「天皇機関説」の美濃部達吉は断じて「学匪」ではない

美濃部博士の戦前、戦後の言説から抜粋。 終始一貫して、学問に対して誠実な、立派な人物だったことが分かる。
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「天皇機関説」というと戦前にありながら現憲法のような民主主義を標榜していたのかと思われがちですが、
美濃部博士は「民主主義」ということは断じて否定しています。
また、戦後には日本国憲法に対して国体変革であるとして、
断固反対しました。

博士の戦前・戦後の言説を紹介します。

ふぐば🐽 @Fuguba

美濃部は『憲法撮要』で、民主主義とは共和制とほぼ同義の意味で使われている旨、君主制・共和制は立憲主義のこんにちでは形式的で些か曖昧になることは認めつつも、一般的に言って、立憲君主制が君主国であることは疑いないと述べた

2020-08-06 00:51:42
ふぐば🐽 @Fuguba

民主主義≒共和制と言われれると、さすがに日本共和国は怖気が走るな。そもそもの問題としてWe, the Japanese Peopleという一文目から怖気が走るのだけれども

2020-08-06 00:55:28
ふぐば🐽 @Fuguba

また『憲法撮要』で、君主の本質とは、他の国家機関を代表するのでもなく、他の機関に委任されたのでもなく、原始的直接機関としてその地位にあるということを述べた。議会と君主の権能分配は国により様々であるが、その権能がいかに制限されようとも、それが君主政の国ということである

2020-08-06 01:15:56
ふぐば🐽 @Fuguba

共和制の国でも、独裁制の大統領のような直接機関は存在するが、それは直接または間接に国民から選挙されたもので、国民を代表する機関であって、原始的の機関でないことから、君主とは異なることを述べた

2020-08-06 01:17:24
ふぐば🐽 @Fuguba

つまり、立憲君主国と独裁的大統領でいったら、独裁の度合いは後者の方が大きいが、それは政体ということとは別問題であり、君主国というのは、原始的機関であることにある

2020-08-06 01:20:02
ふぐば🐽 @Fuguba

……余談だが、ふぐば思うに、この「機関」とか「原始的」という言葉が普通の日本語の意味で読むと少し乱暴に聞こえてしまうのかもしれない

2020-08-06 01:21:06
ふぐば🐽 @Fuguba

なお、『憲法撮要』は国立国会図書館デジタルコレクションに収蔵されており、誰でも読むことができる。だいぶ要約してしまったため、出展を示す。上記は主に、第1章第5節「政體」を参考にして要点と思うところを抜粋した dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2020-08-06 01:29:37
ふぐば🐽 @Fuguba

君主国に於ける民主主義的体制のことを述べる際には、「立憲政体」という語を用いるのが正確だろう。 美濃部はこれを、 近代民主政と立憲君主制に通じる概念であり、国民が国政を決定または少なくとも参與し、専制から解放された自由平等が保障された制度だと述べる

2020-08-06 01:38:37
ふぐば🐽 @Fuguba

「主権」が必ず国民に属すとすることを近代民主政の根本思想とするのは国家契約説に起源を有するが、これは正当の見解ではない。主権は国家それ自身が統治権の主体であって、その中で主権者の地位は各国の歴史と国民と文化による。国民主権は必然の思想ではなく、民主政の国にのみ当てはまる

2020-08-06 01:42:50
ふぐば🐽 @Fuguba

君主政・民主政に共通しているのは、国民主権説ではなく、国民自治の精神と、自由平等主義の思想である。そしてその実現のため、権力分立と法治主義とが要求される

2020-08-06 01:50:01
ふぐば🐽 @Fuguba

……上記美濃部の言説に照らしても、ここに記載した「議会専制主義」が立憲政体に反するということは確実だろう。現状の我が国は権力分立も法治主義も行き届いていない、野蛮国である。自由平等の精神も全く達成されていない。目指してもいない twitter.com/Fuguba/status/…

