「普通のPCR」と「蛍光プローブのリアルタイムPCR」は似て非なるもの。前者の経験で後者を評価する事は愚かな行為(PCR検査抑制プロパガンダ)である(2021.5.5作成) #新型コロナウイルス

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✄------------ 2/21(日) -----------✄

2021-02-21 00:00:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

医療者の中には「普通のPCR」を『大学院で嫌というほどやった』という方、『実習でやった』という方、『全然覚えてない』という方、様々おられるだろう。 議論の前提として「普通のPCR」をどの程度、理解しておられるかを把握するうえで有用なのが、次の質問である。(続く

2021-02-21 19:01:27
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承前) Q1.プライマーをデザインするときに3'末端(伸長側)に置いてはならないのは A / T / G / C のどれでしょう。 Q2.では最善のものはどれでしょう。(続く

2021-02-21 19:01:28
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前) 答えの前に、資料をお示しする。 プライマーの3'末端の1塩基を除いて他が完全に鋳型とマッチしていて、3'末端の1塩基だけが合わない場合に、そのまま伸長が進む効率を相対的に示したものである。 Nucleic Acids Res. 1992 Sep 11; 20(17): 4567–4573. (続く ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P… pic.twitter.com/wW2xfIC2Kq

2021-02-21 19:01:29
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承前)右側4つの組み合わせでは、mispairのまま伸長することはまずない。他方、プライマーの3'末端がCで、鋳型の対応塩基がTの場合は、1万倍近い効率でそのまま伸びてしまう。 最もダメなのがTで、鋳型の相手がどの塩基であれ、mispairで伸長が進みやすい。これがQ1.の答え。(続く

2021-02-21 19:01:29
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)Q2.の答えは、資料から読み取れるとおりG。 DNAが塩基対を形成するときの水素結合の本数はATpairで2本、GCpairで3本。正しい相補であれば後者のほうが強固に結びつく。このことから「3'末端にはGorC」を推奨する教科書もあるが、CとTのmispairを考えた場合、最善はGということになる。(続く

2021-02-21 19:01:30
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)参考資料として分子生物学で必ずお世話になるQIAGEN社の技術教本。 スクショはその11ページから。(続く qiagen.com/jp/resources/r… pic.twitter.com/3vGkmEJ3ym

2021-02-21 19:01:31
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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)引用した文献は1992年のものである。それが教科書的事項としてコンセンサスを得るのに数年かかったとして、少なくとも2000年以降に「普通のPCR」を手がけてQ1.が答えられない方は「緻密な学び」を得ていない。(続く

2021-02-21 19:01:31
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)同様に、教授クラスの研究者でいらっしゃっても、このことを御存知ないようなら、失礼ながら知識のアップデートが不十分だと考える。 2006年の教科書から、鎌倉幕府が1192から1185に変わったことを御存知ないのに通じるものがある。(了

2021-02-21 19:01:32
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✄------------ 5/2(日) ------------✄

2021-05-02 00:00:00
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

今なお『無症状者からの感染は起こらない』とおっしゃる方がおられるが、それは誤りであり実態を御存知ない。 寝たきり自宅介護で家を一歩も出ていないおじいちゃんが発熱して新コロ陽性、訪問看護側には異変なし。家族を調べてみたら大学生の孫が陽性で『えっ、俺?』。孫は徹頭徹尾無症状。(続く

2021-05-02 16:34:04
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)2021年1月の米国医師会雑誌JAMAに出た疾病対策予防センターCDCからの論文。感染源となるのは、発症前presymptomatic 35%、全経過無症状never symptomatic 24%。逆に、そこまで多いのかと驚かされるほどである。 jamanetwork.com/journals/jaman…

2021-05-02 16:34:04
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✄----------- 5/3(月祝) -----------✄

2021-05-03 00:00:00
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

医療や科学の背景をお持ちの方を読者と想定して、週末に長文を書いています。一般向けではありません。 2020年 9/6 rRT-PCRの位置づけ 9/28&10/4-5 ソフトバンク2000円検査 10/11-12&18 Ct値変動要因と大小議論の無意味 10/26 特異度について医療者へ 11/3&15 体操選手の偽陽性 つづく

