シンタロールのツイノベ

シンタロールによるツイノベをまとめています
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シンタロール @shintarawl

うろこ雲にちょっぴり目が潤む。気の抜けた甘いだけのサイダーが、時間切れを教えてくれた。何度も自転車のハンドルを握った前腕は、駆け抜けた季節を焼きつけてる。吹き抜ける風が乾いた肌から熱を奪った。この寂しさだって、本当はきっと嫌いじゃない。でも、くそう、寂しいなあ! #twnovel

2011-08-22 14:51:10
シンタロール @shintarawl

川崎に新種のプラネタリウムができたというので、脚を運んでみた。入り口で煙管を手渡され小首を傾げたのだが、なるほど彼方此方で銀色の煙が立ち上っている。倣って私も煙を吐き出した。薄荷のような味がする。星の粒がキラキラと燻され、金平糖みたいにカラフルに瞬いた。 #twnovel

2011-08-17 20:54:53
シンタロール @shintarawl

食器を洗いながら、君が掃除機をかける音を聴く。その音は何だか妙に楽しそうだ。部屋は片付けたそばから混沌へ向かう。散らかる。片づける。つまりはその繰り返し。終わりのない営みを苦としない君には、きっと生きる才能がある。この部屋の恒常性を担って、君は今日も元気だなあ。 #twnovel

2011-08-17 20:37:33
シンタロール @shintarawl

「先生!」防波堤の上から少し掠れた声。「おれ、今年こそ夏を捕まえるから!」夏の駆け足は速い、お前にはまだ無理だよ。去年よりも確実にひと回り大きくなった背中を叩く。「でもさ、夏を捕まえた後ってどうすればいいの?」そっと手放すんだよ。そしたら、お前は大人になるんだ。 #twnovel

2011-08-16 19:57:32
シンタロール @shintarawl

彼は初夏に耽溺していた。そして酩酊するとこんな句を朗々と諳んじるのだ。「人はただ 十二三より 十五六 さかり過ぐれば 花に山風」酔狂な奴め。呆れながらも私は尋ねた。「何故君はそれを愛するんだ?」彼は日に灼けた悪童の顔で笑った。「馬鹿なことを訊くな。美しいからさ」 #twnovel

2011-08-01 21:21:15
シンタロール @shintarawl

「ええい、今時分勢力均衡も糞もあるまい。夏将軍様は鷹揚に過ぎるのだ。あの冷血狡猾な冬将軍に一年の大半を支配される事態とえ、このままではただの杞憂とも言えぬだろう。愚鈍な夏の民といえども憂慮しているはずだ。夏将軍様は如何お考えなのか…」「さっきスイカ食ってたぜ!」 #twnovel

2011-08-01 12:19:16
シンタロール @shintarawl

「これが『少年時代の思い出』スかあ」片目を閉じて、指に挟んだ硝子玉を灯りに透かす。「ビー玉みたいスね。この滲み方は夕焼けっぽい。コレは夏空っぽいなあ。でも…あっちの仄暗い色のは?」すると男は微笑んだ。「『少年時代の思い出』は、時間をかけてその色を変えるんですよ」 #twnovel

2011-07-31 23:39:20
シンタロール @shintarawl

高校球児は僕にとって殆ど大人みたいなものだった。その感覚は大学生になっても抜けず、テレビの中の球児がいつまでも年上のように感じられたものだ。僕は缶ビールをプシュッとやる。「残念だよな、こいつらの時間が止まらないなんて」あー、ビールの癖に妙に甘ったるいじゃねえの。 #twnovel

2011-07-28 17:08:13
シンタロール @shintarawl

乾いた金属音とともに、最後の夏は外野の頭の上を大きく越えていった。空も日射しもムチャクチャ眩しい。ああ、何だよ。夏が終わったってのにクッソ暑いじゃねーか。じゃ、とりあえず海だよな。もうチャンテも鳴らない。じゃ、砂浜でレゲエだよな。別にそんなことしたくねえけどー。 #twnovel

2011-07-28 15:19:14
シンタロール @shintarawl

「なあ、今日は勝負パンツなんだよ!」いつも通りの暢気なアホ面だ。「何と戦うつもりなんだ?」礼儀ってことで、一応は訊き返してやる。奴は鹿爪らしい顔をしてみせた。「んー。資本主義、かな」「この、ユニクロのパンツでかあ」「そうそう。深いでしょ」深くねえなあ、ちっとも。 #twnovel

2011-07-25 16:02:47
シンタロール @shintarawl

帰りてえ、な。 不意にこぼした言葉に、自分で驚いてしまう。帰りたいって、どこへ? ここが俺の家だ。なのに。あの茜色の夕陽を眺めていると、帰りたいなんて思っちまうんだ。だけど、どこへ? そして、どうやって? えー、そこで取り出しまするはこの酒瓶でございますッ! #twnovel

2011-07-22 20:57:46
シンタロール @shintarawl

畳の目を頬や耳たぶに縫いつけて、君はねぼけまなこをゴシゴシとこする。「いぐさの匂いが夢の中まで香ってきたよ。あとは…、カレーかな?」僕は鍋の中身をかき回して、ちょっと笑った。しあわせはきっと、君の耳と似たようなかたちをしている。 #twnovel

