教授&臨床医vs末端技術者【青島1089万人PCRの報告で証明された偽陽性ゼロ・特異度100%と、体内分布に起因する偽陰性】正しく理解しているのは?(2021.5.4作成) #ベイズの定理 #新型コロナウイルス

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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④分子生物学フィールドには、私よりも深く技術を修めた方がおられ、早い時期から特異度についての世間の認識の誤りを指摘してこられたが、それが浸透せぬまま今に至った。 教授&臨床医の、専門領域で秀でていることからくる万能感が、実際に扱う技術者の声を受け入れ難くしたものと思慮する。

2021-01-17 22:54:36
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑤翻って諸外国に目を向けてみると、感染の蔓延に至っていない国では、特異度/感度/LODを含めた蛍光プローブのリアルタイムPCRの科学的理解が政策や診療に活かされている。 これは行政に入れ知恵するブレインや、医療をリードする指導的医師が、この特殊な技術の性質を正しく受け止めたからである。

2021-01-17 22:54:36
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑥そうは言っても、欧米の状況を見るに「PCRを十分に拡充していれば蔓延を防げた」とは思わない。私は社会防疫には詳しくないので強くは主張しないが。 特異度はきわめて高い一方、体内分布の問題から感度はそれほどでもない。取りこぼしは不可避にして少なくもない。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-17 22:54:37
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最近フォローくださった皆様に、過去ツイを引いてお断り、その1。 私はrRT-PCRの「特異度がきわめてきわめて100%に近い」すなわち「偽陽性はほぼ出ない」ということのみ主張しており、感度については『そりゃ取りこぼしもあるでしょう』という立場である。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2020-08-11 00:04:46
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⑦ただ惜しむらくは日本では特異度の過小評価がメインストリームを為した結果、検査体制充実が遅々として進まなかった。 社会防疫どころか院内防疫や有症状者診断にすら事欠く現状を見るに、【発言力のある人が何もかもを見通せているわけではない】と国民が知ることこそ、重要だと感じている。(続

2021-01-17 22:54:37
日付切取線 @krtr_date

✄------------ 1/18(月) -----------✄

2021-01-18 00:00:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

教授&臨床医vs末端技術者(その3) ①特異度と感度の話に戻る。臨床検査における常識として、結果をどの程度真に受けて良いかは事前確率に影響される。ベイズ推定である。 御存知のとおり、「有病率が低い状況下の陽性」「有病率が高い状況下の陰性」は、ほぼ嘘(真実は逆)だという考え方である。

2021-01-18 00:20:04
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②結核やそのお仲間を診るでもなく、ウイルス性肝炎やHIVを診るでもない私は、新コロ以前にはベイズ推定の例外が身近に存在していることを認識していなかった。 ところがである。私が長く関わってきた、蛍光プローブのリアルタイムPCRがまさにそれであった。

2021-01-18 00:20:04
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③特異度や感度、すなわち検査の性能はプライマーとプローブの出来に大きく左右される。これは単純に机上の計算だけでは分からない。 培養細胞では機能していた発現定量系が、患者検体ではダメで、かと思いきやその患者検体から目的の細胞だけをセレクションしたら機能したり。そんなこともあった。

2021-01-18 00:20:04
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④つまり、設計と用途が合致してはじめて、検査の性能は最適化される。幸いなことに、世界中の研究者が設計した系は、人を宿主として新コロを検出するのに、願ってもないほどの特異度を示した。 私はこれを「地獄に仏」と表現したこともある。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-18 00:20:05
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

4-⑤Analytical and Bioanalytical Chemistry10月号。世界各国からの核酸増幅検査の性能に関する論文をまとめてある。ほとんどの検査システムで特異度は100%としている。 実際のところ、【前述の陽性基準に照らして】偽陽性を出さないものが商品として供給されている。 link.springer.com/article/10.100… pic.twitter.com/Wmy80y5FUe

2020-11-15 21:44:24
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑤コンタミや情報伝達ミスといったヒューマンエラーを除けば、偽陽性は出ない(特異度100%)と考えて行動できる。これはベイス推定が適用されない例外中の例外と言える。 このことを受け入れられない、研究者や臨床医の先生方がおられたし、今もおられるだろう。 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-18 00:20:05
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

①発信力の強い先生方が、蛍光プローブのリアルタイムPCRについて、特異度99%だのベイズ(事前確率)だのを持ち出して、一般の皆様のみならず医療者をも欺く結果となった。 実際には偽陽性はきわめて出にくいため特異度は100%として行動してよい。事前確率を無視できる、検査としては例外中の例外。

2020-10-26 02:11:44
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑥他方、感度についてはベイズ推定が適用されると考える。以前に2020年5月の英国医師会雑誌の論説を解説したが、有病率が上昇している今まさに、現場でそれを実感している。 陰性の結果を、額面通りに受け取ると痛い目に遭う。 bmj.com/content/bmj/36… twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-18 00:20:05
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