2021-05-03 14:06:50
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

11/30&12月 CQ形式で疑問に答える     ※偽陽性やCt値をやや一般向けに 2021年 1/2 当院内科医が推すイベルメクチン 1/9-11 蔓延期の院内防疫とパンサー 1/18 偉い先生方と末端技術者のギャップ 2/21&28 PCR専門家を見分ける基本的質問 3/7&14 LAMPと抗原検査の現状

2021-05-03 14:06:50
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

「蛍光プローブのリアルタイムPCR」の元技術者としての学びを医療者や科学者の皆様に還元するために書いています。どの業界にも共通基盤となる教育や知識があり、語彙レベルを下げたり噛み砕いて説明することで本来のターゲットに意図したニュアンスで伝わらないことは、最も避けたいと考えています。

2021-05-03 14:10:22
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

医療者の間で、いまだに「蛍光プローブのリアルタイムPCR」についての理解が進んでいないのを見るにつけ、暗澹たる気持ちになる。他者に突っかかっていって議論する時間も余力もないので、ここを御覧になった方にだけ、届けば良いと思って書く。

2021-05-03 21:39:37
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

プロフィール代わりの定期上げ。デジャブの方はスルーで。 蛍光プローブのリアルタイムPCRに、年余に亘って専従に近い格好で関わった過去をもつ。 TaqManには今や180万種類もの既製品が網羅されており、安直に買って使うだけの時代になった。設計や条件設定に悪戦苦闘した経験を持つ珍奇な人なのかも twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-05-03 21:42:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

FRET蛍光プローブのリアルタイムPCRの系の設計は20ほど行った。米国Applied Biosystems/Life Technologiesのテクニカルマネジャーとdiscussionしつつsingle cellからの3color multiplexの系も作った。probeを相補鎖側に作り直して成功するなどテクニカルな機微を多数経験した。

2020-08-02 17:17:47
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

「普通のPCR」と「蛍光プローブのリアルタイムPCR」は似ているようで全く別モノである。喩えるなら競泳とアーティスティックスイミングのようなものである。類似した道具や仕組みを使うが、目標が全く異質である。医療者の多くは、前者の経験をもって後者を理解したつもりになっておられるように思う。

2021-05-03 21:51:06
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

たしかに、「普通のPCR」の経験があれば「蛍光プローブのリアルタイムPCR」の仕組みを理解することは容易だろう。しかし、それだけでは他人が言うことを理解したに過ぎない。後者の経験がない状態においては、なまじ前者の経験があることが却って後者の理解を歪める・・・そのさまをこの一年見てきた。

2021-05-03 22:07:33
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

この「却って正しい理解を妨げる」という現象は、基盤となる「普通のPCR」自体がブレの大きい技術であるという、ある意味「不幸」とも言えることに起因すると思っている。 多様な要因(塩基配列・機器・試薬・条件)に大きく影響を受けるためノンスペ(望んでいない産物の生成)の経験は不可避なのだ

2021-05-03 22:20:40
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

「普通のPCR」を多少かじったことのある方よりも、ある程度やりこんだ方のほうが、PCRの「いいかげん」な部分、すなわちプライマーが完全相補でなくても反応が進んだり、想定外の別領域を増幅してしまったり、そういうところを知ってしまっている。それが蛍光プローブのリアルタイムPCRを誤解させる。

2021-05-03 22:29:06
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

では、そもそもの基盤となる「普通のPCR」について丁寧な教育を受けられましたか。 それを問うたのが下記2月の質問。『PCRに詳しい』と胸を張るなら即答いただきたい。 全世界共通の「キアゲンのパンフ」しかも自社製品に誘導しない教育資料に書いてあるくらいの一般的事項 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-05-03 22:46:33
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

「普通のPCR」のプライマー設計は、「cloning目的なので、まぁ走ればいい」から「類似配列鋳型が漂う海からhighly specificに一本釣り」までピンキリだが、後者であっても目的産物が得られさえすれば良いので、ダイマーができようが、効率が悪かろうが、目的は達せられる。

2021-05-03 23:05:15
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

そこへきて「蛍光プローブのリアルタイムPCR」のプライマー、プローブ設計は面倒である。 ダイマーやヘアピンやノンスペが許されないのは当然として、プローブがアンプリコンの二次構造に邪魔されない、適切なTm値で絶対にプローブが先につく、などをクリアして増幅効率100%に近い系を作り上げる。

2021-05-03 23:20:00