2011-07-25 15:44:07
シンタロール @shintarawl

「ここで一句。天麩羅を 揚げてるみたいな 蝉時雨!」いい句だぜと胸を張ったところ、茶々が入った。「蝉時雨ってのは蝉の鳴き声を時雨の音に見たててんだし、それを更に天麩羅の音と表現してもなー。…あ、そういや、蝉の天麩羅が出てくる漫画があってさー」なんだよなんだよ。 #twnovel

2011-07-14 19:21:36
シンタロール @shintarawl

「なー、お前身長いくつだ?」「チェッ。チビにそういうこと訊くなよなー、161センチだよ」「はは、カワイイなー。おれと17.5センチの差だ」「おお、ちょうどおれのチンコひとつ分の差だな」「えっ」「えっ」 #twnovel

2011-07-14 13:03:24
シンタロール @shintarawl

プールに投げ込まれる塩素剤にちょっと憧れる。シュワッと溶けてく、ラムネ菓子みたいな次亜塩素酸カルシウム。真夏の水槽の底へとゆらゆら射しこむ光を見あげ、あの水色に溶けてしまうなら、悪くない。…って気持ちを表現してみたんだぜー、このカクテル。名づけて「水色革命ッ」! #twnovel

2011-07-14 12:58:08
シンタロール @shintarawl

強風が雨戸を叩く。続いて玄関の扉が乱暴に叩かれる音。遅いぞ、おれの準備はもうバッチリなのに。「お待たせ!台風!いい感じに来てんな!」びしょ濡れの顔には満面の笑みだ、無理もないけど。車に戻るお前を追って、おれも助手席に乗りこんだ。「行くぜ!いざ、露天風呂ッ!」 #twnovel

2011-07-05 23:19:43
シンタロール @shintarawl

「短冊のデジタル化なんて、誰が考えたんかなあ」素っ気ない口調の割には、熱っぽくドームの夜空を見げてる。モザイク状に散らばったカラフルな願いごとの文字列は、まるで花火みたいに点滅していた。「で、願いごとの座標は?」君は照れ臭そうに目をそらす。「そんなの、内緒だ」#twnovel

2011-07-05 22:35:22
シンタロール @shintarawl

突然の大雨はものの数秒で僕らをびしょ濡れにした。笑い声をあげて軒下に駆けこむ。制服のままプールに飛び込んだようなありさまで、わけもなく笑いがとまらない。「なあ、いっそ学校のプールに侵入しちゃわねー?」小さな以心伝心に、胸が躍った。さっさとフェンスを乗り越えたい。#twnovel

2011-07-05 22:13:07
シンタロール @shintarawl

麦わら帽を頭にのっけた君が、鼻歌まじりにホースで水をまき散らす。キラキラした夏の欠片がちいさな虹をつくった。君は白い歯を見せて気化熱の説明をするけど、そんなことはどうだっていい。クラッとめまいがして、おれだって蒸発してやりたいのだ。 #twnovel

2011-07-05 00:30:42
シンタロール @shintarawl

ダウンを終えると、俺等はフィールドの真ん中でゴロンと寝転んだ。「あー、何で陸上部なんかに入っちゃったのかなあ。高校ではサックスを吹いて過ごそうと思ってたのに」「…サックスを吹くって、メタファか?」真面目な表情だった。面倒臭いやつだな。でもまあ、陸上部も悪くないか。#twnovel

2011-07-04 23:57:34
シンタロール @shintarawl

「雨あがりの、濡れた舗装道路のにおい」「わかる!じゃあ…、水も滴る夏野菜の、あの発色」「ベタだけどいいねー。…サンダル履きのつまさき、ちいさな親指の爪」「うへへ、いいっすねー。でもやっぱり夏といえば絶対に…」俺等は青緑の瓶をぶつけ合った。涼しげに鳴る透明な協和音。#twnovel

2011-07-04 22:36:26
シンタロール @shintarawl

二十二歳だという彼女は瓶ビールから口を離すと「若いなあ」と言った。「十九も二十二も変わらないですよ」と返すと、首を横に振って「二十二になってみればわかるよ」とすこし意地悪っぽく笑う。ちぇっ。三年後、僕も無防備な十九歳をつかまえて同じことを言ってやろう。 #twnovel

2011-07-04 01:34:28
シンタロール @shintarawl

夏の夜にあてられてしあわせのかたち、しあわせの在り方についてちょっと熱っぽく語り合った。朝日と高校生のワイシャツが眩しい電車に揺られ、隣のお前は眠そうな目をして、にやけながらこう言った「まあ、カレー食ってるときは、大体しあわせだけどなあ」。俺もそう思う。 #twnovel

2011-07-04 00:32:15
シンタロール @shintarawl

新雪の上をズンズンと歩いて足跡をたっぷりつける。わざと走り回ってみたり、背中からパタッと大の字に倒れ込んでみたり。でっかい白いカンバスに意味のないラクガキをしてるみたいで楽しい。て言ったら「そういう男は処女が好きなんだよな」て腑に落ちない分析をされて、ヘコんだ。 #twnovel

2011-12-21 16:49:15
シンタロール @shintarawl

カーテンを開けると世界は白で埋め尽くされてた。東京西部の電車は雪に弱い、これじゃ定刻通りの登校はまずムリだ。「うひゃー、遅刻確定だな」頭を掻いて苦笑い。「ラッキーじゃん!のんびり行こーよ」ってバカ、お前ん家は学校の隣じゃねーか。家に帰ってねーのがバレちゃうぜー。 #twnovel

2011-12-17 23:58:49