大事な記憶

いぞーさんがりょーまさんの記憶だけなくった話
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かむい @sunyaxxx

だからもう今更だ、今更、その想いを受け入れようなどと思わない。 「わしが、消えたがは次に狙うはおりょーやろ、なら、おまんらあは、ここで殺す」

2021-04-15 23:40:13
かむい @sunyaxxx

泣きながら自分に縋り付いた時だったか、少しずつ本当に少しずつ戻ってきた気がする。 自ら捨てた記憶だ、わからないふり知らないふり思い出さないふりをしていた。 ただ自分が死ぬことは本当に忘れていた。死にたくないもっとマスターの役にも立ちたい楽しみたい。

2021-04-16 22:32:12
かむい @sunyaxxx

誰が好き好んで死にたいなどと思うのもか、ただ疲れた、ちょっと疲れただけだ。 だらりと両手をおろし、 「戻んて、報告せにゃ」 あとどれくらいだろう…一歩踏み出せば耳に馴染んだ血を踏む音、そしてなじみのある臭い。 「りょーま、おりょー、おまんらを邪魔する奴は斬ってやったきに」

2021-04-16 22:32:12
かむい @sunyaxxx

いつからだろう、きっと本当は最初から、きっと××だった。 だから羨ましい側にいたい手を離さないでほしい、ただの一度だけでも、意地っ張りの自分を側において離さないでほしかった 顔を暗い空にあげれば滲んで見える丸い月が見えた。

2021-04-16 22:32:13
かむい @sunyaxxx

「これはどういうことだろう、特異点が消えた?」 だ・ヴぃんちも首を捻る。 いぞーに任せた仕事は、まずは諜報活動。 だがカルデアにいぞーが誰かと『戦闘した』という記録があがってこない。

2021-04-17 01:22:49
かむい @sunyaxxx

自然に消えた。見つけた時にはとてつもなく大きなものだったはずだ。だからまずそれに長けたいぞーに行ってもらった。 いぞーは、自分で言うほど頭が悪いことは決してない。

2021-04-17 01:22:50
かむい @sunyaxxx

その場の突発的・瞬間的な判断力も優れている、ただ自分で思い込んでいるだけだ、自分は頭が悪いと、それは生前に言われ続けたことを鵜呑みにし劣等感をもっているのだ。 「戻んてきたぞ」 血の一滴も見せず臭いもさせず淡々と報告し始める。

2021-04-17 01:22:50
かむい @sunyaxxx

「何もなくって結構な大きさの特異点が自然消滅…う~ん、信じられないけど、君は嘘をつけるタイプの人間じゃないからなあ」 ますます頭をひねるだ・ヴぃんちに対して、 「だれたきに、部屋に戻んてもえいがか」

2021-04-17 01:22:50
かむい @sunyaxxx

「あ、そうだね、でも、メディカルルームには行ってほしいな、君はまだ万全ではないんだからね」 「わかっちゅうちや」 言われたとおりに身体の検査を受ける相変わらず何も異常はない。

2021-04-17 01:22:51
かむい @sunyaxxx

いつも通り記憶を取り戻すための薬を飲んで終わりだ、まあ、その薬ももう飲む必要はないのだが。 部屋に戻るためには廊下を歩かなければならない廊下の横はガラス張りで外が見える。 カルデア内の空調はよく効いているために寒さを全く感じない、それでも外を見れば雪が吹雪いている。

2021-04-17 01:22:51
かむい @sunyaxxx

どこまでも真っ白で、まるで小さな頃を思い出す。 何も考えず何も知らず、ただ純粋だったあの頃、二度とは戻れないが。 「何を考えてるの?」 側に控えているおりょーの姿はなく一人でいぞーを迎えに来たようだ。 「こがに降る雪はみたことないにゃあ思うてな」

2021-04-17 01:22:52
かむい @sunyaxxx

「僕達が生まれ育ったところは比較的温かかったからね」 「ほうじゃの」 「だからさ、雪が降るとはしゃいだね」 「ほうじゃの」 小さく笑ういぞーの顔を見る。 普段なら用事がないならといういぞーが、この間怒らせてしまったというのに笑う顔は本当に穏やかで…。

