2021/03/19
東京弁護士会所属。インテグラル法律事務所シニアパートナー。ネット関係の事件(開示請求、削除請求等)が4割、法人事件(顧問、企業間紛争等)が3割、個人事件(遺産相続、離婚、債務整理等)が3割程度で、事件の種類は幅広く扱っています。
はるかちゃんさんと石川優実氏の差異裁判は先ほど結審し、5月26日13時30分に判決言い渡しとなりました。掲載部分の文字だけ比較すると、kutooがKuTooに変更されているだけですが、会話相手とのやり取りに過ぎない表現を、書籍内で石川氏やKuToo運動に対するバッシングの意味に改変したことが→
2021-03-19 16:48:10公正な慣行に合致せず、また、クソリプの定義に当たらないツイートを引用することは、引用の目的との関係で正当な範囲に含まれないことから、引用の要件を満たさず複製権ないし翻案件を侵害する、また、上記表現の改変が同一性保持権を侵害するとの当方の主張が認められると良いなと思います。
2021-03-19 16:48:10※整理
- はるかちゃんさんと石川優実氏の裁判は先ほど結審し、〔2021年〕5月26日13時30分に判決言い渡しとなりました。
- 〔元ツイートと書籍『#KuToo (クートゥー)──靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館) への〕掲載部分の文字だけ比較すると、kutoo が KuToo に変更されているだけですが、
〔第三者である〕会話相手とのやり取りに過ぎない表現を、書籍内で石川氏やKuToo運動に対するバッシングの意味に改変したことが 公正な慣行に合致せず、
また、クソリプの定義に当たらないツイートを引用することは、引用の目的との関係で 正当な範囲に含まれないことから、引用の要件を満たさず 複製権ないし翻案件を侵害する、
また、上記表現の改変が 同一性保持権を侵害する
との当方の主張が 認められると良いなと思います。
2021/05/05 小沢一仁弁護士、原告側の主張と争点を語る
はるかちゃんさんの裁判について、いろいろな見解が散見されますが、誤解による新たな問題の発生を防ぐために、本人の了解を得て、あらかじめお伝えします。まず、本件ではツイートが著作物にあたることは当事者間に争いがないので、これを前提に原告の主張や争点を整理すると次のようになります。→
2021-05-05 17:34:24①複製権侵害 ・著作物は無断で利用できないのが原則 ・例外的に引用の要件を満たすときは無断で利用することができる ・本件では引用の要件を満たすかの判断において、二者間の会話における表現を石川氏(ないしKuToo運動)に向けたバッシングという表現に改変したといえるか、いえるとして→
2021-05-05 17:34:24公正な慣行に合致するといえるか、クソリプの定義に当たらないツイートを引用することが引用の目的上正当な範囲内といえるかが争点 ②同一性保持権侵害 ・著作者の意に反して著作物を改変等することはできない ・本件では、上記表現の改変があったとして、同一性保持権が侵害されたといえるかが争点→
2021-05-05 17:34:25③名誉感情侵害 ・社会通念上許容される範囲を超えて名誉感情を侵害された場合は名誉感情が違法に侵害されたといえる ・本件では、はるかちゃんさんは匿名アカウントだが、匿名ゆえに人格が忠実に反映されているといえるから、匿名が名誉感情侵害を否定する理由になるか、ならないとして→
2021-05-05 17:34:25見開き右の内容が名誉感情を違法に侵害するかが争点 ④誤解されていると思われる点 ・ツイートの引用について、ツイート特有の判断がされるわけではない(引用の適否は従来通りの枠組みで判断される) ・当方が敗訴しても、書籍における引用が適法、表現の改変に当たらないと判断されただけであり、→
2021-05-05 17:34:26ツイートを無条件に無断利用してよいことにはならない ・被告ら側は裁判を無視しておらず、応訴している(1回目の期日は制度上欠席が認められます。答弁書を提出しておけば欠席による不利益もありません。) 権利救済のための裁判で新たな権利侵害が生じては本末転倒なので、ご理解ください。
2021-05-05 17:34:26※整理
- はるかちゃんさんの裁判について、いろいろな見解が散見されますが、誤解による新たな問題の発生を防ぐために、〔原告である はるかちゃんさん〕本人の了解を得て、あらかじめお伝えします。
- まず、本件〔訴訟〕では ツイートが著作物にあたることは当事者間〔原告/被告双方〕に争いがないので、これを前提に 原告の主張や争点を整理すると 次のようになります。
- ① 複製権侵害
- 著作物は 無断で利用できないのが原則
- 例外的に 引用の要件を満たすときは無断で利用することができる
- 本件では 引用の要件を満たすかの判断において、 (a) 二者間の会話における表現を 石川〔優実〕氏(ないし KuToo運動)に向けたバッシングという表現に改変したと いえるか、いえるとして〔その改変は〕“公正な慣行” に合致するといえるか、(b) クソリプの定義に当たらないツイートを引用することが “引用の目的上正当な範囲内” といえるか が争点