2020-08-06 01:53:51
ふぐば🐽 @Fuguba

"実は、1991年のタイ軍事クーデターのスローガンの一つは議会専制主義(パーラメンタリー・ディクテーターシップ)を排除するというものであった。昨今の先進諸国のインテリならば、「タイには民主主義がまだ定着していないから」の一言で片づけてしまうであろうが、民主主義の根源、……

2020-08-06 00:25:25

以下、新憲法制定後の博士の著書から紹介します。

ふぐば🐽 @Fuguba

『新憲法逐条解説』美濃部達吉 著 国立国会図書館デジタルコレクション dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid…

2020-09-29 03:50:09
ふぐば🐽 @Fuguba

過日は、清水澄博士の戦前の著書に触れ、その赤誠と学術的態度の立派だったこと、節を曲げることなく大義に殉じられたことを見て行った。さて、清水博士は文字通り殉じてしまわれたため、新憲法に対する逐条的な見解は最早冥界にて伺う他ない。では戦後ほかの憲法学者はどのように見たか

2020-09-29 03:55:35
ふぐば🐽 @Fuguba

そして戦前戦後に触れるのに宮澤俊義は避けて通れないどころか、戦後体制とは宮澤とともにあると言って過言ではない。宮澤の直接の師匠に当たる美濃部博士は立派な学者であった。なぜこの弟子にして宮澤という大悪魔が誕生してしまったのか。師美濃部と宮澤の訣別、宮澤の変節を追ってみたい

2020-09-29 03:57:53
ふぐば🐽 @Fuguba

美濃部の戦前の著書は数冊ほどであるが見たため、戦後の美濃部の著書を探してみようかと思う

2020-09-29 03:58:41
ふぐば🐽 @Fuguba

この著書を読むにあたって、占領ただ中の昭和22年の出版物であることに留意しなければならない。文中「これが正しいかどうかは別として、コレコレの理念に基づくのである」といった本意には背くものの新憲法はこういうものである、と非常に胸中複雑なものを感じる

2020-09-29 04:05:48
ふぐば🐽 @Fuguba

自衛としての戦争を保有しない国家というのは国家としての自存を失ったのであるが、これは満洲~太平洋戦争敗戦の結果として自ら招来した不幸と観念するほかない。敗戦国であり独立性を失い、諸国の公正と信義に委ねる他なきに至った。せめて国防の力を将来建設に傾けられる、と、期待することはできる pic.twitter.com/VElIA9UBNt

2020-09-29 04:46:26
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ふぐば🐽 @Fuguba

以下、『新憲法逐条解説』より。 帝国憲法73條による改正とは全部への改正を想定しているものではない。純正なる欽定憲法が民定憲法になるためには、新憲法の前に主権が国民に与えられていなければ、民定たり得ない。新憲法は帝国憲法の手続きにより改正されたと解すべきでなく、帝国憲法では違憲で pic.twitter.com/GWxtb56LjT

2020-09-29 05:04:04
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ふぐば🐽 @Fuguba

あるに拘らずポツダム宣言受諾・敗戦の結果主権を取得した国民が独立にこれを制定した。帝国憲法における適法の行為でなくして、憲法を超越し破壊する革命的行為であった。

2020-09-29 05:08:34
ふぐば🐽 @Fuguba

序文にも同様の趣旨が述べられている。新憲法は形式上73條に依ったとされているが内実は根底から変革。手続き上正当かは「頗る疑わしい」。新憲法の上諭に「定まるに至ったことを深くよろこび」とあるのも、議決により決定された意味である pic.twitter.com/WKc3IvdMe5

2020-09-29 05:16:43
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帝国憲法に定められた改憲の要件を満たしておらず、国体変革であるとして、占領下の出版でありながら言の内外に反対の立場を表明しています。

ふぐば🐽 @Fuguba

🐡註: ところで美濃部の記述中、憲法改正についても議会の「協賛」という表現がみられる。これは過日拝読した清水の著書とは異なり、やや正確を欠くように思われる。憲法は一般の法律と違って議会の「議に付す」のである。純然たる欽定憲法で、「付す」とは賛否をも問わないとハッキリ述べている

2020-09-29 05:19:44