【後編】Table1の右側は1回陽性のときの検査後確率だが、特異度を95%と低く見積もっているため、陽性の信頼度が低い結果になっている。現在主流となっている蛍光プローブのrRT-PCRは特異度が100%にかぎりなく近いので、実際には陽性の曲線は天井に張り付くと考える。(長文続く

2020-07-27 00:53:40
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

⑦加えて感度を低下させる要因は様々あり、同一検体でも検査方法によって陰性陽性の判断が分かれ得る。 ともあれ、先生方には【出来の良いプライマーとプローブを使用すれば】特異度は事実上100%と認識いただきたい。ベイズを踏まえてなお、末端技術者として説いておく(続 twitter.com/kakeashi_ashik…

2021-01-18 00:20:06
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)自施設でも唾液からのダイレクト(1step)と、同一検体から標準的プロトコルでRNA精製を経た2stepでは最大で8も違った。増幅効率100%として2の8乗、256倍の濃度差として検出されたことになる。くどいようだが同一検体だ。(続く

2020-12-07 00:15:59
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

教授&臨床医vs末端技術者(その4) ①長くなってしまったが、連ツイの結びを。 蛍光プローブのリアルタイムPCRは、分子生物学では遺伝子の発現量や多型の分析に使用されている技術である。目的の2本鎖DNAを増やす「普通のPCR」とは似て非なるものであるのは御存知のとおり。

2021-01-18 01:44:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

②その結果を見るだけの立場の教授クラスの先生方や臨床医の先生方には、当該技術の御経験がない方も多いのだろう。細やかな設計を行いデータの解析を行う末端技術者研究者にとっては当たり前のことが、見えておられないように感じている。

2021-01-18 01:44:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

③こう書くと偉い先生方の反感を買うかもしれないが、ベテランの研究者や臨床医よりも院生のほうが、(それをサイエンスとしてどう組み立てるでかではなく)「個々の技術論に限っては」詳しく正しいことは往々にしてある。

2021-01-18 01:44:02
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

④セルソーターの扱いはその良い例だろう。最新の機械を使って5色6色のゲーティングをしてコンペンセーションをかける、その過程で生じる問題点とその対処なんてものは、実際に手を動かしてこそ学び語れることだと思う。

2021-01-18 01:44:02
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⑤機器や試薬は進歩する。先生方の過去の御経験だけでは最新技術を論じるには足らない、院生以下ということも十分にあり得る。これは実験を離れた私にもあてはまると自戒しつつ終わろうと思う。 遅きに失したが、currentに手を動かしている分子生物学の末端の人たちの意見を今こそ重んじるべき。(了

2021-01-18 01:44:02
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✄------------ 2/21(日) -----------✄

2021-02-21 00:00:01
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

医療者の中には「普通のPCR」を『大学院で嫌というほどやった』という方、『実習でやった』という方、『全然覚えてない』という方、様々おられるだろう。 議論の前提として「普通のPCR」をどの程度、理解しておられるかを把握するうえで有用なのが、次の質問である。(続く

2021-02-21 19:01:27
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前) Q1.プライマーをデザインするときに3'末端(伸長側)に置いてはならないのは A / T / G / C のどれでしょう。 Q2.では最善のものはどれでしょう。(続く

2021-02-21 19:01:28
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前) 答えの前に、資料をお示しする。 プライマーの3'末端の1塩基を除いて他が完全に鋳型とマッチしていて、3'末端の1塩基だけが合わない場合に、そのまま伸長が進む効率を相対的に示したものである。 Nucleic Acids Res. 1992 Sep 11; 20(17): 4567–4573. (続く ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/P… pic.twitter.com/wW2xfIC2Kq

2021-02-21 19:01:29
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承前)右側4つの組み合わせでは、mispairのまま伸長することはまずない。他方、プライマーの3'末端がCで、鋳型の対応塩基がTの場合は、1万倍近い効率でそのまま伸びてしまう。 最もダメなのがTで、鋳型の相手がどの塩基であれ、mispairで伸長が進みやすい。これがQ1.の答え。(続く

2021-02-21 19:01:29
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)Q2.の答えは、資料から読み取れるとおりG。 DNAが塩基対を形成するときの水素結合の本数はATpairで2本、GCpairで3本。正しい相補であれば後者のほうが強固に結びつく。このことから「3'末端にはGorC」を推奨する教科書もあるが、CとTのmispairを考えた場合、最善はGということになる。(続く

2021-02-21 19:01:30
Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)参考資料として分子生物学で必ずお世話になるQIAGEN社の技術教本。 スクショはその11ページから。(続く qiagen.com/jp/resources/r… pic.twitter.com/3vGkmEJ3ym

2021-02-21 19:01:31
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Cheeman M.D.,Ph.D. @kakeashi_ashika

承前)引用した文献は1992年のものである。それが教科書的事項としてコンセンサスを得るのに数年かかったとして、少なくとも2000年以降に「普通のPCR」を手がけてQ1.が答えられない方は「緻密な学び」を得ていない。(続く

2021-02-21 19:01:31