初めて誰かの腕の中にいて啼いた気がした。 見知らぬ誰かでもない、知った相手、りょーまの腕の中で。 初めてではないから緊張した…っということもないが、誘ったのは自分で誘われたのはりょーまだ。 おかしいと疑いながらもいぞーからの誘いを断れなかった。
2021-04-17 23:14:57あんなに穏やかな顔を見せてくれたのは本当に久しぶりで、大事にしたい優しくしたい…そして抱きたい。 恥じらいなんてなかったけども最初から最後まで自分に全てをゆだねてくれた。 いつもの淡々とした性交ではないお互い裸になり互いの体に手を回し口付けを交わした。
2021-04-17 23:14:58いつもみたいにシーツを固く握りしめることはなかった。 何度もりょーまの名を呼び続けた。 非情に徹したいぞーに慈悲はない。 淡々と子供達を斬り続けた。体を治した端から何度も何度も…。 そして、最後に殺してほしいと言葉を聞いた瞬間、殺してやる交換条件を言った。
2021-04-17 23:14:58外を見れば雪がやんでいた。 まるであの時のような晴天が見える。 自分の横で腰に腕を回して逃がさないと言わんばかりの力でしっかりと捕まえ眠る、その顔を見てそっと撫でる。 「もう、わしにあやまり続けんでえいぞ」 頬を撫で生前の傷が残っている額に唇を落とす。
2021-04-17 23:14:59「もう、えい、わしんことは綺麗さっぱり忘れえや、最後、おまんとわしの縁は今晩で最後じゃ、おまんの中から、わしのことは失うなる、これはわしと『世界』の契約じゃ、
2021-04-17 23:14:59最後やき、言うちゃる、たぶん、わしはおまんが好きやったと思う、それがおまんと同じもんかどうかはわからんがの、おりょーと二人、いつか幸せになりや」
2021-04-17 23:15:00外に出て空を見上げる。 久しぶりに見た青い空、真っ青な空だ。雲一つない青空を見て清々しい空だ。 なんていい空だろう。 あの日に見た空を今度は丸まった背中がまっすぐに伸び蒼天を見上げる。 消えるにはいい日だ。本当にいい日だと思う。
2021-04-18 01:37:03りょーまの中からもおりょーの中からも自分は消える、そう消えてしまえばいい、全ての中から過去からも未来からも自分のことなど誰もかれも忘れてしまえばいい。 そうすれば、もしかすると家族の過去が変わり幸せな一生に変わる可能性も出てくる。
2021-04-18 01:37:04自分を助けようとしてくれて最後まで愛してくれて本当にありがとうと…言えるなら言いたい。 昔の事を思い起こし静かに笑う。 悲しかったこと辛いかったこと楽しかったこと色々な事を思い出す。
2021-04-18 01:37:04背筋を伸ばして両の足を地につけて立てるカルデアに呼ばれて恥ずかしいことはしてない、まあギャンブルをしたことには目をつむってもらいたいあれはただの娯楽だ。
2021-04-18 01:37:05だけども自分はマスターの力に少しでもなれた自分のために泣いてくれた悲しんでくれたりょーまの命を救いおりょーとの幸せを考えることができた。 だから、最後は自分で決着をつけよう さようなら、そして、ありがとう、こんな自分を呆れずに大事にしてくれてありがとう。
2021-04-18 01:37:05泣きたいほどに嬉しい、死んで、こんなに幸せな気持ちにさせてもらえて心の底から感謝する。 「わしみたいな、血みどろの人斬りをこがに大事にしてもろうて思い残すことはなか、幸せになれ、それがわしの望むことじゃ」
2021-04-18 01:37:06静かにゆっくりと体が消えていく。後悔はない。 静かにカルデアのデーターベースが動き始める。 カルデアにいた一騎のサーヴァントの記録も記憶も…すべての人間・英霊達の中から消えていく。
2021-04-18 01:37:06ゆっくり、本当にゆっくりと、それは一晩かけて、ゆっくりと消え、そして、書物の中からすらも、ある英霊の名も記録も記憶も、全ての中から存在もその名も生きた歴史も真っ白に無くなった。
2021-04-18 01:37:06真っ白な空間の中で、ただ一人。 消えるには、まだ間があるのか、昔の懐かしい記憶が流れこむ。 もうこれを覚えているのは自分一人。 大人になってから辛いこと悲しいことは思い出すだけで嫌になることが見える。 だけども、優しい人達がいた大事にしてくれた人達がいた。
2021-04-18 23:04:13確かにいたのだ。その人達の幸せを切に願う。もう二度と迷惑などかけないかけることはない。 だって自分は、もう歴史上からも全てから、その存在がなくなるのだ。 一人は…嫌じゃのう… 消えてなくなるとはいえ、また独りぼっちだ。 一人孤独に誰からもその存在を認知されることなく…。
2021-04-18 23:04:14寂しい…辛い…悲しい… それを自らが決めたはずなのに…、決めたんだ、幸せにしてほしい人達幸せになってほしい人達のために自らを捨てた。 だから…悲しくなんてない…辛くなんてない…泣きたいなんて…思って…ない… なのに…どうして… 「どういて…」
2021-04-18 23:04:14どうしても流れてくる、あの時に泣きつくしたはずだ、全部、自分の大事なものを全て捨てたはずなのに…。 「どういて?」 どうしても流れ込む思い出が自分を追い詰める追いかける、まるで…忘れるなと言わんばかりに。 大罪人だから?最後の瞬間まで苦しめと言っているのか、それとも…。
2021-04-18 23:04:15でもだってそうしないとあの優しい幼馴染は自分を引きずって離れないじゃないか。 自分を離さないじゃないか最後まで連れ添おうと神になり損ねた女一人に目を向けず、また無茶をするじゃないか。
2021-04-18 23:22:57ならたとえ小さな存在であろうと自分一人でも消えてなくなれば…もしかするとおりょーをただ一人として目を向けるかもしれない。 だから唇を噛みしめる自分を忘れないでと呼んでほしいと側にいさせてほしいと呼びそうに叫びそうになる声を抑え込む。 呼んだからダメだ。
2021-04-18 23:22:57我慢しないと…自分一人が我慢したらいい…今、ここで我慢できなかったら全部だめになる。 だから我慢する、自分一人の我儘を言ったらだめだ。 だって辛いのも痛いのも泣きたいのも我慢して死んでも走り回り頑張っている幼馴染がいるから。
2021-04-18 23:22:58「どうして?」 消えかける自分に問いかけてくる声。 「そこまで我慢する必要ってあるかな?」 身体が薄らいで記憶も全てが薄らいでいる。 「確かに、あの人の夢は傲慢だ、だけども、その先に貴方がいないといけない」 「?」 「あの人が貴方を座に縛りつけたのは、なぜ?」 「ただの未練じゃろ」
2021-04-20 02:10:47「未練だけで、座に縛りつけるかな?じゃあ、憎むように仕向け続けるのは、なぜ?」 「?」 「質問を続けるよ、貴方だけが彼を憎む権利を得続けてる、怒りを憎しみを向け続けてる、なぜ?」 もう消えてしまう自分にどうしてそこまで質問をする。
2021-04-20 02:10:47