ストレイトロード:ルート140(56周目)

オリジナル短編「ストレイトロード」をベースに、毎日1作ずつ投稿している掌編という名の習作。 今回は2751~2800+おまけ。終盤のリクエスト回数以外の共通テーマは……今回は特になし。なお各話の内容につながりはありません。 今後も引き続き1日1組つぶやいていきます。 続きを読む
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Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

電波が弱い、と藍が口を尖らせた。建物の屋上を仰げば見えるアンテナは、怪物に破壊されたか奇妙に折れ曲がり、使い物にならない様子だ。藍は修理業者に電話をかけ、私は仕方なく紙に印字された資料を読み込むことにした。途中で端末に視線を戻すと、データの読み込み中と表示されたまま固まっていた。

2021-05-09 18:53:33
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2788。読み込む。

2021-05-09 18:53:34
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

私達を含めた車列を立ち往生から救った男は何者か。端末の写真を頼りに麓の町を探し始めると、数分後にまず名前が判った。その素性を誰に尋ねても礼賛の言葉ばかりが返ってきた。「いつもそんなことを?」人々の話を積み重ねるほど藍が眉を寄せるようになった。「多すぎる。同じ人が何人もいるみたい」

2021-05-10 18:45:15
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2789。礼賛(らいさん)。 「れいさん」ではない。

2021-05-10 18:45:16
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

長老の裏の顔を藍が暴露した翌朝、私達が滞在する宿の入口が抗議の長文に覆われていた。メールではなく貼り紙。物量も内容も嫌がらせだ。「ボスを守りたくて必死なのね」余所者から見れば自分を了見が狭い人間として宣伝している格好だが、本人は気づかないのが世の常だろう。「これ見て、誤字だらけ」

2021-05-11 19:22:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2790。了見。 どんな時代でも人の発想はあまり変わらない。

2021-05-11 19:22:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

研究員ウェンズが怪物の謎を追うと決めた契機は学生時代のルームメイトだという。「そいつ、山が好きで。止めたのに登ったきり戻らなかった」地図上の位置を教えられた藍は現場に風を送ろうとしたが、失敗したらしい。「道案内が必要な場所だった」「よし、いつか調査に行こう」今度とは言わなかった。

2021-05-12 18:49:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2791。ルームメイト。

2021-05-12 18:49:36
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「あの人が来るらしいよ」街角の噂を小耳に挟んだ。容姿の話ばかりなので、誰もが余程の麗人を想像するのだろう。だがその肩書きを聞くや、藍は撤退を決めた。深紅の慈善家の他にも避けたい女性がいたとは。「嫌いではないけど、一緒にいると大変なの」性格の問題か。まさか能力の相性ではないだろう。

2021-05-13 18:58:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2792。麗人。

2021-05-13 18:58:19
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

野宿を決めた谷底へ、怪物に追われた人々が現れた。枯れた川づてに町を目指そうにも道は暗い。一人が怯えた声で私達に言った。「灯りを分けてくれませんか」私が事情を尋ねる前に藍が許可した。雇い主の意向を探りつつ薪を配り炎を宿らせる。灯火の川が動き始める頃、上空には煙から逃げる怪物がいた。

2021-05-14 18:46:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2793。灯火。 #twnvday に寄せて。 高いところが大好きなクリーチャーとそいつらに蹂躙される人間がいる世界のひとこま話シリーズ。 引用RTにするか迷いましたがいつものリプライにしました。

2021-05-14 18:46:24
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

怪物の討伐を求めていた地主が翌朝に撤回を伝えてきた。屋敷を訪ねると応接室に深紅の女がいた。突然の翻意は彼女の指図か。「どうしてやめるかよりも」藍が手を小さく動かし私を下がらせた。「いつからオバサンと仲良しなのかが問題よ」魔女をここへ呼ぶのが目的なら、先に籠絡されていたことになる。

2021-05-15 20:09:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2794。籠絡。 心理的な手段で相手を操ること。 権力や財力で人を味方につけるのは「懐柔」。

2021-05-15 20:09:32
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

宿に届いた包みはやけに軽かった。安全を確認して開けた中身は子供サイズのパーカーで、胸元と背中に見慣れない企業のロゴが入っている。市場で藍を見かけた人々がこぞって撮影していたことを思い出した。動画に映ればいい宣伝になると考えたか。「あるいは悪化が狙いか」「わたしを何だと思ってるの」

2021-05-16 19:02:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2795。宣伝。 この練習のまとめ本「ルート140」など『ストレイトロード』関連作品は化屋のBOOTHにて取り扱っております。 bakeya-gekkado.booth.pm

2021-05-16 19:02:58
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

青い色素を混ぜたルーの表面にパンを浮かべ、香り付けの葉を飾って完成。窓から見える湾の景色が料理で再現されている。匂いでようやくそれがシチューと判った。「ここの海ってサメいるの?」藍が唐突に尋ねた。料理人が笑った。「いる方がいい。それが自然だ」椀の模様を見ると確かに魚群と鮫がいた。

2021-05-17 18:50:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2796。わん。 提供: @takuramu_ossan 恒例のお題リクエストシリーズ。

2021-05-17 18:50:44
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

少し古い地図ソフトを開くと、そこには畑が広がり家屋が集まっているとある。最初に怪物が飛来した頃に全てが破壊されたと文書に残っている。「でも人がいるのよ、今」藍が北風を通して俯瞰した現在の様子はどの資料とも違った。荒れ果てた故郷へ戻った人々が先祖に倣い開墾していた姿だと後に知った。

2021-05-18 18:55:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2797。開墾。 提供: @yumemiya_kuku 目に見える脅威に何もかも奪われたとしても、命をつないでいれば、先はある。という話。

2021-05-18 18:55:46
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

窓際に並んだ机が草や葉で埋め尽くされている。家庭菜園で採れたハーブを乾燥させているらしい。藍は「私が育てたのよ」と胸を張る母親を一応褒めてから、庭師に何か耳打ちしていた。「またお友達の影響受けたみたい」後で事情を明かした藍はこう続けた。「ママがお茶会やるって言ったら毒見よろしく」

2021-05-19 19:27:05
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2798。ハーブ。 提供: @raaaaaaaaaaaa14 使い方次第、だけど。

2021-05-19 19:27:06
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

「役立たずを雇うくらいなら屋根直しなさいよ」役場を後にして車に乗るなり、藍が本音を吐き出した。応接室の雨漏りが気になっていたようだ。「町長の隣にいたあれ、人の顔見てへこへこするのだけが仕事なのよ」さすがに言い過ぎでは。「窓から見てみなさい。本物の秘書は後ろでまともに働いてるから」

2021-05-20 18:48:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

140文字で描く練習、2799。へこへこ。 提供: @H_tousokujin 見ていないところでは……だといいけど。

2021-05-20 18:48:55
Rista(化屋月華堂) @Rista_Bakeya

街道を外れて進むと、海を臨む小さな家があった。出迎えた子供達は笑顔で藍を囲み、車に積んだ食糧を我先に運び出した。「村の人は戻ってきた?」「ううん」唯一の大人である〝先生〟が、プレゼントが届く日を皆が心待ちにしていたと打ち明けた。風の魔女に発見されるまで長らく誰も来なかったという。

2021-05-21 18:52:19
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