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破戒僧が魔物をおしおきする話。4

まとめました。
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江口フクロウ@眠み @knowledge002

前回までのあらすじ。 「こいつのタマを痛めつけて一番大きい悲鳴を上げさせたやつが優勝」 我らが勇者一行は森に巣食う危険を排除しつつついに森を抜けた。 辿り着いたのは魔王領域第二の関門、竜の屍山。

2021-01-27 19:56:45
江口フクロウ@眠み @knowledge002

その名のまんま、とんでもなくデカい竜の死骸がどっしんと横たわっていてそれがそのまま環境と化した地域である。 万物の死はそれ以外のものの生に繋がる。 世の中何かが死ぬことで別の何かが生きていて、物語の中ではよくそんな巨大生物の死骸に緑が芽生えたり生命が巣食ってみたりするものだが、

2021-01-27 20:10:30
江口フクロウ@眠み @knowledge002

ここに限ってはそうではない。 力ある竜の死は、周囲にまで死をばら撒いた。 研究者によれば竜の屍山も元は大森林だったのだという。 しかし、ある日舞い降りた巨竜の死骸が森を踏み潰した上朽ちていく過程で起きた何らかの反応で周囲の生命を奪い去った、とか。

2021-01-27 20:15:35
江口フクロウ@眠み @knowledge002

とにかく、今は不毛の裾野と冷えて固まった硬質な皮膚に岩山に似たいかめしい凹凸を生み出す巨骨のみが残る地域となってしまった。 人間が第二の前線基地を築いたのはその麓。 位置としては巨竜の首の付け根で、登山道の入り口としてなんとか整備した小さな集落がそこにある。

2021-01-27 20:22:00
江口フクロウ@眠み @knowledge002

勇者は町の入り口で簡素な門と周囲を見回し言った。 「…これ、首の先ってどうなってると思う?」 「まあ、頭ではないか?」 「そうですね。あまりに遠い上行ったものが誰一人帰ってこないので禁足となっておりますが」 「すっっっっげー……」

2021-01-27 20:27:16
江口フクロウ@眠み @knowledge002

感嘆。 我らが勇者は軽薄な顔と軟弱な態度でいまいち威厳というものがない。感性もまあまあ子供。 「実はまだ生きてたりとかしないかな…」 「世界が滅ぶの確定ね…」 魔法使いは呆れたように言い捨てると夢想を始めた勇者から目を逸らし、僧侶へ向き直る。

2021-01-27 20:36:14
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「それで?砦で兵士をなぶり殺しにして脱走した私たちはこれからどうするワケ?」 「こっ、殺してはいませんっ…!」 「そこで照れられても困るのよね…」

2021-01-27 20:38:20
江口フクロウ@眠み @knowledge002

僧侶。清楚で可憐な破戒僧は、かつて自分に狼藉を働いたものとその他いちゃもんをつけることのできるあらゆる生命を痛めつけるため対魔王戦線へ復帰した異常者は、冒険者の先輩でかつ我らが勇者パーティの指標でもある。 「言っちゃえばお尋ね者なワケじゃない?ここ、入っちゃってもいいの?」

2021-01-27 21:10:06
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「ええ。問題ありません」 「基地間には魔法の通信網が通っていると聞く。とっくに情報は伝わっているだろう」 「その上で問題ありません。私たちは正当にここへ戻ってきたのですから」

2021-01-27 21:48:33
江口フクロウ@眠み @knowledge002

二人は首を傾げる。正当も何も、勇者と冒険者は軍の管理下で戦いに出るもの。無断で魔王領域へ入り勝手に行動する人間は罰せられるはず。 横から勇者が「そう言えば」と言葉を挟む。 「そう言えば、僧侶さんは前にここへ来たんだよね」 「その通りです。設営にも携わりました」

2021-01-27 21:52:10
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「進むには認可がいるけど、確か撤退した冒険者は最終到達エリアから再スタートできるんだよね?」 「それです!さすが勇者さま!」 「勇者、お前…」 「成長したのね…」 「君たち???」

