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別にそうでもなかった。 そもそも好きだったのは義理の両親であり歌は終始別段好きではなかったし、彼女たちが海の果てへと去っていった後はほんとにふよふよ漂っていただけだ。 あの時歌を聴いてわざわざ海面へ上がったのは、似ていたから。
2021-01-17 18:03:31いつか聴いた懐かしい歌。 並ぶ星より響き昏き海の底から呼ぶような、不思議な歌に。 その声は上半身が魚介類の両親の歌よりもっと似ていた。 結局そのものではなかったし、天使の肉で新生した今もまだその歌に辿り着いてはいない。
2021-01-17 18:17:19ただ、彼女本人が気にしてないだけで謎はいくらでも残っている。 そもそも生まれる前に死んだ水子霊がどこで「歌」を聴いたのか? それは「歌」だったのか? 何故水子霊がまるで命のように育ったのか?
2021-01-17 18:29:02「おいジンロウ」 「…?」 「ほら、今の俺はあれこれあって今こう、かなり天使っぽいだろ?…どうだ?」 「…??」 「だ、だからさほら、俺みたいな女は歴代みんな男探すのに苦労してんだよ!だから、な!?」
2021-01-17 18:43:16「…???」 「…あー、いや、いい。忘れろ。…そうだよな、お前にとって「俺」は、イルラって名前と白衣と、この口調ってだけの人間だもんな」 「…イルラ?」
2021-01-17 19:01:37「んだようるせぇな!人間と違って見分けのつく連中と遊んでりゃいいだろ!どうせ聞かれなかったからって秘密の因縁とかいくらでもあるんだろ!ルフあたりとかによ!エルフだもんな!」 「イルラ。オレ、イルラはずっと前から見分けられたけど」
2021-01-17 19:07:22「少しずつ自分がおかしくなっていってるのはわかってたんだ。オレはいずれ完全に天使としての自分を失う。それを肯定するたび喪失は早まってた。…この後どうなるかはわからないけど」 「じ、ジンロウ…お前…」 「天使の機能が削げ落ちた後人間みたいになるんだとしたら、それも多分、悪くないよ」
2021-01-17 19:12:04