純情色の恋物語

よつげ @Eight_os

２５ あるいは僕が単に寂しかったのもあんのかもしれへんけど 「…また飯作って」 「え？」 「僕小説家やねん 修羅場の時とかはええけど、それ明けたらめっちゃお腹空いて でも自分で作んのめんどいし」 やから 「作りにおいで」 逃げてきておいで。 野良猫の世話くらい慣れてる。 #エイトで妄想

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２６ 「…いいん、ですか？」 「ええよ 僕、君のこと野良ちゃんって呼ぼかな」 「のらちゃん…」 「名前覚える必要もないやろ？ 野良猫の野良ちゃん」 そう言うと、彼女は小さく笑った。 「嫌やったらええけど」 「ううん …ほんとの名前より好きなくらいです」 #エイトで妄想 pic.twitter.com/0IgCCIDU2y

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２７ それからというもの、野良ちゃんはちょくちょくウチにご飯作りに来てる。 野良ちゃんのご飯はほんまにどれも美味くて 一緒に食べてるとお嫁さんみたいやなぁなんてたまに思う。 もっとも 「味付け濃くない？」 「ごめんなさい、今日初めて作ったから…」 #エイトで妄想

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２８ 素直やない僕はそんなこと言えへんけど。 野良ちゃんは、気向いた時は僕の洗濯物とかも畳んでくれる。 さすがに成人男性の下着やら何やらに手つけるのは忍びないらしくて、それだけ放り出されてるけど。 そんな訳で、僕のQOLは日に日に上がっていった。 #エイトで妄想

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２９ ある日、コンビニから帰ってきたら、野良ちゃんとゆうちんが喋っとった。 「おーマル、勝手に上がらせてもろてます」 「すみません、この人が家の前にいたので…」 「ほんまやわ。ごめんなぁ野良ちゃん、相手してもろて」 全然です、とニコニコして首を横に振る野良ちゃん。 #エイトで妄想

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３０ ゆうちんが何かニヤニヤしてこっちを眺めてるから 僕は口を尖らせて聞いた。 「何」 「や、マルが女の子と話してんの新鮮やなぁって それもかなりの若い子」 「やめてや、僕は保護してるだけ」 その言葉に野良ちゃんが俯いて、あぁ、またやってしまったと思う。 #エイトで妄想

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３１ やから人と関わるのは苦手やねん。 「あっそう」なんてゆうちんは言って それからふと思いついて考え込むみたいに顎の下に手をやる。 「そっか…今のマルならいけるかも知れんな」 そう言ってゆうちんは鞄から書類を取りだした。 「なぁ、新しい連載やらへん？」 #エイトで妄想

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３２ 「連載？」 こういう仕事柄、新しい仕事には是が非でも飛びつきたいところ。 だけど連載となるとなかなかに面倒臭い。 「あのなぁ、今やってる連載かて締切ギリギリばっかやねんで？この上もう一個なんて無理に決まってるやろ」 「分からんやろそんなん」 #エイトで妄想

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３３ ゆうちんが身を乗り出して説得に乗り出す。 「一個が行き詰まってる時にもう一個を進めたら気分転換にもなるし、刺激されて新しいアイデアも浮かぶかも知れんやん」 それはまあそうかも知れんけど… 「一応聞くけど、どんなん書いたらええの？」 #エイトで妄想

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３４ 「恋愛小説ってオーダー」 「あぁ、あかんわ。情感たっぷりの書き方苦手なん知っとるやろ？尚且つ恋愛とか以ての外や」 「ベタなの書けとは言うてへんやん、マルにしか書けへん新しい恋愛小説があるかもしれへん」 僕にしか書けない、ねぇ。 #エイトで妄想

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３５ そんなん言うても僕自身に語れるほどの恋愛経験があるわけでもなし。 ネタに困って筆を投げるのがオチだ。 「それに」 断ろうと口を開くより前に、ゆうちんが畳み掛けてきた。 「ネタならあるやん、てかおるやん ここに」 まさに今僕が悩んだその内容。 #エイトで妄想

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３６ その解決策としてゆうちんが示したのは 所在なさげに座っていた野良ちゃんだった。 「…え」 「野良ちゃんがネタぁ？…野良ちゃん、恋愛経験は」 「えっ、いや、そんなには…」 「ネタないって」 「ちゃうねんて ヒロインをこの子にしたらって言うてんねん」 #エイトで妄想

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３７ 聞いた瞬間、面白いかもと思った自分がいた。 時々保護してる分、彼女の言動は見て取れる。 小説の中で、彼女を幸せにしてやれる。 「やるか？マル？」 僕を見つめるゆうちんと 「丸山さんのお仕事…手伝えるなら嬉しいです」 なんて言う野良ちゃん。 二択は一択になった。 #エイトで妄想 pic.twitter.com/fjqcO0Df5K

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