【ケイジ・オブ・モータリティ】 #5

ネオサイタマ電脳IRC空間 http://ninjaheads.hatenablog.jp/ 書籍版公式サイト http://ninjaslayer.jp/ ニンジャスレイヤー「はじめての皆さんへ」 http://togetter.com/li/73867
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ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「少なくともこの辺りの層ではな。おそらく限られた活動範囲と関係している」歩きながらクレッセントは考察する。「"飼い主" が近くなれば、また状況も違ってくるだろう」「上に……上に戻る」サイダ3は首を振る。「ギャングの奴ら、マジ、おかしくなっちまったんです。そいつが来てから」 19

2021-03-17 22:56:51
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

階段を発見。塞ぐように積み上げられているのは、トウモロコシの擬人化「トウモロコシ君」の絵看板、ハサミの擬人化「バーバー君」の絵看板。笑顔でレーザーメスを入れる「ネオンタトゥー君」の絵看板。クレッセントは無雑作にそれらを掴み、放り捨てていく。 20

2021-03-17 22:59:38
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「……だろうな」「最初は、アレですよ、ムカつくボスを追い出して、機を見るに敏、とか、スカッとしたぜ、とか、これからよろしく、とか言ってた連中が……何もかも光ってるとか、言い出したんです」「光ってる?」「そうです。話合わせたんですけど、俺も。何もかも光って見えてサイケだって」21

2021-03-17 23:02:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「寄生の兆候か」「そうなんです。カルトみたいになって。涎垂らして従ってました。あいつに。ズンビーみたいになっていったンです」「キミはどうして正気だった?」「……」サイダ3はガスマスクを叩いた。「多分、これのおかげですね。俺、ガスマスクのファッション好き系のパンクスだったんで」 22

2021-03-17 23:06:24
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フフッ」クレッセントは笑った。「サイオー・ホースというわけか」「わ、笑うんですね?」「私を何だと思ってる。まっとうな企業の社員だぞ」「エ、エヘヘ……そういえば、そうでしたね……」「チッ」クレッセントは舌打ちし、爪を光らせた。「スミマセン!」「違う」彼女は跳んだ!「イヤーッ!」23

2021-03-17 23:12:01
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クレッセントは踊り場を折り返した階段上に蠢く者らに対して先手を打つ!「アバーッ!?」ギャング達は銃火器を振り回しクレッセントを狙い直そうとする。「イヤーッ!」爪が閃き、ギャングの腕と首が刎ね飛ばされた。「アバーッ!」殺し残った数名のギャングが発砲する!BRATATATATA! 24

2021-03-17 23:18:33
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「アイエエエエ!」サイダ3は跳弾を恐れてしゃがみ込んだ。「イヤーッ!」「アバーッ!」「イヤーッ!」「アババーッ!」ギャングの四肢が吹き飛び、転がってきた。サイダ3は呻いた。最後の一人をクレッセントは追い詰め、蹴りで壁に押しつけた。「アバーッ!アバーッ!」もがくギャング! 25

2021-03-17 23:20:26
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「おい、脳は残っているか?」胸を足で押さえつけながら、クレッセントはインタビューを試みる。ギャングはガチガチと歯を鳴らし、手足をバタつかせる。「コッ!コッ!」白目を剥き、喉を鳴らす。そして、言葉を発した!「コッチに!来ルなら!チャンと入れロ!」「入れる?何をだ」「御神体を!」 26

2021-03-17 23:24:08
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「御神体?そう呼んでいるのか」クレッセントはフルメンポの奥で目を細める。「あまりナメるなよ、ウチから盗んだプロダクトのパテント侵害の分際で……!」「プロダクト?ぶ、無礼な……!」ギャングは痙攣した。「御神体を拝領せよ!神聖なるミコーが我らモータルにもたらす許し也……!」 27

2021-03-17 23:28:54
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「そのミコーとやらにアイサツさせてもらおう。どこにいる」「行かせナい!ここより上は!御神体を拝領しない奴、まかりならん!」「話にならんな」「アバーッ!アバーッ!」「イヤーッ!」「アバーッ!」クレッセントはギャングの胸を押し潰した。サイダ3は叫んだ。「アブナイ!」 28

2021-03-17 23:37:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

60階の廊下を走り来た新手の者達に対し、クレッセントは既に動いていた。「イヤーッ!」クレッセントは振り向きざま、爪を横薙ぎにして光の刃を飛ばした。「アバーッ!」「アバーッ!」列になったギャング達がまとめて胴体両断!「来い!」クレッセントがサイダを呼ぶ!何かがおかしい! 29

2021-03-17 23:40:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サイダ3は慌てて階段を駆け上がった。クレッセントが彼の手を掴み、引っ張り上げた。サイダ3は見た。切断されたギャング達の胴体断面が膨れ上がり、燐光を放つものたちが舞い上がった。蝿だ!ギャングの体内より飛び出した蝿が群れを為し、光る霧めいて二人を追う! 30