- ② 同一性保持権侵害
- 著作者の意に反して著作物を改変等することは できない
- 本件では、上記〔した〕表現の改変があったとして、同一性保持権が侵害されたといえるか が争点
- ③ 名誉感情侵害
- 社会通念上許容される範囲を超えて名誉感情を侵害された場合は 名誉感情が違法に侵害されたといえる
- 本件では、はるかちゃんさんは匿名アカウントだが、匿名ゆえに〔むしろ〕人格が忠実に反映されているといえるから、匿名が名誉感情侵害を否定する理由になるか、ならないとして 〔当該書籍の〕見開き右〔ページ〕の内容が〔原告の〕名誉感情を違法に侵害するか が争点
- ④ 誤解されていると思われる点
- 〔本件において〕ツイートの引用について、ツイート特有の判断がされるわけでは ない (引用の適否は 従来通りの枠組みで判断される)
- 当方が敗訴しても、書籍〔石川優実『#KuToo』(現代書館, 2019)〕における引用が適法、表現の改変に当たらない と判断されただけであり、ツイートを無条件に無断利用してよいことには ならない
- 被告ら側〔石川優実氏および株式会社現代書館〕は裁判を無視しておらず、応訴している (1回目の〔口頭弁論〕期日は制度上 欠席が認められます。答弁書を提出しておけば 欠席による不利益もありません。)
- 権利救済のための裁判で 新たな権利侵害が生じては本末転倒なので、ご理解ください。
2021/05/06
はるかちゃんさんの裁判では、引用の要件論も問題になります。明瞭区別性と主従関係の二要件を満たせば足りるのか、公正な慣行、正当な範囲という文言にしたがって、引用の目的や態様等を総合的に考慮するのかで主張が対立しており、この点は学説上争いがあります。今回の判決がどちらの立場を→
2021-05-06 12:32:45取るのかというのが、気になるところです(なお、学説の対立状況はもっと複雑です)。当方は後者の立場を前提にした主張をしています。
2021-05-06 12:32:46
応答
え。前者の立場なんてあるんですか?条文上「公正な慣行に合致するもの」と明言されている以上、流石にそれは、文言を軽視し過ぎでは……? twitter.com/ozawakazuhito/…
2021-05-07 11:18:28※引用されているのは、小沢一仁弁護士の次のツイート(前掲);
- 「はるかちゃんさんの裁判では、引用の要件論も問題になります。
(A) 明瞭区別性と主従関係の二要件を満たせば足りるのか、(B) 公正な慣行、正当な範囲という〔著作権法の〕文言にしたがって、引用の目的や態様等を総合的に考慮するのか で主張が対立しており、この点は学説上争いがあります。
今回の判決がどちらの立場を取るのかというのが、気になるところです(なお、学説の対立状況はもっと複雑です)。
当方〔原告〕は後者(B) の立場を前提にした主張をしています。」(2021/05/06) https://twitter.com/ozawakazuhito/status/1390147496983158786
@tatuya25876765 あります。というか、従来は主流の見解でした。ただ、近時はさまざまな事情を取り込んで検討する見解が有力になっています(それを、あくまでも二要件の枠組みを崩さずに主従性判断の考慮要素とするとか、公正な慣行等条文上の要件において考慮するとか、そこでも見解が分かれていますが)。
2021-05-11 21:05:34@ozawakazuhito 返答ありがとうございます。あのあと、「旧著作権法下で出たパロディ・モンタージュ写真事件」の影響を受けて前者が長らく主流の見解だったと教えていただきました。自分も、パロディ・モンタージュ写真事件自体は知ってたのですが、まさかそんな影響があったとまでは知らず、不勉強でした。
2021-05-11 22:58:59@tatuya25876765 純粋に明瞭区別性と主従性のニ要件を当てはめると、おそらく本件では引用が成立します。しかし、本件に限らず、それでは不都合な事案が出てくるので、修正を繰り返して総合考慮をするという流れがあります。総合考慮説は柔軟な分予測可能性を欠くため表現が萎縮するという側面もありますが、
2021-05-14 03:26:06@tatuya25876765 私としては、常識的な利用をしていればそう簡単には要件から外れないだろうと思いますし、もともと引用は著作権の例外ですから、原著作物の保護が実質的にされるような基準の方が望ましいと思います。
2021-05-14 03:28:39@ozawakazuhito 短歌・俳句のような短い著作物の場合、シンプルな二要件では都合悪いですし(本歌取りの技法もありますし、作句の指導上、他の句を紹介する必要もあります)。 twitterでの引用の要件は、少なからず気にはなっています(同一性保持権侵害が決め手になる気もしてます) (by 俳号持ち)
2021-05-07 01:42:54@online_checker シンプルなニ要件説は、少なくとも現在の裁判所では採用されていないと思います。引用の要件でググるとよく出てきますが、例えば前知財高裁所長の高部裁判官は自著で総合考慮説に肯定的な見解を述べています。
2021-05-14 03:34:35