難解映画『CURE』を解説してみた(ネタバレ有り)
- kyobyobyo2
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間宮は催眠の小道具として「逆質問」「火」「落とし物(時には自分自身が落ちて、拾わせる)」などを使っているが、宮島医師のケースでは「水」を用いていた 作中での間宮の最初の登場が海辺であったように、「邪教」と「水」には強い繋がりがもたされている
2021-03-19 00:10:02間宮の使う「水」は、常に無色透明で澄みきっている 自身のことを「空っぽになった」と表現しているように、間宮には一切の私心が無い 彼を衝き動かしているのは「邪教」を人々に広めようという、ただその思いだけだ pic.twitter.com/b2Gl1qRypZ
2021-03-19 00:11:21逆に高部にまつわる「水」は、その最初の登場時から濁りを含んでいる 病室内を濡らす雨漏りの水滴は、高部の内面から滲み出てきたどす黒い感情の色そのものだ pic.twitter.com/02Lp70S40G
2021-03-19 00:13:45第三幕のクライマックス直前、室内に備え付けのオイルヒーターを、間宮は椅子で懸命に破壊しようとしている ヒーターの内部にあるのは、もちろん真っ黒に濁りきったオイルだ pic.twitter.com/HeXpVVKntc
2021-03-19 00:17:00殴打は世界を揺るがす轟音をたてながら続き、ヒーターの塗装を剥がしたあたりで椅子は真っ二つに避けてしまう それでも間宮は構わず殴打を継続し、ヒーターを破壊しようとする その表情には、喜びの色さえ浮かんでいるように見える
2021-03-19 00:20:08すべては、内部にある「どす黒いもの」を解放するためだ 高部を目覚めさせれば、間宮の「伝道師」としての役割は終わる それを知りつつ、間宮は高部を解放しようとしていたということだ
2021-03-19 00:21:51催眠で「被害者たち」を自在に操る間宮は、一見したところでは計算高い部分があるのではとも思わされる しかし実際、質問者への彼の向き合い方は非常に誠実でもある 質問者とやり取りがしばしば噛み合わないのは、間宮が自他のいずれのものも問わず、あらゆるペルソナを理解しようとしていないからだ
2021-03-19 00:25:14名前・住所・年齢・職業といった類を問う質問は、そのほとんどが人物の外面的な情報に関するものであり、一種のペルソナを問うものだと言える 間宮にとって真に重要なのは、相手がどのような感情を内部に溜め込んでいるかであり、自分がそれを行動(殺人)として外部へ解放させてやれるかどうかだけだ
2021-03-19 00:26:56ちなみに藤原本部長はそもそも感情を溜め込むような抑制のできない人物なので、間宮の興味からはあっさり外されている (それどころか間宮にしては珍しく「本部長の藤原」と役職まで付けて呼びかけている。あまりにも低レベルなので呆れ、大人が子供の目線にまで下がってやったというところか)
2021-03-19 00:29:19衣服がペルソナを象徴していることから、本作のオープニングにおいて裸の男(桑野一郎)が裸の女を殺すという事件に象徴されていたものも理解できるだろう そこにあるのは生の人間の、純粋な殺意だけだ ペルソナの苦しみから個人を解放することこそ、「邪教」の教祖・伯楽陶二郎が説く「癒しの道」だ
2021-03-19 00:32:39しかしエンディングにおいて、「邪教」の伝道師として目覚めた高部はきちんとスーツを着こなしているうえに、職場からの業務連絡への応答も明瞭であるように聞こえる 間宮のような、ペルソナに関する受け答えの混乱は見られない
2021-03-19 00:33:32これはつまり高部が、「布教」を行いつつも「俗世」の顔をも持ち合わせているということを示している 高部は「伝道師」より高位の存在──いわば「司祭」とでも表現されるべき高みにまで達してしまったことになるのだろう
2021-03-19 00:36:30