2021-01-27 22:18:03
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「でも兵士をボコボコにしたことについては何も解決してないような…」 「皆さま、今回は私の都合で徹夜させてしまい申し訳ありませんでした。さあ参りましょう!」 「僧侶さん???」

2021-01-28 19:57:36
江口フクロウ@眠み @knowledge002

ついでに言えばパーティの他三人が入れ替わっている件も僧侶はごまかした。

2021-01-28 19:59:27
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「いやはやいやはや。かつて最前線に立った貴女がお戻りになるとは。まことに心強い次第でございますな」 屍山麓の町の責任者は冴えない中年男で、階級は中佐。 「この先の幻海を突破できるのは貴女を置いて他にないと思っております。それが我が軍の総意でして、ええ」 やたらめったらに腰が低い。

2021-01-28 20:05:15
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「そう言えば、砦の方から何やら連絡が入っておりましたが貴女の行動を妨げるものは何もございませんのでお好きなようにお過ごしください」 話も早い。 「ところで、今のお連れの方々の実力については…あ、はい適正であると報告しておきます」 降伏も早かった。

2021-01-28 20:07:55
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「何の問題もないワケだわ…」 「でも一つの拠点を預かってる人だよ?何か抜きんでて優秀だったりするんだろうね」 「いいえ。あの人はお飾りです」 「えっ」

2021-01-28 20:10:07
江口フクロウ@眠み @knowledge002

戦士は改めて町を見渡す。 申し訳程度の囲い。少ない建物。人通りもなければ、たまに見かけるのは寝起きで肌着のまま歩き回る冒険者。 「ふむ」 侵攻の拠点にしては、あまりに質素な場所なのだ。

2021-01-28 20:13:42
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「ここは、魔物に襲われないのだな」 「その通りです。何せ、何もかも死に絶えた後の場所なので」 「も、森を抜けた後なのにそんなことあるの?」 「あるのです」 「ええ…?」

2021-01-28 20:15:57
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「それじゃ、問題があるのは山ってことね」 魔法使いの言葉に僧侶はゆっくり頷く。 町で唯一の石造物件である軍の基地を出た彼らは僧侶の先導で冒険者用の宿へ向かう。 なるほど建物は大きいがあくまで集落にしては、くらいのもので作りも簡素。

2021-01-28 20:21:30
江口フクロウ@眠み @knowledge002

すれ違うわずかな冒険者も砦の方がよっぽど立派だったなどと話しながら部屋へ向かうだけで、砦の時のように外へ任務に行く気配がまるでない。 「あの山の環境は異常です。死してなお竜が放つ魔力にあてられると時に死に至ります」 「なるほど。それでここで慣らして行くのね」

2021-01-28 20:33:36
江口フクロウ@眠み @knowledge002

「一応魔物も出るんですよ?道半ばで斃れた冒険者のご遺骨がふらふらと仲間を増やしにやってきます」 「あー…だよね。登山だけじゃないかぁ…」 「僧侶。気をつけてくれ。勇者は恐怖物語が苦手なのだ」 「まあ、それはすいません」 「仮にもリーダーをなんでそんな子供扱いするかな」

2021-01-28 20:37:05
江口フクロウ@眠み @knowledge002

お粗末な町とやべぇ山。不都合を力業で押し通し強敵もハメコンで無理やり押し通ってきた我らが勇者一行の旅における初の長丁場であり、そして。

2021-01-29 18:12:04
江口フクロウ@眠み @knowledge002

長丁場ではあったが、やっていたことと言えばちょっとした鍛錬や連携の確認、あとは登山や環境についてのお勉強と大して内容が詰まっていた訳ではない。登山に必要な適応に時間を要しただけだ。おおよそは他の冒険者と同じ、ゆっくり過ごして時たま身体を動かし、気が向けば他の冒険者と交流した。

2021-01-29 18:25:40
江口フクロウ@眠み @knowledge002

ある日は他の勇者と和やかに歓談し。 「あ、あの…」 「ん?なんだ、ナンパか?」 「なんでだよ。どうしたんですか?」 「い、いや…その、お前、どこかで会ったことがないか?」 「ナンパではないか!」 「なんで嬉しそうなの?」

2021-01-29 18:32:19
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