2021-04-17 01:22:52
かむい @sunyaxxx

「けーきちもおおはしゃぎでわしを引っ張りまわしてのう、どこじゃどうじゃ言うて走り回る、ほいで滑って転んでべっしゃや」 外を見ながら懐かしそうに目を細めて言う言葉。 カルデアにきていぞーがこんなに懐かしんで話をすることがあっただろうか…記憶を失くしてなからもあっただろうか。

2021-04-17 01:22:52
かむい @sunyaxxx

「けーきちくんは、小さかったからね」 「六つも違やあ、まあ、好きにするわな、わしはいっつも損ばっかじゃ」 「でも、いぞーさんは、優しかったから、それでもけーきちを責めたことなかったよ」 「あ~ほ、わしとけーきちは喧嘩ばっかしよかったわ、ま、あいたあに負けたこたあないがの」

2021-04-17 01:22:53
かむい @sunyaxxx

「男兄弟だからね」 笑いながら話をする、りょーまは、いつもいぞーの弟のけーきちを羨ましく、そして妬ましく思ったこともあった。 いぞーよりもけーきちよりも年が上だからと…年上ぶるので精一杯だった。

2021-04-17 01:22:53
かむい @sunyaxxx

けーきちが生まれるまではいぞーはいつだってりょーまを優先してくれていた、だけどもけーきちが出てきたからは兄としての自覚が出始めいぞーはいっそう両親の役に立とうと頑張った。 そして生まれた弟の面倒を見てりょーまを後回しにした、一度だけ、それで一度だけりょーまがごねたことがある。

2021-04-17 01:22:54
かむい @sunyaxxx

自分からいぞーをとるなと、それを言われたいぞーは困った、けーきちを背に抱えながら困ってしまったことがある。 それでもだっていぞーだってりょーまといる方が楽しい、色々なことを教えてくれるけども…振り回されることが多いけども…いぞーを大事にしてくれてるから…。

2021-04-17 01:22:54
かむい @sunyaxxx

「おまん、今からわしんく来るか」 柔らかな顔で優しい言葉で、 「おまん、わしんこと好きながやろ、やきわしを『抱き』にくるかえ」

2021-04-17 01:22:54
かむい @sunyaxxx

初めていぞーの口から『抱く』という言葉が出てきた。 いつもなら自信を『穴』としか言わなかったのに。 何を思って何を考えて穏やかで優しい言葉で自分を誘うのか。 「僕は、いぞーさんを抱きたい、けど、何を隠してるの?」 話をする前から違和感がつきまとっていた。

2021-04-17 01:43:32
かむい @sunyaxxx

廊下であった…いや、一人で帰還してきたいぞーを迎えに行く前から胸騒ぎがとまらない頭の中でうるさいほどに鳴り響く警笛が。

2021-04-17 01:43:32
かむい @sunyaxxx

「おまんの想いにいっぺんくらい応えちゃろか思うただけじゃ、わしは生前から恋仲になるような奴はおらんき上手く真似事ができるかわからんが…いんやまあ真似事くらいならできるちや、やけんど、いっぺんくらいはわしも想いの通じあった気になってみたいのう思うたぜよ」

2021-04-17 01:43:33
かむい @sunyaxxx

「通じ合ったみたいなじゃなくて、僕は、…」 「わしの頭そがなところはちゃがまらされちょるき、わかりゃあせん」 怖いくらいに真っすぐに見て言われる言葉が怖い。

2021-04-17 01:43:33
かむい @sunyaxxx

「殴られ蹴られ斬られりゃ痛い、ひどい言葉ぶつけられりゃ頭にくる、楽しい時は笑う美味いもん食やあ嬉しい、ほいでもわからんのは人を好きになる気持ちじゃ、両想いっちゅうやつやろか、そがなんだけは今でもわからん、

2021-04-17 01:43:33
かむい @sunyaxxx

生前に金がある時に遊び女をなんべんも買うて寒い時寂しい時にゃああっためてもろう術は知っとっても、心から通じ合ったもんはおらんきに」 「僕は、いぞーさんと心から通じ合いたいよ」 また泣きそうな顔でそんな事を言われたら困る。

2021-04-17 01:43:34
かむい @sunyaxxx

「なら、おまんがわからせえや、冷えた心でもちゃがまった頭でもわかるようにゃあ、『さかもとさん』」

2021-04-17 01:43:34
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