶わなくしているのだ。これが柳生新陰流奥義『朧叢雲』である。 「あと数分で構造解析は終わります」研究員の一人が宗矩に語りかける。「左様か」 63

2020-11-25 20:08:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

宗矩が懐から、七色に光る結晶体を取り出す。「ヤギュニウムの複製…わが生涯の悲願よ。これの量産なれば、時空特異点を完全に塞ぐことが成る。さすれば、柳生の世は永遠となる」 宗矩は利休カプセルの前のコンソールに触れた。『ヤギュニウム 解析完了』と草書体が表示される。 64

2020-11-25 20:13:18
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「さあ、語れ、利休よ!ヤギュニウムの秘密を!」利休の口が開かれる。宗矩の顔が歓喜に歪む。「ヤギュニウムの…秘密は」利休の目が開かれた。「貴様が知ることはないぞ、宗矩!!」 サイコ・ブラストが瞬間的に発生した。 65

2020-11-25 20:18:20
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利休を中心に破壊の衝撃波が周囲に広がる。数年かけて利休がオーバーチャージし続けてきた精神念動波は、室内の全てのものを粉砕し、油断していた宗矩すらも吹き飛ばした。周囲の一般研究武士に至っては瞬時にミンチ肉と化して壁に張り付いている。 66

2020-11-25 20:23:18
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「貴様…利休…!いつから…目覚めていたか…!その力…!」 宗矩の手から離れたヤギュニウムを、宙に浮く利休がサイコキネシスで引き寄せる。「渡さぬ!」宗矩が咄嗟に短刀を投げ、それを妨害する。が、利休の方が一手早かった。利休がヤギュニウムを呑み込む。 67

2020-11-25 20:28:16
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「おお、流れ込む!これが…この力が…!」利休の表皮が極彩色に発光を始める。「貴様ァァァァァァァ!」体勢を戻した宗矩が利休に斬りかかる。利休の顔に深い傷が入る。利休も念動力で応戦するが、宗矩は剣気でそれを弾く! 68

2020-11-25 20:33:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「あの衝撃波…流石に二度は放てぬようだな。どれだけ力を溜めての一撃だ?数月か、それとも数年か」宗矩が構えた。とどめの構えだった。 「左様、そうそうは放てぬ…故に…」利休の後ろに空間ポータルが開いた。ヤギュニウムによる空間制御能力であった。 69

2020-11-25 20:38:19
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

「逃げるわ。再び力を貯めるまでな」利休の首がポータルに転がり込んだ。 地下研究施設から垂直に上方500m、柳生本邸の上に開いたポータルから利休が現れた。「世話になったな柳生屋敷!これは宿銭替わりじゃ、釣りはいらぬぞ!」 70

2020-11-25 20:43:18
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

念動力で庭石を持ち上げると、次々と屋敷の上から落としていく。屋敷が粉砕され、巻き込まれた若侍や使用人たちが次々と下敷きになる! 「この程度なら力を溜めずともできるでのう!ハハハ!さらばじゃ!また会おう宗矩!」再び開いたポータルを通って、利休が消える。 71

2020-11-25 20:48:20
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

時同じくして、辺り一帯の大地を地響きが震わせた。地下の研究室から響く、宗矩の怒声であった。 72

2020-11-25 20:53:21
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

かくしてー利休の首は解き放たれることとなった。 だが、その頭脳と精神を極限に肥大化させた稀代の天才にとって、わずか『千』の一字ではとても足りない! その脳にすら収まらぬ程の怒りの爆発を表すに、黒の一色ではもはや足りない! 「わしは…わしは…わしは、二兆億利休だ!!」 74

2020-11-25 21:03:17
柳生十兵衛がやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ! / YYYYY @YYYYY_revival

柳生歴37564年!七色の極彩色に発光する飛び生首、憤怒するサイキック・ゴルゴン、二兆億利休、ここに爆誕!!!町田を根城に滅柳生への気炎をあげる! これより柳生一族との戦い数百年間におよぶ そして!!

2020-11-25 21:08:20