【音符と地図】福間健二 #k2fact290

福間健二 @acasaazul

音符を拾った朝。光をあびる人。自分の家に入るのに時間のかかる人。沈む自由を確かめる人。音符の上に現れる、すでに語られたこととまだ語られていないこと。そして永遠に語られないこと。助けてほしい、という声が聞こえて、理論が次々に敗北する交差点。風がやんだ。（音符と地図１）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

音符は音符を呼ぶ。音符の上に生きる心と心が出会う。きみが好きだ。そう言って、見つめあわない。同じ方向を見ている。サン＝テグジュペリだ。この交差点の名前は桐朋学園東。自転車レーンに散った桜の花びらの上を小ねずみが駆け抜けて、見つめあわない隊に仲間入りだ。（音符と地図２）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

何が精神の破滅だとサン＝テグジュペリは言ったか。純粋論理学かな。だいたい純粋と名のつくものはやばいんだよ。いつも青いシャツの、だれかのいとこだという若者の思い出からの音符。ふらふら、ぶらぶら、ぷらぷら、どうちがうかとか考えてたね。考えてはいなかったよ。（音符と地図３）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

音符の上に。それからチューリップとかある植え込みの、滴がつくる穴の中に。ふらふら、ぶらぶら、ぷらぷら。幻の生活の、マスクしない笑いと嘆きを連れて不公平や不運はマスクで隠して日々をすごせないか。すごせないさ。地を這う魂の引換券集めてながめる天才でなければ。（音符と地図４）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

ぼくのことは忘れてくれ。ぼくは春の表面をかきまわす黒い足でしかない。そう言って消えた男が残した音符を借りているだけなのかもしれない。何を破裂させるのか。手段と目的、どっちがどっちなのかわからなくなって行き戻りする惑星通り。やさしくなるのが怖かった足。（音符と地図５）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

では、その足、最近の日本の夜を縫う糸の心理を踏みにじったのか。どこに降りても寒いＯ君。音符を無視して歩くとき、小さな花を見つめるとき、空からの血を知るとき。搾取できる蜜はわずかだったろう。おたがいさま。地図に入れる情報の半分以上は加害者の指で知ることだ。（音符と地図６）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

何人もいるＯ君。通りすがりの肉感を意識して言うでたらめも、夢のなかに目ざめる芸当も、成り行きにはためかせる無秩序も、いつまでもじゃないだろうが、いまは音符の滴をたらして、新しい地図。小石を蹴る。風を切る。手を振る。到着、発動、帰ってきた見知らぬＯ君よ。（音符と地図７）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

湿地、林、そして見えない場所も含めたら、卵と音符のある場所はいくらでも。くぐりぬける人々。スマートになったその使用後。横顔と手つきが少しずつ変わる。光をすくいとり、影を散らすのだが、新しいＯ君はじっとしているのが苦痛だ。反抗と弾圧のニュースが気になる。（音符と地図８）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

暗号の雲が動いている。脱ごうかな。病気が言った。夜になれば一緒に動いてくれる月を思ってとどまる人々を不意打ちで襲う波からの確信。いまとなっては見逃してもらうことはできない。笑う目と針金が殺しにくる。姿の見えない鳥の声に反応するようにブランコが揺れる。（音符と地図９）#k2fact290

福間健二 @acasaazul

音符と地図はもらった。リズムと足は自前。中間に血色のいいＯ君や大男のＯ君がいる。飛行機と救援隊の出番なし。移動しにくい時期のためだけではなく、歌では突き破れない壁がある。当然だと言うな。道を訊くだれかのいとこの摘んだ花をさす、水を入れたコップを用意する。（音符と地図10）#k2fact290