2021-03-17 23:43:36
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

わあんわあんわあんわあん、音と光の群れが追い上がる。「アイエエエエエ!」サイダ3は悲鳴をあげ、必死にクレッセントに続いた。踊り場でつんのめった彼を、再びクレッセントが掴んだ。そして山賊めいて抱え上げた。「アイエエエエ!」61、62、63!クレッセントはそのまま階段を駆け上がる! 31

2021-03-17 23:47:58
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

わあんわあんわあんわあん……「チィ……」クレッセントはたたらを踏んだ。67階に続く踊り場から先、もはや壁めいて積み上げられた廃机や看板類。いまだ内部電源で光り続けるソーセージの絵看板「ソーセージくん」、自分を削って笑うケバブの絵看板「ケバブくん」……。わあんわあんわあん! 32

2021-03-17 23:52:48
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ルートを変えないと!」サイダ3がクレッセントに担がれた状態で必死にこめかみをタップし、網膜にUNIX画面を表示させた。「66階を移動しましょう!そうしないと……」「クソッ!」クレッセントは振り向いた。わあんわあんわあんわあん!彼女は押し寄せる羽虫の群れに身構え、両拳をかち合わせた。33

2021-03-17 23:56:38
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パシ、と音が鳴って、サイダ3にも視認できる奇怪な光の輪が放射状に拡散した。羽虫の動きに明らかな乱れが生じた。「アイエエエエ!」転げ落ちるサイダの首をクレッセントは掴み上げた。てんでばらばらに飛び散る虫たちの中へ、クレッセントはサイダ3と共に飛び降りた。 34

2021-03-17 23:58:06
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

わあん……わあんわあんわあん。「アイエエエエ!」サイダ3はもがいた。だが二人は光る羽虫の霧を突破し、66階の廊下に突っ込んだ。「エ……今のって!?」「アンタイ・ヨロシ・パルスだよ」クレッセントは答えた。「ヨロシ遺伝子に働きかける。多少の効果はあったが、やはりダメだ。歪んでいる」 35

2021-03-18 00:00:14
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

然り、二人が後にした後方の階段付近、撹乱された光る蝿たちが徐々に再び互いに集まって……わあんわあんわあん!「イヤーッ!」KRAAASH!クレッセントはかつてのオフィス資料室とおぼしきドアを蹴り開け、サイダ3を引きずり込んで、素早く閉め直した。彼女は閉じたドアに耳をつけた。「……」 36

2021-03-18 00:03:33
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ど……どうですか」「……」クレッセントは外の音を捉えながら、座り込んだサイダ3の肩越し、機器類を陳列したラック連なる狭い資料室に敵がいない事を確認し終えると、頷いて、フルメンポを開いた。そして一息ついた。「一休みだ。状況は、完全なクソというわけだな」 37

2021-03-18 00:07:02
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「ハ……ハアーッ……」かなぐり捨てるようにガスマスクを脱ぐと、サイダ3は深呼吸した。「マジでヤバイ……」「よく頑張ったぞ」クレッセントは彼をねぎらうと、懐からショートブレッド状の食糧を取り出し、二つに折った。「携帯バッテラだ。腹は減ってるか」「い……イタダキマス」 38

2021-03-18 00:12:07
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

サイダ3は携帯バッテラを齧り、ニューロンに魚由来DHAが流れ込むのを感じた。頭が冴えてきて、落ち着きが戻ってくる。彼は資料室の隅に鎮座するUNIXデッキを見つけた。LEDに光がある。「LAN直結できそうです。よかった。メインフレームに直結できれば、色々できるかも」「……助かる。頼めるか」 39

2021-03-18 00:15:03
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「その為について来ましたしね。いちおう臨時雇用ッてワケですよ」サイダ3は首後ろのソケットとUNIXデッキをケーブルで直結し、キーボードをタイプする。「外、もう平気ですか」「散ったか、別の場所に行ったか。監視カメラに接続でもして、確かめてみろ」「そうしますよ」 40

2021-03-18 00:17:34
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「フウーッ……」クレッセントは扉にもたれ、俯いた。サイダ3は横目で彼女を見た。「ダイジョブですか」「ああ」「貴方がダメだと、こんな場所で俺、完全に詰んじゃうんで、お願いします」「それはそうだろうな」クレッセントは携帯バッテラをしがんだ。「予想よりハードなのは確かだ」 41

2021-03-18 00:20:32
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

「御神体を入れるッて……マジでイカレてますよね。連中、俺が逃げた時より、ますますヤバくなってるな」「ナメくさった話だ」クレッセントは携帯バッテラを飲み込み、マッチャのチューブ・ストローを咥えた。「ヨロシサンのプロダクトにタダ乗りするだけのテロリストどもめ」「そう……ですね」 42

2021-03-18 00:23:49
ニンジャスレイヤー / Ninja Slayer @NJSLYR

タイピングを速めると、緑色の格子のコトダマ地平が現実の視界に重なり合う。黄金立方体の光をかすかに感じる。ヨロシサンにタダ乗り……。内部の人間は、そう考えるだろう。だが、なにか不気味だった。ギャングを乗っ取った奴がミコー(巫女)ならば、その上には神がいるという仕組みだろう。 43

2021-03-18 00:26:30